ドゥカティXディアベルV4(6MT)
スポーティーにも優雅にも 2025.12.01 試乗記 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。こう見えてフレンドリー
2010年の「EICMA(ミラノモーターサイクルショー)」で、異形のスポーツクルーザーとして発表された「ドゥカティ・ディアベル」。ドゥカティのLツインエンジンが持つ力強さと、クルーザーならではの足つきのよさで、日本を含め世界中でヒットとなったマシンである。
そのディアベルをもとに、ホイールベースを延ばし、ステップ位置をフォワードコントロールとし、スポーツ寄りだったキャラクターをクルーザーの本分にそって軌道修正したのが、このXディアベルだ。今回試乗したのは、そのなかでも2025年2月に発表されたばかりのXディアベルV4。車名のとおり、新たに排気量1158ccのV4を手に入れている。
実車を目の前にすると、まずは従来のモデルから継承された威圧感あるデザインに圧倒される。大きく左右に張り出すタンク、むき出しの「V4グランツーリスモ」エンジン、右側4本出しの特徴的なマフラー、240/45ZR17(!)という極太なリアタイヤ。いずれもが、他車にはない強烈な“らしさ”を醸し出している。
シート高は、先代よりやや上がって770mmとなった。クルーザーモデルとしては若干高めで足つきが不安だったが、またがった瞬間にそれは払拭された。身長160cmで短足気味な筆者でも、つま先なら両足が届く。V4化で横幅が増したはずだが、シートまわりから足もとにかけては細くまとめられており、これが足つきのよさに大きく寄与している。既存のディアベル/Xディアベルも、そのあたりは定評があったが、これならXディアベルV4も不安を覚えることはないだろう。
とはいえ、大柄に見えるタンクまわりを見るに、車重は大型クルーザーとして相応にあるのでは……。そう思いつつ恐る恐るまたがり、車体を起こしてみると、思わず「軽っ!」と声が出た。あとで諸元表を見たところ、装備重量は229kgとスポーツモデル並み。かつ重心位置が低く設計されているのだろう。見た目の印象より、はるかに軽く感じられる。
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ホスピタリティーも万全
ハンドルは幅広でストリートファイター的だが、その位置はしっかりライダー側に寄せられていて、短腕な私でもゆとりがある。ステップの位置は前述のとおりフォワードコントロールとなっており、要はかなり前方だ。そのポジションは3段階で調整可能で、今回設定されていた「真ん中の位置」では、自分の場合はかなりヒザを伸ばさないと足が届かなかった。もっとも、 一番手前に設定すれば約2cm後ろにステップがくるので、足もとの操作は楽になるはずだ。
エンジンからは、時折「2気筒だっけ?」と思うほどドゥカティらしい鼓動を感じる。これは「シリンダー・デアクティベーション」により、低回転・低負荷時に後方シリンダーを休止して前2気筒のみを稼働させるためだ。走っているといつの間にか4気筒へ戻るが、その切り替わりはまったくわからないほど自然だ。
走行モードは左グリップのスイッチで切り替えが可能で、エンジン特性やトラクションコントロールの介入度合いなど、各種設定を細かく変更できる。液晶画面のわかりやすいイラストもいい。
「ツーリング」モードのまま一般道を走っていると、50~60km/hでは3速まで上げる必要がなかった。3速に入れても、エンジン回転数が3000rpm以下になって、ノッキング気味になってしまう。ツーリングモードは高速走行寄りの調律なのだ。そこで「アーバン」モードに切り替えると、パワフルさよりも扱いやすさが前面に出てくる。2速がかなり使いやすくなり、一般道でも3速が問題なく使えるようになる。
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4気筒のパフォーマンスと2気筒のような鼓動感
バイパス的な道路で「スポーツ」モードも少し試してみたが、V4でありながらLツインのような“ドコドコ感”が強いエンジンフィールには、やはりドゥカティらしさがある。同じV4ながら、「パニガーレV4」とはまるで違う方向性の味つけになっている……。
なんて思いながら少し大きめにスロットルをひねると、とたんにパニガーレの血筋が顔を出す。パニガーレ的な、トルクフルでいて高回転域が扱いやすいエンジンキャラクターも備えているのだ。この両面性は、「ツイン・パルス」といって70°オフセットされたクランクピンによる不等間隔点火に由来する。これにより、V型4気筒なのに2気筒のような鼓動感が生まれるのだ。
シフターの操作感も独特で、シフトアップ時には「ギアが入った」という感触がしっかり伝わり、またシフトダウン時にはキックバックがしっかり抑えられている。このあたりはドゥカティの強いトルク特性を踏まえて、丁寧に調律されているのだろう。もちろん、シフトアップ/ダウンの両方に対応したクイックシフターも、標準で装備される。
ハンドリングは驚くほどスポーティーで軽快だ。一般的なクルーザーモデルは、ホイールベースが長く、ハンドリングの穏やかなバイクが多いが、XディアベルV4はとても軽やか。その秘密は、「カウンター・ローテーティング・クランクシャフト」と呼ばれるMotoGP由来の技術による。クランクシャフトをホイールとは逆回転させることで、ホイールのジャイロ効果を適度に相殺するのだ。これが俊敏なハンドリングに寄与し、加減速時のピッチングモーションを抑える効果がある。
V2からV4に進化したことで、クルーザーというよりグランツーリスモとでも呼びたくなるような走りを得たXディアベルV4。1台で2機種分か、あるいはそれ以上のキャラクターを併せ持ち、取りまわしもしやすいパッケージを備えたこのバイクなら、飽きずに末永く付き合えることだろう。
(文=小林ゆき/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資/車両協力=ドゥカティジャパン)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1620mm
シート高:770mm
重量:229kg
エンジン:1158cc 水冷4ストロークV型4気筒DOHC 4バルブ
最高出力:168PS(124kW)/1万0750rpm
最大トルク:126N・m(12.8kgf・m)/7500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:6.6リッター/100km(約15.2km/リッター)
価格:333万5000円~336万9000円
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小林 ゆき
専門誌への寄稿をはじめ、安全運転セミナーでの講習やYouTubeへの出演など、多方面で活躍するモーターサイクルジャーナリスト。ロングツーリングからロードレースまで守備範囲は広く、特にマン島TTレースの取材は1996年から続けるライフワークとなっている。
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