トヨタ・オーパ2.0D-4i Sパッケージ(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・オーパ2.0D-4i Sパッケージ(CVT) 2001.01.19 試乗記 ……229.3万円 総合評価……★★★トヨタの余力
「セダンだかワゴンだかミニバンだかわからない」と開発エンジニア自らが語る実験的モデル。ビスタをベースに、スペースユーティリティを追求。保守派アルデオ、革新オーパ。
堅い需要が見込まれないオーパに、トヨタ初のベルト式CVTを搭載するあたりは、さすがに商売上手。2リッター直噴ユニットとの相性はよくて、「初めて」を感じさせない自然なフィール。街なかドライブで、むやみにエンジン回転数が上がることがない。「スポーツモード」にすれば、シーケンシャルシフト可能な「疑似6段」に変わるのはご愛敬。
運転席からの眺めはいわゆるミニバン。フトントガラス下端が遠く、ノーズは見えない。コラムシフトが屹立する「先進」風のインパネまわり。斬新なシートアレンジメント。可も不可もない乗り心地。曖昧なハンドリング。つまらないドライブフィール。IT時代の新しい提案。トヨタの余力。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年5月24日に登場した、ビスタベースの「オーパ!」な「次世代ミディアム車」。オーパ!とは、ポルトガル語で驚きを表す感嘆詞。日本語に直すと、トヨタ・ヤヤッ!? 1.8、2リッター、2種類のエンジンを用意。トランスミッションは、前者がCVT、後者が4AT。FFのほか、4WDもある。
(グレード概要)
オーパのグレードは、ベーシックの「a」と上級グレードの「i」に大別される。「i」は、フロントフォグランプ、アルミホイールなどを装備、オーディオ類が充実する。「Sパッケージ」は、さらに「シフトステアマチック」を搭載、ステアリングホイールのスポークにシフトボタンが付く。表面のボタンでシフトダウン、裏面のボタンを手前に押すとアップとなる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
「スペースビジョンセンターメーター」と呼ばれるセンターメーターを採用、トリムにあわせ、上下を濃淡で分けた凝ったインパネデザイン。ステアリングホイール奥にメーターナセルがないので、慣れないと寂しい? ステアリングコラムから上方に生えるコラムシフトは、センターコンソール部への干渉を避けるための苦肉の策か。左手の動きが大きく、シフト操作が大仰になる。
(前席)……★★★
「i Sパッケージ」の専用シート。メッシュニットを使ったサラサラした触感。座面が長く、たっぷりした座り心地がいい。サイドサポートの張り出したスポーティな形状は、雰囲気もの。
(後席)……★★★★
たっぷりとした座席。座面のみを膝裏付近を支点に180度反転させて前に出し(折り畳むのではなく)、座面のあった場所に背もたれを前に倒して収めると、全長170cm(!)のフルフラットな荷室が現出する。無意味と思えるほど広い膝前空間はそのためか。
(荷室)……★★★
ホイールハウス後ろの荷室幅が150cm、ホイールハウス間が128cmと、横幅はボディ相応。奥行きが65cmと短いのは、後席の居住空間を重視したためだ。荷物をたくさん積みたいときは、後席を畳めばいい。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
シリンダーに直接燃料を噴射する直噴「D-4」エンジン搭載。回しても、さしてパワーが盛り上がらない退屈な4気筒。ガサついたサウンドの実用ユニット。とはいえ、もっと大切なことがある。希薄燃焼域を使いやすいCVTと組み合わせることで、省燃費を追求。CO2排出を抑え、地球温暖化に配慮した。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
マクファーソンストラット/トーションビームのコンベンショナルな足まわり。街乗りでの乗り心地は悪くないが、路面状況がいまひとつハッキリ伝わらない。また、前輪が遠くに感じられる曖昧なステアリングフィールも減点ポイント。シャキッとしない、モサモサした運転感覚だ。
(写真=阿部ちひろ)
【テストデータ】
報告者:web CG 青木禎之
テスト日:2000年10月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:3319km
タイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)同じ(いずれもトーヨー J31)
オプション装備:ナビゲーションシステム(9.3万円)/ガラスプリントTVアンテナ(2.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:408.4km
使用燃料:38.4リッター
参考燃費:10.6km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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