ジャガーXタイプ 2.0 V6 SEエステート【ブリーフテスト】
ジャガーXタイプ 2.0 V6 SEエステート 2004.08.19 試乗記 価格=524万6500円 総合評価……★★★★ ライフスタイルアイテムとして、実用車として市民権を得たワゴン市場に、高級サルーンで知られるジャガーが送り込んだ「Xタイプエステート」。2.1リッターのベーシックグレードに乗った、自動車ジャーナリスト生方聡は何を感じたか?![]() |
格好の選択肢
同じモデルでサルーンとエステートがあったら、私はほぼ間違いなくエステートを選ぶ。
いまどきのエステートは、“ボディ剛性が足りない”“ロードノイズが気になる”“カッコわるい”といった、サルーンに対する弱点がすっかり克服されていて、しかも荷室は、一度味わってしまうともう後戻りできないほど使い勝手がいい。だから、ラグジュアリーカーを除けば、これからはサルーンよりもエステートだと私は思っている。
そのうえ、エステートには若々しい印象があるから、老舗ブランドが若年層を獲得するためにエステートを投入するのは当然のこと。実際、この「ジャガーXタイプエステート」はサルーンよりも身近な存在に思えるし、アクティブな雰囲気のおかげで、いままでジャガーとは縁遠かった層にもアピールできるはずだ。
ジャガーのエントリーモデルとしての役割を担ってきたXタイプだが、エステートの登場で、さらにジャガーの間口が広がるのは間違いない。しかも、低価格な2.1リッター版のできがいいだけに、この「2.0 V6 SEエステート」は、これからジャガーを“はじめる”には格好の選択肢になると思う。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「フォード・モンデオ」ベースの「ジャガーXタイプ」セダンをもとに、Bピラー以降、570点以上のパーツを新設計してつくられた、ジャガーの量産ワゴン「Xタイプエステート」。ボディサイズは、サルーンに比べて長さが45mm、高さは65mmそれぞれ大きく、全長×全幅×全高=4730×1790×1485mm、ホイールベースは2710mmと変わらない。
Xタイプエステートのジマンは、ワゴンとしての機能性にこだわったこと。テールゲートだけでなく、ガラスハッチも独立して開閉可能。リアシートは7:3分割可倒式で、荷室の最大容量は1415リッターに拡大できる。
日本に導入されるのは、2.1リッターV6(159ps)搭載の「2.0 V6 SEエステート」(FF)と、2.5リッターV6(198ps)を積む「2.5 V6 SEエステート」(4WD)の2種類。トランスミッションは、いずれも5段ATである。本国には3リッターモデルも存在するが、導入は見送られた。
いずれのグレードにも、上級を表す「SE」のサブネームが与えられていることからもわかる通り、装備品はプレミアムカーに相応しい内容。インテリアはレザー仕様で、シートはヒーターの付いた電動調節式(2.0が8ウェイ、2.5は10ウェイ)が奢られる。またDVDナビゲーションシステムなども標準装備する。
(グレード概要)
Xタイプエステートのベーシックグレードが2.0 V6 SEエステート。ベーシックとはいえ、装備内容は2.5リッターモデルとほぼ同じで、上記のシート電動調節機構や、運転席膝部分を保護するエアバッグ「ニーボルスター」の有無など。外観の違いとしてアルミホイールがあり、2.0が「Caicos」(9スポーク)、2.5リッターはよりスポーティな「Tobago」(7スポーク)を標準装着、タイヤはいずれも205/55R16インチを履く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インテリアはジャガーらしさで満たされている。ラウンドした形状のセンターパネルや美しいウッドパネル、そして、「シャンペン」と呼ばれる明るいベージュのトリムなど、直感的に上質さが感じ取れるのがいかにもジャガー的だ。
メーターパネルは、速度計のフルスケールやリングの太さなど細部に差はあるものの、「Sタイプ」のイメージを受け継ぐ、シンプルで飽きのこないデザインに仕上げられている。
エステートは装備充実の「SE」グレードのみのラインナップになるため、レザーシートをはじめ、必要な装備が標準で揃う。ただし、2.1リッターモデルでは、2.5リッターに標準の運転席膝部分エアバッグ「ニーボルスター」が省かれるのが残念。また、スタビリティコントロールなどは2.1リッター、2.5リッターともオプション設定という扱い。このあたりはぜひ全車標準としてほしいものだ。
(前席)……★★★★
前述のとおり、Xタイプエステートには全車標準でレザーシートが装着される。運転席は8ウェイ、助手席は2ウェイの電動調節機構が付き(2.5リッターは運転席・助手席ともに10ウェイ)、シートポジションを決めやすいのがうれしいところ。
座り心地は、クッション、バックレストともに適度に張りがあって、しっかりと支えてくれる印象である。
(後席)……★★★
リアシートに座ってまず感じたのが、なんともいえない安心感。長いバックレストと、沈み込むように座るシートクッションが、乗員を包み込むような雰囲気をつくりあげているのだ。
一方、スペースはそれほど広いとはいい難い。膝のまわりこそ拳ふたつぶんほどの空間が確保されるが、足元はやや窮屈な印象。頭上のスペースそのものも十分なレベルなのだが、サイドウィンドウやルーフのタイトなつくりから、多少圧迫感をおぼえた。
(荷室)……★★★
4730mmの全長を考えると、当然といえるだけの広さが確保されているラゲッジスペース。分割可倒式のシート、開口部の敷居に段差のない設計など、そつなくまとめられているが、反面、突出した部分がないのも事実だ。
テールゲートには、独立して開閉できるガラスハッチが採用される。狭い場所で、ラゲッジルームに荷物を出し入れするには便利な機構である。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
2.0の排気量は2096ccであるため、税金面では2.5 V6 SEと同じに扱われる。じゃあ2.5リッターモデルがトクかというと、必ずしもそうならないのがクルマの面白いところだ。
発進時のスロットルレスポンスがやや過敏なことを除けば、この2.1リッターV6は低回転から十分なトルクを発揮し、一方、スロットルペダルを踏みつけてやれば、高回転域まで活発にまわる威勢のいいエンジン。あえて2.5リッターを選ばなくても、これで十分と思わせる性能を誇っている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
2.1リッターモデルの方に好感が持てるのは、ほかにも理由がある。フルタイム4WDの2.5リッターよりも、前輪駆動の2.1リッターのほうが乗り心地が洗練されていて、より快適。目地段差を超えたときのショックの遮断にも優れる。
ロードノイズをよく抑え込んでいるのは、このエステートの美点。リアシートの乗り心地はスムーズで、多少の狭さも我慢しよう、と思わせるだけの快適性が確保されているのだ。
ワインディングロードを走った印象は、コーナリング中のロールは比較的大きいが、安定感があり、安心して飛ばすことができた。
つまり、前席でも後席でも楽しいエステートなのである。
(写真=荒川正幸)
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【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年7月9日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:--
オプション装備:メタリックペイント(9万4500円)/ピアノブラックパネル(8万4000円)/フロントパーキングコントロール(6万3000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(2):山岳路(8)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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