アウディ A3スポーツバック 2.0TFSI(FF/2ペダル6MT)【試乗記】
深まるコク 2005.05.03 試乗記 アウディ A3スポーツバック 2.0TFSI(FF/2ペダル6MT) ……456万円 2リッター直噴ターボに、VWグループ自慢の「DSG」を組み合わせた「A3スポーツバック 2.0TFSI」。アウディを“お上品な存在”と思っていた道田宣和が乗って……オドロイタ。こんなに濃かったとは……
アウディが元気だ。2004年から今年にかけてのニューモデルラッシュと、このところ年ごとに月ごとに、次々記録が塗り替えられる日本での販売好調ぶりは知っていたが、クルマ自体もこんなに元気だとは! 正直言って乗ってみるまで見過ごしていた。付言ながら、筆者が前回のインプレッション(『BMW116i/118i』)で展開した「1.6リッター級ヨーロッパ車の品定め」に「アウディ A3」を加えなかったのは、ちょっとしたミスというべきである。このモデル自体は2リッターのターボエンジンともどもかなりスポーティな位置づけだが、ボディやシャシーの美点はそのまま、いやむしろパワーが少ないぶんより一層強調されたカタチで、2リッターモデルはもちろん、3ドアに設定される1.6リッターモデル「A3 1.6 アトラクション」にも当てはまるはずだ。
我々ベテラン勢にとって、アウディといえばかつての「80」に象徴されるごとく、上質で上品だけれどおとなしすぎて迫力がない……というイメージが強かった。ところが今度のA3は走り出した途端、パワーにせよ音にせよ「チューンドカーか?」と錯覚させるほどの自己主張に溢れている。ターボ/インタークーラー付きの2リッター直4DOHCエンジンは、200ps/5100〜6000rpm、28.5mkg/1800〜5000rpmの数字以上にパワフルかつトルキーに感じられ、なにげない交差点の発進でも迂闊にスロットルを開けようものなら、ESPを備えているにもかかわらず、派手なホイールスピンを演じて乗り手の顔を赤らめさせるほどだった。
洗練されたスポーティ
この元気なエンジンの特徴は、たった1800rpmからピークトルクを発生するスペックが示すとおり、低速からの立ち上がりが鋭く、かつその後の伸びが最後まで衰えないこと。さらに、ドライバーをその気にさせる(させすぎる?)アコースティックな演出である。
通常の発進なら3000rpm前後までで充分。それだけで周囲のクルマを置き去りにし、6段ギアボックスはポンポンポンと自動的にステップアップ、気が付いた頃には80km/hにしてトップギアに入っている。当初スペックを知らず、てっきり通常のトルコン式オートマチックだろうと思っていたが、さにあらず。よくよく観察すると発進の瞬間にごく僅かなタイムラグが認められ、ちょうどレースカーのローンチコントロールのように、機械が巧妙にクラッチミートのタイミングを図ったのち、結構「ドーン」といった感じで繋いでいる様子がわかるのだ。なにより、流体式の継ぎ手では到底得られないドライブトレーンの剛性感がアウディ自慢の「DSG(ダイレクト・シフト・ギアボックス)」であることを自ずと物語っている。
この間、コクピットは終始マニアックなサウンドで満たされる。5000rpmを境に1470kgの車重を軽々と押し上げる力の源泉がトルク主体からパワー主体に切り替わり、「クォーン!」と粒の揃った快音になる。気をよくしてそのまま踏み続けると、エンジンは6500rpmのリミット以上まで回ってシフトアップ、その瞬間、リリーフバルブが作動して「バフバフ」と、いかにも高性能ターボユニットらしい重低音が響き渡るのである。だからといって騒々しいわけではない。メーター読みの100km/hはDレンジ(6速)で2300rpmとハイギアリングで、巡航状態なら控えめにボリュームをセットしたオーディオが奏でる音楽を楽しめる静かさだ。
それでも基本は“乗用車”
スポーティブランドのせいか、中核グレードとはいえ、乗り心地は「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「ルノー・メガーヌ」のノーマル系より硬い。どちらかと言えば、同じく「プレミアムな」スポーティハッチバック「BMW 1シリーズ」に近いが、それとの違いは全体にハーシュネスが少なめであることだ。街なかでは特に可もなく不可もなくといった程度だが、飛ばすと一転してマイルドになり、時にややソフトと感じさせることもある。
ハンドリングはさらに乗用車的で、電動パワーステアリングは賞賛すべきスムーズさと正確さを備えているが、装着タイヤ(テスト車にはダンロップSPスポーツ“9090”が付いていた)のせいか縦方向、横方向とも最後のところでグリップ感が薄く、ワインディングロードを攻めると早い段階から頻繁にスキール音を発し、やがてフロントが逃げてアンダーの度を増す。ブレーキも同様で、単発ではジワリと効き、信頼性も充分だが、ダウンヒルの連続使用に限っては次第にストロークが長くなり、フェードの兆しを見せた。
1シリーズに対するA3、一番の長所はパッケージングにある。外寸はほとんど差がないのに室内は確実に広く、なかでも「上下に深い」ボディによる乗り降りのしやすさ、後席居住空間の広さは断然A3に軍配が上がる。
それにしても、強い個性を持ちながら、洗練とスポーティさを兼ね備えた、コクのあるA3スポーツバック。最近のアウディが、目の離せない存在になった。
(文=道田宣和(別冊CG編集室)/写真=峰昌宏/2005年5月)

道田 宣和
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