レクサスGS430(6AT)【海外試乗記(前編)】
新しい神話への幕開け(前編) 2005.04.15 試乗記 レクサスGS430(6AT) 「トヨタ・アリスト」の後継たるスポーティサルーン「レクサスGS」の国際試乗会が、南仏で開かれた。日本への凱旋を目前に控えたニューモデルに、大川悠が早速試乗! その印象を報告する。グローバル・ブランドの再出発
コートダジュールの海岸沿いを行く道、グラン・コルニッシュを走る。今日は南仏二日目、やっと晴れ上がり、海の色は真っ青になったが、春の到来を告げるアルプスからの寒い風、ミストラルが吹き付けて温度は低い。
さっきから目前のクルマの、デッキが高いテールエンドとややつり上がったテールランプを見ている。そしてバックミラーには比較的表現が柔らかい逆台形のグリルと、それに対してちょっとだけ位置の高いヘッドライトが映っている。
2005年4月上旬、私たちはレクサスGS430で南仏を走っていた。ヨーロッパを主体としたこの新型レクサスの国際試乗会に参加しているのである。
アメリカで「近年もっとも成功したビジネス・ケース」という評価を得たレクサスブランドは、周知のように今年8月から日本にも販売ネットワークが構築され、本格的に凱旋してくる。と同時に、ヨーロッパにおいても単にトヨタの一部ということではなく、プレミアムマーケットに真っ向から挑戦する高級ブランドとして本腰を入れることになる。
そのレクサス・グローバル展開プロジェクトの第一弾が「GS」、日本では「アリスト」と呼ばれていたモデルだ。新型は従来のアリスト・コンセプトを可能な限り捨て、完全にレクサスのブランド戦略の一つの柱として生まれ変わった。トヨタ、いやレクサスが、私たち日本人プレスを、わざわざヨーロッパ対象の国際試乗会に招いた意味もそこにある。グローバル・ブランドとして、今後のレクサス各モデルを捉えて欲しいということなのだ。
共通言語は“L−finess”
GSは今年後半にも発表される予定のトップモデル「LS」(旧セルシオ)に続くレクサスのアッパークラスサルーンであり、アリスト時代のスポーティな感覚を残しつつも「メルセデスベンツ Eクラス」「BMW 5シリーズ」「アウディA6」などと張り合うべく、全体の洗練性を高めることを狙っている。
2850mmのホイールベースを持つボディ外寸は4852×1820×1430mmと、Eクラスとほとんど変わらない。全体の形は2003年の東京ショーで公開されたコンセプトカー「LF−S」のイメージを現実に落としたもの……といいたいが、実際は違う。すでに生産型GSがある程度固まったた段階で、そのデザイン思想をよりピュアな形で説明しようとしたのがLF−Sだという。
逆台形のグリル(外枠コーナーがシャープで内枠コーナーがラウンドなのはレクサスの特徴である)、アリスト的にハイビームを内側に独立させ、その外側やや高い位置に配置されたヘッドランプクラスターによって、ともかくレクサスとしての家族の顔を作ろうとしている。
後方になるに従って上がっていく、かなり高い位置のショルダーライン、それによって薄くなったサイドのグラスエリアと、ぶ厚いがゆえに力感が表現されたドアパネルなども最新のサルーンの流れを汲む。
ちょっと気になる
もちろんLF−Sのような、繊細でありながらもとてもシャープな切れ味と、独特のアグレッシブな感覚は大分薄められているが、デザイン的にはテーマが明瞭である。それはレクサスブランドを構築するにあたって、まずきちんとした共通言語を生みだしたからであり、デザインもテクノロジーも、あるいはクルマが人間に感じさせる運転感覚も、この言葉を実現するために開発されたからだ。
“L−finess”がレクサスのデザイン思想を表す言葉である。先鋭のLeading-edgeと精妙のfinessを両立させようという意味だ。今後登場するすべてのレクサスはこのテーマの上で造形される。
ただしGSは、最初の作品のためか、あるいはアリストのイメージを多少なりとも受け継いだせいか、新しいレクサス造形への挑戦姿勢がやや弱く感じる。そしてライバルのヨーロッパ各車に比べても、存在感が多少弱いように見える。メーカーとしては、押しの強さよりは、日本車特有の繊細な感覚で勝負したかったのだろうが、アグレッシブに自己主張するライバルが多いなかでどう戦えるか、ちょっと気になる。(後編に続く)
(文=大川悠/写真=トヨタ自動車/2005年4月)
・レクサスGS430 (後編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000016600.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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