デイムラー(FR/6AT)【試乗記】
素っ気ない名前が物語ること 2006.03.04 試乗記 デイムラー(FR/6AT) ……1680.0万円 「ジャガー」のトップモデルとして登場したのが「デイムラー」である。V8エンジンを積むモデルはほかにもあり、差別化のポイントは豪華装備と伝統にあった。戦前からの伝統を持つ専用色
「ジャガー」ブランドのトップモデルとして、去年の夏から少数が販売されているクルマである。「デイムラー」というただそれだけの素っ気ない名前が、このクルマの全性格を物語っている。要するにジャガー「XJ」のロングを豪華にしただけだから、あの「ダブル・シックス」という言葉も使えない。原稿を書くほうは楽でいいけれど、クルマそのものに、文字にするほどの特徴はあまりない。
グリルの上とトランクリッド上辺のフルーテッドモチーフが、わかりやすい外観の識別点だ。もう一つこのクルマのオーナーが誇れるものがあるとしたら、「ガーネット」と「ウェストミンスターブルー」という専用色である。ともにイギリスの高級車では戦前からの伝統を持つカラーで、試乗車も戦前の「ボクスホール」(昔は相当な高級車だったのです)などでも見られた焦げ茶に近いマルーンであり、これまた文法通り、シャンパン色の表皮にモカのパイピングという本革内装をもっていた。
クラフツマンシップと、ハイテクと
あとは象嵌細工が施されたバーウォルナットパネル、センターコンソールによって2座とされたリアシート前に配されたテーブルなど、オールドワールド的なクラフツマンシップと、前ヘッドレスト背後に一対用意されている後席用6.5インチティスプレイとDVDプレーヤーなどのハイテク、つまり自動車を支える二つの両極を駆使して、贅沢な世界の演出がほどこされているだけである。それが1680万円の根拠でもある。
無論乗れば、ジャガーのXJ8のトップモデルと何ら変わらない。マナーどおりきちんと走るし、期待通りリファインされている。それに、昔はジャガー本社が送迎用に使っていた専用ボディのデイムラーリムジンを懐かしがっても意味はない。それはわかっていても、単にデイムラーとだけ書いてこれだけでいいのか、何となく釈然としなかった。
(文=大川悠/写真=高橋信宏/2006年3月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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