トヨタ・アルテッツァジータAS200 Zエディション(6MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルテッツァジータAS200 Zエディション(6MT) 2001.08.16 試乗記 ……290.3万円 総合評価……★★セダンの座を脅かす新ジャンルモデル
「既存のセダン、クーペ、ステーションワゴンにはない魅力を付与した新ジャンルのクルマ」と、トヨタが紹介するのが「アルテッツァジータ」だ。ベースとなったのはもちろんアルテッツァ“セダン”。それをベースにリアセクションを“ショートワゴン”風につくり直したのがジータということになる。
リアのサイドドアにセダンと共通アイテムを用いたこともあり、全体的な雰囲気は紛れもないアルテッツァ一族。アングルによってはワゴン風にも見えるが、リアエンド部分の平面絞りが強いため、斜め前方から見ると一瞬セダンとの識別が難しいほど。こうして見た目の「個性」「スタイリッシュさ」を念頭に置いたデザインが採用された結果、ラゲッジスペースは決して広いとはいえない。カタログ上の全長はセダンに比べて10cmほどのプラスだが、ボディの基本骨格は投資額を抑える意味もあり、実はセダンとの共有が図られている。
セダンに用いられてきた2リッターの直列6気筒ユニットと共に、セダンにはない3リッターエンジンを搭載するのも、ジータならではの特徴。3リッターモデルには4WD仕様もラインナップされるが、4駆ジータのトランスミッションは、RWD(後輪駆動)モデルの5段ATに対し、4段ATと、ギアが1枚少なくなるのが残念。
セダンに積まれる「スポーツ心臓=4気筒3S-G型ユニット」は、こちらジータには用意されない。今回のテスト車「AS200」の6MTバージョンが、最もスポーティなジータということになる。このあたりのバリエーション展開の難解さが、現在のアルテッツァシリーズのウイークポイントのひとつだ。
どうやらトヨタは、このクルマを、実用性の高さより「より個性的なアルテッツァ」としてセールスしたいようだ。けれどもセダンでもなく、そしてワゴンでもないというジータからは、ユーザー層が見えにくい。また、このクルマの登場により、「セダンにも3リッターを!」の声が高まるだろう。
兄貴分であるセダンの座を脅かすちょっぴり罪つくりなアルテッツァ……、それがアルテッツァジータというクルマである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アルテッツァは、1998年10月に発表されたFRセダン。同じ2リッターながら、直4と直6エンジンがあり、トランスミッションはいずれも6段MTほか、4気筒モデルには5段AT、6発には4段ATが組み合わされる。2001年7月2日からワゴン版たる「アルテッツァジータ」が加わった。ジータは、3リッター直6モデル(4WDは4段AT、FRは5段AT)と2リッター直6モデル(FRのみ。4段AT/6段MT)がカタログに載る。
(グレード概要)
ジータには、2リッターモデルの「AS200」と3リッター「AS300」がラインナップされる。テスト車のAS200(6MT)は、ジータのなかで最もスポーティなモデル。素の「AS200」(218.0万円)、ホイールがスチールの15からアルミ17インチに、前後異形サイズのタイヤを履き、ステアリングやシフトレバーが本革仕様になるなどの「Zエディション」(248.0万円)、シートが本革&エクセーヌになり、パワーシートが8WAYに、サイド&カーテンエアバッグが標準となる「Lエディション」(272.0万円)が用意される(価格はいずれも6MTモデル)。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ダッシュボードまわりのデザインはセダンと同一。「ジータだから」という理由で異なる部分はない。ただ、セダンの直4「6MT」モデルは、クロノグラフ調メーターのセンターにタコメーターがくるが、直6ジータ(6MT)のメーターは、ほかのグレードと同じ、速度計が中心に配されたものとなる。インパネまわり各部の質感は、デビュー当初のセダンに比べると大幅に向上した。それでもまだ「抜群!」とまでは行かないが……。
(前席)……★★★
フロントシートのデザインも、基本的にセダンと同じ。ホールド性は上々。助手席は、背もたれを前に倒して「シートバックテーブル」にすることができる。分割可倒式の後席背もたれを倒せば、かなりの長尺物を載せることも可能だ。シート表皮はジャカード織物が標準で、「Lエディション」は本革とエクセーヌのコンビネーションとなる。
(後席)……★★
リアシートは、「右:左=6:4」の分割可倒式機構を標準採用する。シートベルトは3点式が3人分用意される。とはいえ、センターは、シートベルトを天井から引き出す「ルーフ内蔵方式」。シートバック強度を上げる必要がなく、コストの点で有利だが、着装性にはやや難がある。
(荷室)……★★
ジータのラゲッジスペースは一見して狭い。「ゴルフバッグは4つ入る」というが、リアシート使用時の容量=390リッターは、406リッターのセダンよりも小さい(!) 国内での一泊程度の旅行には不足はないかも知れないが、スーツケースのようなものを飲み込むのは苦手なタイプ。ジータは欧州でも販売されるが、彼の地では不満の声がで出そうだ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
2リッター直6「1G-FE型」ユニットは、すでにセダンでお馴染みのエンジン。ストレート6らしく高回転域までスムーズに回るが、イザというシーンでの“パンチ感”はいまひとつ。ジマンの6段MTのギア比は、セダンと同じ。せっかくギアが6枚ありながら、「ロウ-セカンド-サード」間でワイドレシオなのが、不満の残るポイントだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
フットワークのテイストは基本的にセダン同様。FR(後輪駆動)モデルらしいナチュラルなハンドリングが美点だ。乗り心地に関しては、セダンと比較してわずかに振動の減衰が鈍い印象。大きな開口部となってボディ剛性を低める要因となるテイルゲイトまわりは、念入りに補強されたという。とはいえ、やはりボディ全体での剛性バランスは、セダンに分がありそうだ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者: 河村康彦
テスト日: 2001年7月9日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式: 2001年型
テスト車の走行距離: 344km
タイヤ: (前)214/45ZR17/(後)225/45ZR17(いずれもブリヂストン Potenza RE040)
オプション装備: トラクションコントロール(5.1万円)+へッドランプクリーナー(3.7万円)+DVDナビゲーションシステム(26.5万円)+前席サイド&カーテンエアバッグ(7.0万円)
テスト形態: ロードインプレッション
走行状態: 市街地(4):山岳路(6)
テスト距離: --
使用燃料: --
参考燃費: --

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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