ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)
理詰めの狂気 2026.07.15 試乗記 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。新世代のBEV専用プラットフォームを採用
ポルシェのビジネスを支える大黒柱のみならず、21世紀のスポーツカーブランドのあり方をも変えたカイエンも、現行型で第4世代となる。先んじて投入されたのは内燃機およびプラグインハイブリッドモデルで、プラットフォームには「MLBエボ」を採用。プレスリリースでは「新型」とうたわれていたが、その実はMLB系プラットフォームを採用していた3代目のビッグマイナーチェンジ的な内容ともいえる。
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」になぞらえれば7型から8型の……といえば、今日びよくあるあの立ち回りかとご理解いただけるだろうか。それでも内外装デザインやヒューマン・マシン・インターフェイスを筆頭とするデジタルアーキテクチャーは一新。足まわりも刷新されるなど鮮度は十分に保たれていた。
そしてこの7月に日本上陸を果たしたのが電気自動車(BEV)版の新型カイエンだ。ポジション的には第4世代にくくられるが、BEV専用車台を用いたものとしてはカイエンとして初。ポルシェとしては「タイカン」「マカン エレクトリック」に次ぐモデルということになる。この投入によってカイエンシリーズは、純然たる内燃機とプラグインハイブリッド、そして100%の電動ユニットと、都合3つのパワートレインを用意する、最も多様な選択肢をそろえたポルシェという位置づけになった。
そのプラットフォームはマカンと同じく「PPE」を採用しているが、当然ながら車格は全く異なるものだ。勘どころとなるのはホイールベースで、3023mmのそれはマカンに対して130mm長い。そのぶん広がった床面積は駆動用バッテリーにも割り当てられており、搭載容量は113kWhとなる。後述するバリエーションはもちろん全て2モーターの四駆となるが、航続距離は日本のWLTCモードで629~667kmと、十分以上を確保しているようだ。
BEV版のカイエンは既売の内燃機版と同じく、SUVとクーペという2つのボディーデザインが用意される。Cd値(空気抵抗係数)はSUVが0.25、クーペは0.23と非常に低く、これが航続距離の伸長に寄与していることは間違いない。そして各々のグレード構成はポルシェではおなじみの、ベースグレードに「S」「ターボ」という3つ構えとなる。
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ポルシェの本気がてんこ盛り
駆動モーターはタイカンなどにも用いられるパフォーマンス志向の永久磁石同期モーター(PSM)を採用。特にアウトプットの高いターボ用のリアモーターについては、モービル1と共同開発した特殊配合オイルを用いる油冷式のクーリングシステムを採用する。また、駆動バッテリーには上下からウオータージャケットで挟み込む水冷式を採用するなど、温度マネジメントにまつわる積極的な技術投入は注目に値するところだ。そういう点でいえば、BEV版カイエンも800Vの高電圧テクノロジーを用いているが、日本仕様はインフラの関係で急速充電の受容が150kWに抑えられているのが惜しいところではある。
ベースモデルでさえ最大値で最高出力442PS、最大トルク835N・mのアウトプットを誇るカイエンだが、やはり注目されるのは、1156PS、1500N・mという目慣れない数値を打ち出すトップグレードのターボだろう。これはドライブモードを「スポーツプラス」にし、ローンチコントロールをオンにした際の一時的なアウトプットとなるが、通常時でも857PSと呆れるようなパワーがアクセルひとつで瞬時に取り出せる。また、ドライブモードセレクターに添えられるボタンを押せば、最大10秒の間176PSが上乗せされる「プッシュ・トゥ・パス」という機能も用意されている。
この巨体にしてこのパワーゆえ、シャシーまわりのしつらえも入念だ。足まわりには全グレードで「ポルシェアクティブサスペンションマネジメント」付きのエアサスを標準装備。さらにSとターボには、加減速時や旋回時の車両姿勢をフラットに保つ「ポルシェアクティブライド」が搭載された。さらに最大5°の同相・逆相に作動するアクティブリアステアも加わるなど、運動性能をつかさどるポルシェのテクノロジーがこれでもかと動員されている。
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異様なまでに速い
「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」を用いた試乗でわれわれに割り当てられたモデルは幸運にもターボだった。まずはダイナミックエリアで基本的な動力性能と運動性能を確認、次いでハンドリングコースを体験する。
ローンチコントロールの扱い方は至って簡単で、ドライブモードをスポーツプラスに設定してブレーキを踏み、アクセルを踏み込むだけでメーターパネルとイルミネーションがその作動を知らせてくれる。そのイージーさに油断して、構えることなくブレーキをホイッとリリースするや、血流がズンと偏り意識がふわっと薄れていく自分に驚いた。0-100km/hが2.5秒という額面の加速はほかでも体験したことはあるが、こちらは踏めば即大トルクを発するモーターの1156PS&1500N・mである。さらにポルシェのBEVに用いられるトラクションマネジメントも熟成が進んだのだろう。一寸さえもタイヤをかき鳴らすことなく放たれるその怒涛(どとう)の推進力は、ちょっとほかとは比べようがないものだった。老婆心ながらこの機能は、公道で試してみようなどとは思わないほうがいい。
ハンドリングコースでは持ち前の重心の低さに加えて、このトラクションマネジメントやトルクベクタリングなど、十八番の電子デバイスの連携もあり、ともあれ巨体がスラスラと難なく向きを変えていく振る舞いにまた驚かされる。路面のカントの変化やそれに伴う荷重移動にも接地感や駆動力がしっかり追従していく様子をうかがいつつ、タイトなつづら折りを攻め気味に走ってみれば、ここでもやはり実感するのは圧倒的な力がわっしと路面を捕まえて、前車との車間をあっという間に食い尽くしていく異様な速さだ。そんな状況で件のプッシュ・トゥ・パス機能を用いれば、さらに上乗せの手応えを明確に伝えてくる。「フォーミュラE車両と同等」という自慢の回生制動力は、この法外なパフォーマンスに埋もれて実感しづらいところもあったが、それでもブレーキ自体のコントロール性はさすがポルシェだと納得させられた。
タイカンの登場以降、ポルシェのラインナップにおける「ターボ」は、その名詞的意味合いだけではなく、全能ぶりを示す形容として用いられてもいる。カイエン ターボはまさにそれを体現する一台といえるだろう。BEVという新しい道具を得て、物理の山の頂にどこまで近づけるのか。それは、長きにわたるRRでの格闘で物理の難しさを知るポルシェだからこそ、うかがえる極みなのかもしれない。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
カイエン ターボ エレクトリック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1980×1675mm
ホイールベース:3023mm
車重:2650kg(空車重量)
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:857PS(630kW)<ローンチコントロール使用時:1156PS(850kW)>
システム最大トルク:<ローンチコントロール使用時:1500N・m(153.0kgf・m)>
タイヤ:(前)275/40R22 107Y XL/(後)315/35R22 111Y XL(ピレリPゼロ エレクト)
一充電走行距離:629km(WLTCモード)
交流電力量消費率:22.4-20.4kWh/100km(約4.5-4.9km/kWh、WLTPモード)
価格:2101万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:91km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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