第59回:枯れゆくブナの山、檜洞丸(その8)(矢貫隆)
2005.01.27 クルマで登山第59回:枯れゆくブナの山、檜洞丸(その8)(矢貫隆)
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■日本にも強い酸性雨は降っている
酸性雨は、確かに檜洞丸を含む丹沢山塊に降り注いでいる。丹沢にだけではない。酸性雨は、今や日本中のあらゆる場所で降っているのだよ、A君。
「酸性雨って、何をもって酸性雨と言うんですか?」
もっともな質問だ。実は僕も最初はよくわかっておらず、だから勉強した。
蒸留水は中性でpH7。けれども大気中には水に溶けると酸性を示す二酸化炭素が含まれており、そのために雨は、自然な状態でもpH5.6〜5.7の弱酸性を示す。そこで、pH5.65を基準に、それ以下の数字を示す雨や霧あるいは雪を酸性雨と呼ぶのである。
環境庁の酸性雨対策検討会が1999年3月に明らかにした「第3次酸性雨対策調査とりまとめ」によれば、全国の40箇所以上(平成9年度は48箇所)で調査した平成5年度から9年度までの降水の年平均pHは4.7〜4.9。
pH1の差は水素イオン濃度の10倍の違いを表すから、自然な状態に較べると、レモン汁とは言わないまでも、ほぼオレンジ果汁に匹敵する強い酸性の雨が日本の各地に降っていることになる。
「酸っぱそうですね」
そうだな、A君。
この数値は調査を開始した1980年代から横ばいで推移しており、また「欧米並み」でもあるのだという。
つまり、多くが勝手に思い込んでいる「酸性雨被害は欧米での出来事」との認識は誤りで、目に見える被害は現れていなくとも、欧米並みの酸性の雨は日本にも降っているということなのだ。
そして、その原因物質となっているのは、言うまでもなく主にディーゼル車から排出される窒素酸化物であり、主に工場排煙などに含まれている硫黄酸化物である。(つづく)
(文=矢貫隆/2005年1月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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