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アウディA3スポーツバック ファーストエディション(FF/7AT)/A3セダン ファーストエディション(FF/7AT)

プレミアムを分かってる 2021.07.07 試乗記 高平 高輝 新型「アウディA3」のスタンダードモデルには1リッター直3エンジンが搭載されている。気になるのは、電気とターボの力を借りた最新ユニットとはいえ、果たしてそれでプレミアムモデルとして成立するかというところだろう。「スポーツバック」と「セダン」で試してみた。

注目は1リッターの「30 TFSI」

「大きいことはいいことだ」の時代ではとうにないが、それにしても、である。クールな洗練度を特徴とするアウディのコンパクトクラスであるA3にも1リッター3気筒ターボが積まれるのが現代だ。新たに48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載するとはいえ、わずか1リッターのパワーユニットで本当に大丈夫なのか、アウディにふさわしい洗練度を身に着けているのか、が注目されるところである。さらに言えば、同じエンジンを積む新型「ゴルフ」との違いも気になるはずだ。

2020年春に発表された新型A3は、1996年デビューの初代から数えて4世代目にあたる。「MQB evo」プラットフォームなど基本アーキテクチャーを分け合う、いわば身内の新型ゴルフ(こちらは2019年発表)よりも一足先に日本上陸を果たしたが、今のところ日本仕様は1リッター3気筒ターボに48V駆動のBAS(ベルト駆動オルタネーター・スターター)を組み合わせた「30 TFSI」と2リッター直4ターボ(最高出力190PS/最大トルク320N・m)を積む「40 TFSIクワトロ」、それに高性能バージョンの「S3」(同310PS/同400N・m)というラインナップだ。海外向けには存在する1.5リッター直4ターボの「35 TFSI」やディーゼルモデル、PHEV仕様についてはどうなるか未定。また40 TFSIクワトロのデリバリーは若干遅れる見込みで、当面は30 TFSIとS3の二本立てとなる。

30 TFSIのスポーツバック(この新型から5ドアのみとなった)とセダン、および「S3スポーツバック」には充実装備の発売記念モデル「ファーストエディション」が用意されており、試乗車は30 TFSIのファーストエディションである。30 TFSIスポーツバックのベーシックグレードの車両本体価格は310万円で、となるとゴルフ8と変わらないじゃないか! と驚くが、この中にはMMIナビゲーションとバーチャルコックピット、アダプティブクルーズアシストなど一般的に必要とされる装備は含まれず、それらのオプションパッケージ(S3には標準)を加えるとおよそ70万円アップとなる。ファーストエディションは「アドバンスト」グレード(346万円)をベースにした特別仕様で453万円(!)とやはりお安くはない。ちなみにスポーツバック375台、セダン125台の限定である。

今回の試乗車は新型「アウディA3」の国内導入を記念した特別仕様車「ファーストエディション」。「スポーツバック」(限定375台)と「セダン」(同125台)を連れ出した。
今回の試乗車は新型「アウディA3」の国内導入を記念した特別仕様車「ファーストエディション」。「スポーツバック」(限定375台)と「セダン」(同125台)を連れ出した。拡大
シルバーとブラックでコーディネートされたダッシュボードは最新のアウディらしいクールなデザイン。センターコンソールがドライバー側に向いたドライバーオリエンテッドなレイアウトをとる。
シルバーとブラックでコーディネートされたダッシュボードは最新のアウディらしいクールなデザイン。センターコンソールがドライバー側に向いたドライバーオリエンテッドなレイアウトをとる。拡大
「ファーストエディション」にはデジタルメータークラスター「アウディ バーチャルコックピット」が標準装備。カタログモデルでは「MMIナビゲーション」とともにオプションの「ナビゲーションパッケージ」で装着できる。
「ファーストエディション」にはデジタルメータークラスター「アウディ バーチャルコックピット」が標準装備。カタログモデルでは「MMIナビゲーション」とともにオプションの「ナビゲーションパッケージ」で装着できる。拡大
ステアリングホイールは先代モデルのDシェイプから正円型に改められた。
ステアリングホイールは先代モデルのDシェイプから正円型に改められた。拡大
シフトセレクターにはバイワイヤ式のコンパクトなレバーを採用。この角度からだとセンターコンソールが右に向けられていることがよく分かる。
シフトセレクターにはバイワイヤ式のコンパクトなレバーを採用。この角度からだとセンターコンソールが右に向けられていることがよく分かる。拡大
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効果絶大なマイルドハイブリッド

30 TFSIは最高出力110PS(81kW)/5500rpmと最大トルク200N・m/2000-3000rpmを生み出す1リッター3気筒直噴ターボに7段Sトロニックを組み合わせたパワートレインを積む。もうそろそろなじんできたが、30は出力81~91kWを示すアウディの呼称法(40は125~150kW)である。従来型30 TFSIの1.4リッター直4ターボは122PSと200N・mだったから、数字だけを見るとちょっと心配になるかもしれないが、スロットルペダルを軽く踏んでスタートする際の出足はむしろ鋭く滑らかで、街なかや郊外一般道などのスピード域では極めて軽快にスムーズに走る。1リッターにしては、などという言い訳なしに十分に俊敏だ。Sトロニックの弱点である微速でのドライバビリティーをカバーする滑らかな動き出しや低速域でのスロットルレスポンスを見る限り48Vのマイルドハイブリッドシステムのご利益は明らかだ。

また高速道路上だけでなく、一般道でも頻繁に、ほんのわずかなチャンスを見逃さずにコースティング、あるいはエンジン停止でのコースティングをして少しでも燃費を稼ごうとしていることが分かる。しかも、スロットルのオンオフだけでなく、前走車がいるかいないかなどのさまざまな条件に合わせて、回生やコースティングの制御を緻密に使い分けているようだ。信号待ちでアイドリングストップしていても、前走車が動き出せば自動的にエンジンが再始動する機構も備わり、再始動もブルルンというショックを感じさせず極めてスムーズであり、さらに3気筒を感じさせる不機嫌そうなゴロゴロ音とバイブレーションは事実上伝わってこない(いっぽうでゴルフの1リッター版には残っている)。これまで「A1」などに積まれていた3気筒ターボとはまるで異なる洗練されたマナーゆえ、事前に教えられなければこの新型アウディが3気筒エンジンだと気づく人はいないのではないだろうか。

センターにブルーのアクセントがあしらわれた「デビュークロス」のシートは「ファーストエディション」専用。カタログモデルだとヒーターと電動調整機構はオプションの「コンビニエンス&アシスタンスパッケージ」で選ぶことになる。
センターにブルーのアクセントがあしらわれた「デビュークロス」のシートは「ファーストエディション」専用。カタログモデルだとヒーターと電動調整機構はオプションの「コンビニエンス&アシスタンスパッケージ」で選ぶことになる。拡大
リアシートはショルダールームが2mm、エルボールームが3mm、わずかながらも先代モデルよりも広くなっている。
リアシートはショルダールームが2mm、エルボールームが3mm、わずかながらも先代モデルよりも広くなっている。拡大
ダッシュ中央には10.1インチの大型タッチスクリーンを搭載。文字の手書き入力などにも対応している。
ダッシュ中央には10.1インチの大型タッチスクリーンを搭載。文字の手書き入力などにも対応している。拡大
シフトセレクターの前方ではスマートフォンの無接点充電ができる。加速時などに飛び出さないよう、斜めに落とし込むようになっているのが見識だ。
シフトセレクターの前方ではスマートフォンの無接点充電ができる。加速時などに飛び出さないよう、斜めに落とし込むようになっているのが見識だ。拡大

VGT付きガソリンエンジン

もちろん、そうは言っても1リッターゆえの限界がある。スロットルペダルを深めに踏み込んでも、打てば響くレスポンスを得られるというまではいかない。急加速時には思ったほどの反応が得られず、スカッという空振り感を我慢して待たなければいけない場面もあるが、全開加速時を除けば歯がゆい思いをすることはまずないだろう。山道でも同様に、目いっぱい飛ばすとどうしてもパンチが足りないと感じるが、そこまで全開ではなく6、7割程度のペースで走っている時には気持ちよく爽快だ。スポーツバックの本国データでは0-100km/h加速が10.6秒、最高速が204km/hというから、ほぼ従来通りである。その代わりというわけではないが、燃費はさすがに優秀なようだ。別の機会に(この日は試乗会に参加)高速道路を走った際には車載燃費計の数字がスルスルと伸びていき、一時は28km/リッターを超えることもあった。その際の感覚では平均燃費もWLTCモードの17.9km/リッターとほぼ変わらないはずだ。

実はこの1リッターエンジンは、もう6年も前に1.5リッター“ライトサイジングユニット”とともに、「EA211」モジュラーエンジンシリーズの最新世代「evo」として発表されたものだ。従来の1.2リッターおよび1.4リッターの「TSI」(アウディでは「TFSI」)エンジンに代わる主力ユニットとして順次投入され、1.5 TSI evoは既に7代目のゴルフにもマイナーチェンジ後は搭載されていたのだが、日本向けは未導入のまま。A3に少し遅れて国内発売された8代目の新型(1リッターと1.5リッターのマイルドハイブリッド仕様)でようやく導入された。このevoユニットは350barの高圧燃料噴射やプラズマ溶射シリンダーコーティング、スマート制御のサーマルマネジメント、それに可変ジオメトリータービン(VGT)などの最新技術を満載したフルスペックユニットで、なかでも注目は、排ガスの流量によってタービンのブレードを可変制御してレスポンスを向上させるVGTだ。

現代のターボディーゼルユニットでは定番の技術といってもいいが、排ガス温度がより高いガソリンエンジン用ではコストがかさむらしく、市販車での採用例はポルシェのみ。いわゆる量産エンジンに搭載したのはフォルクスワーゲンのevoシリーズが初めてだ。アウディ ジャパンによるとこの1リッターユニットはVGT付きというから(フォルクスワーゲン グループ ジャパンは明らかにしていない)、低中速域での軽く俊敏なピックアップにはモーターだけでなくVGTの効果もあるはずだ。付け加えればA3はフロントサスペンションのサブフレームやエンジンフードがアルミ製という点もゴルフと違う。まあ、それはそうだ。

「30 TFSI」のパワーユニットは最高出力110PS、最大トルク200N・mの1リッターターボエンジン。WLTCモードの燃費は「スポーツバック」「セダン」とも17.9km/リッター。
「30 TFSI」のパワーユニットは最高出力110PS、最大トルク200N・mの1リッターターボエンジン。WLTCモードの燃費は「スポーツバック」「セダン」とも17.9km/リッター。拡大
排気量は1リッターながら、48Vのマイルドハイブリッドや可変ジオメトリータービンを採用するなどコストと手間のかかったユニットだ。
排気量は1リッターながら、48Vのマイルドハイブリッドや可変ジオメトリータービンを採用するなどコストと手間のかかったユニットだ。拡大
48V電気システムの駆動用バッテリーは運転席の下に隠されている。
48V電気システムの駆動用バッテリーは運転席の下に隠されている。拡大
「スポーツバック」の荷室容量は380~1200リッター。リアシートの背もたれは3分割で前方に倒すことができる。
「スポーツバック」の荷室容量は380~1200リッター。リアシートの背もたれは3分割で前方に倒すことができる。拡大
「セダン」のトランクルーム容量は425リッター。こちらにも後席背もたれの3分割可倒機構が付いている。
「セダン」のトランクルーム容量は425リッター。こちらにも後席背もたれの3分割可倒機構が付いている。拡大

ゴルフよりはっきりと使いやすい

さらに、インテリアの細部にコストダウンを感じさせない巧妙さもさすがである。新型A3のインストゥルメントは例によって折り目正しく隙のない最新のアウディスタイルだ。MMIのダイヤルは既に省かれ、7段Sトロニックのセレクターも「ポルシェ911」のような小型レバーに置き換えられているが、何から何までタッチスイッチにしていないのがアウディの美点だと思う。例えばACCの操作を集約したレバーを依然としてコラム左に残していることがうれしい。すべてステアリングホイールのスポーク上に配置するのはかえって使いづらいと私は思う。いくつかの物理スイッチを残しているA3のインストゥルメントパネルは新型ゴルフよりもはるかにストレスなく操作することができる。

新型の30 TFSIはリアサスペンションが従来型のマルチリンクからトーションビーム式に変更されている(クワトロはマルチリンク)。トーションビームに変わったから即コストダウンと言うつもりはないが、実際に軽快ですがすがしく、静粛だ。試乗個体によっては舗装の荒れた一般道でポコポコした不思議な上下動を感じるものもあったが、気になるほどではない。ちなみにファーストエディションは18インチタイヤを装着するが、ベーシックな30 TFSIは16インチ、アドバンストでも17インチが標準である。見た目はカッコいいが、これまでの例から考えても30 TFSIには16インチで十分、というよりむしろそのほうが軽やかでしっとりした乗り心地が得られるはずだ。さて、これからしばらくは、A3とゴルフ8について議論を続けなければならない。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

「スポーツバック」を真横から見る。リアに向けてキックアップするプレスラインが躍動感を生み出している。全長×全高は4345×1450mm。
「スポーツバック」を真横から見る。リアに向けてキックアップするプレスラインが躍動感を生み出している。全長×全高は4345×1450mm。拡大
「セダン」は「スポーツバック」よりも全長が150mm長く、全高が25mm低い。2635mmのホイールベースは共通で、先代モデルとも変わっていない。
「セダン」は「スポーツバック」よりも全長が150mm長く、全高が25mm低い。2635mmのホイールベースは共通で、先代モデルとも変わっていない。拡大
「セダン」のリアを特徴づけているトランクスポイラー。ボディー形状は異なるが、リアコンビランプは「スポーツバック」とうまく共用化されている。
「セダン」のリアを特徴づけているトランクスポイラー。ボディー形状は異なるが、リアコンビランプは「スポーツバック」とうまく共用化されている。拡大
アウディA3スポーツバック ファーストエディション
アウディA3スポーツバック ファーストエディション拡大
 
アウディA3スポーツバック(FF/7AT)/A3セダン(FF/7AT)【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

アウディA3スポーツバック ファーストエディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4345×1815×1450mm
ホイールベース:2635mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:110PS(81kW)/5500rpm
最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:17.9km/リッター(WLTCモード)
価格:453万円/テスト車=453万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2630km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

アウディA3セダン ファーストエディション
アウディA3セダン ファーストエディション拡大
 
アウディA3スポーツバック(FF/7AT)/A3セダン(FF/7AT)【試乗記】の画像拡大

アウディA3セダン ファーストエディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4495×1815×1425mm
ホイールベース:2635mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:110PS(81kW)/5500rpm
最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:17.9km/リッター(WLTCモード)
価格:472万円/テスト車=472万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:3395km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

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