トヨタ・ウィンダム3.0G リミテッドエディション・ブラックセレクション(5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ウィンダム3.0G リミテッドエディション・ブラックセレクション(5AT) 2002.02.23 試乗記 ……402.8万円 総合評価……★★★エグゼクティブディレクター
「レクサスES300」として北米を主戦場とする4ドアセダン。邦名「トヨタ・ウィンダム」。先代まで国内用に用意され、販売のメインとなっていた2・5リッターV6を、シャシーを共用するカムリとの差別化のためバッサリ落とし、3リッターV6一本での代替わりとなった。4段ATのカムリと比べ、こちらは5段。プレミアムチャンネル用モデルですから。
「リミテッドエディション・ブラックセレクション」では、ただの(?)リミテッドエディションで使われる「木目調+革巻き」コンビステアリングホイールのレザー部分が黒となる。黒基調のインテリア、オプションのこれまた黒いレザーシートが奢られたテスト車の運転席に座ると、「本部長」というより「エグゼクティブディレクター」の気分。テスト車は、いわば松竹梅の「松」のカリフォルニア巻きだ。張りの弱い柔らかめシートと多めに使われた木目調パネルが、わかりやすくラグジュアリー。キーを捻ると、「メーター盤面」「数字」そして「赤い針」と順に点灯する「セルシオ」譲りの演出がドライバーの気持ちをくすぐる。
といった第一印象は、なるほど「LS430(セルシオ)」の弟分だが、走らせると意外とフツー。“世界標準”エンジンはシュルシュルと回り、乗り心地はスムーズ、室内も静かだが、リポーターの基準がどうしても兄貴分のそれらになるためか、「うーん、あと一歩」。……と思わせるところが、実は、さすがトヨタ。レクサスES300のUSAでのカテゴリーは「Near Luxury」(ラグジュアリーカーのエントリーセグメント)だから、これでいいのだろう。上昇志向の強いエグゼクティブディレクターにピッタリだ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1991年にカムリのシャシーを利用した高級スペシャルティセダンとして登場。北米でのトヨタ高級販売チャンネル「レクサス」で、ES300として販売される。いわずと知れた、日本名「ウィンダム」。96年8月21日に、ホイールベースを50mm延長した2代目がデビュー。2001年の同じく8月21日、同様にホイールベースを50mm延ばして2720mmとしたブランニューシャシーを使用した3代目ES300ことウィンダムが誕生した。エンジンは、2.5リッターV6が落とされ、3リッターV6のみに。組み合わされるトランスミッションは、4段から5段ATとなった。
(グレード概要)
グレードは大きく「X」と上級版「G」にわかれる。「G」には、ダンパーの減衰力を16段連続可変させるセミアクティブサスたる「H∞-TEMS」が搭載されるのが、「X」との最大の違い。そのほか、DVDナビゲーションシステムが標準で装備される。「X」「G」ともに、黒内装の“ブラックセレクション”が設定され、「G」には、さらにトラクションコントロール、アンチスピンデバイス「VSC」、クルーズコントロール、木目調+本革巻きステアリングホイールなどが装備された“リミテッドエディション”、その黒内装“リミテッドエディション・ブラックセレクション”がラインナップされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
つや消黒のフェイシアに、木目調パネルを贅沢に使ったインパネまわり。木目“調”ながら、安物感はない。独立3眼式のオプティトロンメーターが標準装備される。細かいところでは、トランクや燃料口のフタを開閉するのにレバーでなくボタンを使ったり、ステアリングコラム右側のコイン入れにまで内張りが施されるところなどが、ラグジュアリーカーエントリー部門の気遣いだ。さらに、「オーバーヘッドコンソール、クローブボックス、灰皿などの開閉スピードまで一定化」(カタログ)しているそうです。
(前席)……★★★★
ソファのようにソフトな座り心地。運転席、助手席とも8WAYのパワーシート。ドライバーズシートには、さらに電動ランバーサポートが付く。左右シート間に、肘かけを兼ねた、深さ「5cm+20cm」の二重のモノ入れあり。便利だ。つい財布を入れたままにしがちになる。
(後席)……★★★★
エグゼクティブディレクターが座っても満足するであろうリアスペース。たっぷりした座り心地のいい革シートにして、足もと、膝前、頭まわりと、スペースに不満はない。読書灯が備わらないのが、ショファードリブンならぬドライバーズカーの証か。とはいえ、リアガラス用電動サンシェードや、小物入れとカップホルダーを兼ねた大きなセンターアームレストが装備される。なお、北米戦略車ゆえか、3人分の3点式シートベルトと、伸縮自在の立派なヘッドレストが備わる。センターシートにも! ISOFIX対応チャイルドシート用アンカーと、もちろんチャイルドシート頂部を留めるテザーアンカーも設置される。
(荷室)……★★★
床面最大幅156cm、奥行き108cm、高さ50cm、VDA法で519リッターが謳われる大きなトランクルーム。10インチゴルフバッグ、シューズバッグ、スポーツバッグをそれぞれ4セット収納できるという。ヒンジが荷室に干渉するタイプだが、メルセデスにならってヒンジカバーが付けられ、荷物を汚さないよう配慮される。トランクスルー可。向かって左に奥行き12cmの小物入れあり。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
「VVT-i」こと可変バルブタイミング機構と、3段階に吸気系を変化させる「ACIS-V」を備えた3リッターV6。3代目ウィンダムは、「高級セダンでの世界標準を目指」(プレス資料)すため、エンジンはコレ1本となった。スロットルペダルと電気的に結ばれるフライバイワイヤを採用、秀逸な5段ATと組み合わされ、リニアな加速を見せる。ことさら官能的でもエクサイティングでもないが、それがトヨタ流。出しゃばらない。「平成12年度排出ガス規制値を25%低減レベル」を実現した。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
フロントがマクファーソンストラット、リアがデュアルリンクのストラットと、サスペンション形式に目新しさはないが、ダンパーの減衰力を16段階に変化させるセミアクティブ機能を搭載、ボディの揺れを「非線形H∞制御」する、という。具体的には、フロアコンソールのダイヤルで硬軟4段階から選択可能だが、個人的には、いずれを選んでも「ラグジュアリーカーとして感銘を受ける」ことはなかった。そもそも、最後のセッティングをドライバーに丸投げするのはいかがなものか。ウィンダムのドライブフィールは印象に残るタイプでない分、ビジネスエクスプレスとして、車内で英会話を勉強したり、音楽を聴いて気分を変えるのにはいいかも。世のエグゼクティブは「運転」なんぞにかまけているヒマはないのだ。
(写真=荒川正幸/なお外観写真はウィンダム3.0Gブラックセレクションとなります。/内装写真=ウィンダムカタログより)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年1月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:4976km
タイヤ:(前)215/60R 95H(後)同じ
オプション装備:本革シート(フロントシートヒーター付き=16.8万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:256.1km
使用燃料:27.0リッター
参考燃費:9.5km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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