ボルボV70XCオーシャンリミテッド【試乗記】
カッコイイ海の男 2002.01.25 試乗記 ボルボ・V70XC”オーシャンリミテッド”(5AT) ……570.0万円 ボルボの中堅ワゴンV70をベースに、最低地上高を55mm増やして215mmにしたクロスカントリーモデル「V70 XC」。その上級グレード「2.4T」をベースにする“オーシャンリミテッド”は、ボルボ主催のヨットレース開催を記念した、特別限定モデルだ。海が似合うルックスになった「クロカン」に、webCG記者が試乗した。ボルボとヨット
2001年1月21日、神奈川県は逗子マリーナで、ボルボ「V70XC"オーシャンリミテッド"」のプレス向け試乗会が開かれた。オーシャンリミテッドは、その名の通り、V70の車高を上げ、よりワイルドな外観をもつ「XC=クロスカントリー」の特別限定車。ボルボグループが主催するヨットレース「ボルボオーシャンレース」の開催を記念してつくられた。日本での販売台数は、わずか150台!
ベースとなったのは、クロスカントリーの上級グレード「2.4T」。2.4リッター直5ライトプレッシャーターボ(200ps、29.1kgm)に5段ATを組み合わせた4WD車、という機関面での違いはない。
「オーシャンブルーメタリック」と呼ばれる専用ボディカラー、シルバーカラーのサイドモール、同じく銀色にペイントされたノーズ/リア下面のスキッドプレートが、スペシャル装備。内装では、メッシュ仕上げのアルミパネルが奢られる……といったことを知らなくても、ボルボV70XCオーシャンリミテッドは、すぐわかる。なぜなら、フロントドアのサイドに、「THE VOLVO OCEAN RACE」と刻まれた青いプレートが貼られているから。
ボルボオーシャンレースとは、1973年から4年おきに行われてきたヨットレースのこと。今回のレースは12名のクルーで構成される8艇が、2001年9月23日に英国はサザンプトンを出港、6万495kmにおよぶルートを航海、2002年6月8日ドイツはキールでゴールを迎えるというもの。8ヶ月半という長いレース期間と、距離の長さから「海のパリダカールラリー」と称される過酷なイベントだ。このレースが今回からボルボの主催(前回はスポンサー)となったため、それを記念してのモデル"オーシャンリミテッド"がリリースされたというわけ。
ヨットレースは、バランス感覚やチームワーク、安全性など、ボルボのクルマづくりと一致する点が多く、そのためボルボは、ヨットイベントのバックアップを務めてきた歴史があるそうだ。
試乗会当日は、あいにくの大雨。強風が、ヤシの木をイメージした(?)シュロを揺らし、大粒の雨が横からたたきつける。華やかなリゾート地も、平日の閑散と悪天候で、ちょっと物悲しい雰囲気が漂う。
地中海風の建物脇にあるプールサイドで、“オーシャンリミテッド”と対面した。空の灰色を映して暗くうねる太平洋、というか相模湾をバックに、「オーシャンブルーメタリック」の深い青と、シルバーカラーのサイドモールとの対比が、目にとてもあざやか、な気がした。もし天気がよければ……。でも、とてもキレイな色だと思う。
ボディ下部を保護する「スキッドプレート」や、濃紺の樹脂製バンパー&サイドプロテクションモールが、クロスカントリーであることを主張する。スペシャルペイントとよく合っていて、うーん、都会的。クロスカントリーなのに。
大きな手に乗って
オフブラックの本革シートをはじめ黒基調の室内に、メッシュ仕立てのアルミパネルが映える。モノトーン調の装いがオシャレだ。センターコンソールに収められた、325Wのアンプを備えるオーディオシステムも自慢の1つ。車内には11個ものスピーカーが配され、ドルビーサラウンドがコンサートホールのような空間を演出するという。でも自宅にサラウンドシステムなんて高級オーディオを持たないワタシ。前後左右から聞こえる音楽に、ちょっと戸惑いました。音がした方向に思わず振りかえったりして……、ハズカシイ。
雨がますます強い、逗子の海沿いを走る。2.4リッター直5ライトプレッシャーターボ・インタークーラー付きは、あらゆる回転領域で穏やかな性格。レバーの前後操作でシフトできる「ギアトロニック」とあわせれば、200psの出力をいかんなく発揮できる、ハズ。雨で煙る海岸線でアクセル踏みこめば、わずか1800rpmで発生する29.1kgmの最大トルクを受けて、1710kgのボディはスルスルと加速する。荒々しさは微塵もない。「背中を蹴られるように加速する」ではなく、大きな手に乗ってやんわりと運ばれるような、優しい感じ。ステアリングフィールも、ボディが1710kgと重いせいかキビキビとは感じないが、ステアリングホイールを切った分だけ確実に、安定感をともなって曲がる。雨で視界がさえぎられ、わだちに水の溜まった路面でも、リラックスしたドライブが楽しめた。
というわけでV70 XC"オーシャンリミテッド"、クールな見た目と誠実な中身が「カッコいい海の男」を彷彿とさせるクルマだった。
(文=webCG 大澤俊博/写真=郡大二郎/2002年1月)

大澤 俊博
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。