第71回:花粉症はナゼ発症するのか〜答えは日光に〜(その8)(矢貫隆)
2005.11.12 クルマで登山第71回:花粉症はナゼ発症するのか〜答えは日光に〜(その8)(矢貫隆)
■お手軽だけど中身あるハイキング
湯ノ湖から流れだす湯川は戦場ヶ原の真んなかをとおり(正確には戦場ヶ原と小田代原のあいだ)中禅寺湖に注いで華厳の滝にいたるのだけれど、この湯川、湿原のなかで見る風景は何とも幻想的である。いや、原始的な風景と言ってもいいのかもしれない。
とにかくこの空間は、曲がりくねった湯川の流れと同じようにゆっくりとした時間が流れているように感じるから不思議なものだ。
湯川の向こう岸の森から鹿が姿を現し川の水を飲んでいる。何とものどかな風景に見えるが、しかし、その一方で、この地は鹿による植物被害の問題も深刻になっている。小田代原の大部分がフェンスに囲まれているのはそのせいだ。鹿による食害からササやシラネアオイ、ウラジロモミといった在来種を守るための方策なのである。
それにしても戦場ヶ原は、お手軽ハイキングであるにもかかわらず中身のあるハイキングを味わうことができる場所だと思う。たぶんそれは、戦場ヶ原が標高1400m付近に広がっているせいだ。
ここがもし、あと200m高い位置だったならば植生は劇的に変わり、落葉広葉樹林帯ではなく、コメツガやダケカンバなどの常緑針葉樹林帯だった。つまり、季節ごとの葉の色の変化を楽しむことはできなかったのである。
読者のみなさんがこの記事を目にする頃、戦場ヶ原では紅葉の時期真っ盛りだと思う。標高1400mの紅葉の森。ぜひ歩いてみるといい。体力がなくたって大丈夫。何しろ軟弱A君が、ひとことの弱音も吐かず元気に歩き通したのだから。(この回おわり)
(文=矢貫隆/2005年11月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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