プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)
もっと走りたくなる 2026.07.14 試乗記 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。フロントフェイスが新しい
あ。とっても上質になっている……。最新のプジョー308 GTハイブリッドを発進させた刹那(せつな)、そう思った。1.2リッター直3のマイルドハイブリッド車(MHEV)は、モーター駆動で発進する。MHEVなのにエンジンが始動しない。むちゃんこ静かでスムーズで、まるで高級車みたいなフィールを味わわせてくれる。Cセグメントのハッチバックなのに、こんなに高級になって大丈夫なの?
駒沢通りに躍り出て、左に曲がって最初の信号を右折、旧山手通りを走っていると、その軽やかな乗り心地に、これまた感心した。おお。これぞプジョーの猫足。読んで字のごとく、猫を思わせる、軽やかで、しなやかなサスペンションの動きは健在である。
久しぶりに会った旧友が時代に埋没することなく、ちゃんとアップデートしている。新しいことにチャレンジしていて、見た目も若返っている。それでいて、彼、もしくは彼女が本来持っていた長所、基本は変わっていない。そんなことを確認した筆者は、まことにうれしい心持ちがした。なによりファントゥドライブである。最近、忘れ去られようとしている価値がしっかり残っている。それがいちばんうれしい。やっぱりプジョー308はとってもよいのだ。
というのが、今回のあらすじである。プジョー308 GTハイブリッドが最新型を名乗る最大のゆえんは、新しい顔にある。人形も顔がいのち。新しい顔について、もうちょっと具体的に語る必要がある。
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マンガの集中線のような効果
最新の308は2021年秋にフランス本国で発売された、3代目308(P5型)のマイナーチェンジ版である。本国では「ステーションワゴン(SW)」も含め、2025年8月に発表されている。プラグインハイブリッド車、ハイブリッドという名前のMHEV、電気自動車(BEV)、それにディーゼルエンジン車の4種類があり、5つのトリムが用意されている。ニッポンへはそのなかからGTハイブリッドがいち早く上陸したことになる。
新型の最大の特徴はエクステリアデザイン、とりわけ顔を変えたことだ。プジョーは最近、ライオンの牙を思わせるDRL(デイタイムランニングランプ)をすっぱりやめ、リアで採用していた3本の爪痕をモチーフとするランプデザインをフロントにも採用しつつある。BEVの「E-208」を除く「208」「2008」「3008」「5008」がすでにそうなっている。
308では3008似ではあるものの、牙の位置にある長い3本の爪痕のDRLではなく、短い3本の爪の左右ランプ間に14個の小さな縦型のLEDを並べている。合わせて、グリルの縦縞模様を3008よりシャープに描くことでライトとグリルの模様を一体化し、マンガの集中線みたいな効果を生み出している。これは新しい! 後ろから迫ってくるようなスピード感とド迫力が表現されている。
ライオンの牙はとってもよかった。と思うけれど、飽きられる前に変えるのもまたデザインの常道である。フロント中央のライオンの横顔のエンブレムは発光し、暗闇でも目立つ。イルミネーテッドエンブレムの採用はプジョーブランドで初となる。
フロントバンパーにはタイヤハウスに空気を導く大きなダクトが設けられてもいる。タイヤ周辺の乱気流を抑えることで空気抵抗を低減し、燃費向上を図ったものだ。このダクトが噛みつきそうな面構えをつくっている。
スペースエイジにふさわしい、スペースライオンと呼びたいSFチックな顔が生まれた。
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爽快で痛快な加速性能
パワートレインは前述のとおり、フェイスリフト前に搭載済みのマイルドハイブリッドである。ステランティスの小型車の多くにすでに採用されている、1.2リッター直3直噴ターボとモーター内蔵型6段DCTを組み合わせたシステムで、これを搭載した308 GTハイブリッドは2025年に国内導入されている。あいにく筆者はこの従来型とは縁がなく、つまり308 GTハイブリッドは今回が初体験だった。
その初心者の第一印象が、冒頭に記した「とっても上質」である。ただし、エンジンが始動すると、意外とエンジン音が元気というか活発というか、ボーボーうなる感がある。BEVからふつうのガソリン車に変わるのだ。
排気量が1199ccの直3直噴ターボは最高出力136PSを5500rpmで、最大トルク230N・mを1750rpmで発生する。6段DCTに組み込まれた電気モーターは最高出力20PSと最大トルク51N・mを生み出してエンジンをアシストする。MHEVながらリチウムイオン電池は0.9kWhとストロングハイブリッド並みの容量を誇り、EV走行もできる。
直3ターボはミラーサイクルのためか、つねに希薄燃焼しているみたいな、別のいい方だと、高いギアでノッキング寸前までエンジンを回しているみたいな感覚がある。それでもガバチョとアクセルを開けると、モーターの助太刀によって、十分以上のトルクが得られる。1.2リッターとは思えぬ、爽快で痛快な加速性能を備えているのだ。
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ほれぼれするような乗り心地
MHEVのパワートレインはDCTと回生ブレーキが介在するせいか、例によって低速で微妙にギクシャクする。それでも筆者が経験したステランティスの1.2リッターMHEVのなかでは、そのギクシャクはかなり抑えられていて、渋滞のさなかでもほとんど気にならなかった。つじつまの合わせ具合が絶妙にうまい!
足まわりに関しては、18インチのアルミホイールのデザインが新しくなっただけで、猫足と表現したくなるサスペンションは変わっていない。ただし、肉球はちょっと硬い。308 GTハイブリッドの場合、225/40R18という、太くて大きくて薄いタイヤを標準装着しているからだ。
凸凹路面を50km/h以下で通過すると、乗員は路面からの突き上げを感じる。40の偏平タイヤだから当然である。ところが、同じような路面を、もうちょっと速度を上げて通過すると、猫のような身のこなしを披露する。路面の凸凹を左官屋さんが瞬時にコテで埋めちゃったごとく、凸凹がなだらかで小さく感じられるのだ。柔らかめのバネと引き締められたダンパー、アンチロールバーの組み合わせが、これぞプジョー! という乗り心地を実演してくれる。ほれぼれする。
ゴーカートみたいに小径のステアリングホイールは、メーターの視認性がイマイチ、という弱点はあるものの、ちょっと切るだけでスッと曲がる。1.2リッターMHEVは踏めば十分なトルクを発生し、爽快な加速を味わわせてくれる。
そもそもコンパクトなFFハッチバックで山道をドライブするのは楽しい。だけど、プジョー308 GTハイブリッド以上に楽しいFFハッチバックはなにがあるんだろう? とあらためて考えてみると、答えはすぐには出てこない。超高性能ではない。だからよいのである。ほどほどの速さで、ビビッドでライブ感のあるドライビングプレジャーを提供してくれる。そういうプジョー308 GTハイブリッドはとってもいい、と筆者は思う。
すべての撮影が午前中に終了し、あとは帰るだけ。となったとき、筆者はもうひとっ走りすべく、308のキーを握りしめたのだった。
(文=今尾直樹/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
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テスト車のデータ
プジョー308 GTハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.4kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y XL/(後)225/40R18 92Y XL(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:20.8km/リッター(WLTCモード)
価格:524万円/テスト車=538万4375円
オプション装備:メタリックペイント<ラゴアブルー>(6万6000円) ※以下、販売店オプション ETC1.0車載器<ハーネス含む>(1万8425円)/ドライブレコーダー<V263A>(5万9950円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1868 km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:277.0km
使用燃料:22.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.2km/リッター(満タン法)/13.7km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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