第7戦カナダGP「雨でも晴れでもベッテル」【F1 2013 続報】
2013.06.10 自動車ニュース ![]() |
【F1 2013 続報】第7戦カナダGP「雨でも晴れでもベッテル」
2013年6月9日、カナダはモントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキットで行われたF1世界選手権第7戦カナダGP。レースを制したレッドブルのセバスチャン・ベッテルは、雨でトリッキーなセッションとなった予選でポールポジションを獲得すると、一転して快晴に恵まれた決勝日でもそのパフォーマンスを遺憾なく発揮した。今季3勝した最初のドライバーであるベッテルは、ポイントリードの拡大に成功。4連覇をもくろむチャンピオンは、シーズン中盤に向けてしっかりした足固めをしている。
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■メルセデス・ピレリ極秘タイヤテストの余波
前戦モナコGPで判明したメルセデスのピレリタイヤ極秘テストが波紋を呼んでいる。
第5戦スペインGP後の5月15日から3日間、ピレリは来年のタイヤ開発を中心とした極秘テストをメルセデスとともにバルセロナで行った。総距離1000kmにおよぶ走行は、レースドライバーであるニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンの手で、今季型のマシン「W04」で実施されたという。
F1を統括するFIA(国際自動車連盟)は、チームから得た情報を精査した結果、6月5日にこの一件を同連盟の国際法廷に持ち越すことを決定した。レギュレーション違反の嫌疑がかけられたのだ。
実はフェラーリも4月23、24日、同様にスペインで秘密裏にピレリのタイヤテストを行っており、FIAはスクーデリアからも事情を聴取したが、こちらは無罪放免となった。メルセデスと違い、フェラーリはコンプライアンスを考慮して2011年型の古いマシンを使ったためだ。
コスト削減策の一環として、シーズン中のテストはレギュレーションにより禁止されている。一方で唯一のF1タイヤメーカーであるピレリは、安全なタイヤの安定供給に加えて、レースを盛り上げるためのタイヤを開発する役割も担っており、実車によるテストが不可欠なことも事実である。
メルセデスにしろピレリにしろ、このテストが今年のチャンピオンシップに影響することはないというスタンスを取り続けているが、1000kmものマイレージを、開発真っただ中の現行型マシンで走れるということがフェアかどうかを問えば、おのずと答えが出てきはしないだろうか。
このメルセデス・ピレリ極秘テスト問題は長期化することが予想されるが、フェアネスという観点からも、表沙汰にしないで行うタイヤ開発テストには改善の余地がありそうである。
一方でタイヤテストとは別の、シーズン中のテストについては来年から解禁される方向で話が進んでいる。世界に11しかないF1チームは何かと意見がまとまらないことで有名だが、カナダGPの週末にテスト復活が議論され、GPウィークに付随して行われる2日間×4回のテスト案に、大半が賛成にまわったという。今後はFIAで検討される予定だ。
タイヤにテスト、さまざまな禍根を残しながら、F1は「タイヤがレースをおもしろくする」というピレリタイヤのコンセプトが生まれたカナダに上陸した。
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■ベッテルが今季3度目のポールポジション、ボッタス大健闘の予選3位
スペインGPの後、ピレリは2戦後のカナダGPから、トレッドの剥離(はくり)が起きにくい改良型リアタイヤを投入すると発表した。しかし全チームから同意を得ることができず、カナダでは金曜日のフリー走行でプロトタイプが試走用として提供され、次のイギリスGPから完全移行されることとなった。
金曜日、土曜日とも曇天と雨、さらに例年にない低温に見舞われたモントリオール。予選もぐずついた空模様をにらみながら行われた。トップ10グリッドを決めるQ3も、いつ降るかやむか分からないトリッキーな状況。そんななか最速タイムをたたき出したのは、レッドブルのセバスチャン・ベッテルだった。今季3回目、自身通算39回目、そしてこの地で3年連続となるポールポジションなのだが、しかしモントリオールはベッテル、レッドブルとも勝ったことがない数少ないコースのひとつ。それでもポイントリーダーは、カナダ初、今年3度目の勝利に向けて、「ドライでもウエットでも上々」と自信たっぷりのコメントを残した。
メルセデスの連続ポールポジションは4でストップしたが、ルイス・ハミルトンが2番手タイムでフロントローに並んだ。最後のフライングラップ、最後のシケインでコースを外れたことでわずか0.087秒及ばず。とはいえベッテルとは違いハミルトンはここで3勝を記録している“マスター・オブ・モントリオール”だ。追い上げも十分にあり得た。
今季不調にあえいでいる中堅チームのウィリアムズを駆り、ルーキーのバルテリ・ボッタスが大健闘の予選3位を獲得。これまで6戦でノーポイントと苦しんでいるチームに得点をもたらすべく、23歳のフィンランド人ドライバーの奮起に期待が集まった。
過去3戦のポールシッター、メルセデスのニコ・ロズベルグが4番グリッド。レッドブルのマーク・ウェバーに次いで、レースペースで好調さを見せたフェラーリのフェルナンド・アロンソが定位置の6番グリッドにつけた。
2台がQ3に進出したトロロッソ勢は、ジャン=エリック・ベルニュが7位、ダニエル・リチャルドは10位だったが、リチャルドはピット出口での違反を取られペナルティーで11位に後退。フォースインディアのエイドリアン・スーティル8位、ロータスのキミ・ライコネンは9番手タイムを記録したが、ライコネンもピットでの違反で10位に降格し、Q2最速=予選11位だったザウバーのニコ・ヒュルケンベルグが繰り上がり9番グリッドを得た。
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■ベッテル得意の“先行逃げ切りレース”
前2日間の天候が嘘のように日曜日の空は晴れわたり、気温も24度まで上昇した。
この日のベッテルは前日のコメントを裏付けるようにドライでもライバルを寄せつけず、得意の“先行逃げ切りレース”を70周にわたって披露した。
スタートでトップを守ったベッテルは、オープニングラップで2位ハミルトンとのギャップを2秒とし、早々にDRS作動域の1秒を抜け出した。そしてその差は最初のピットストップとなる16周目までに7秒まで拡大。その後2度目のタイヤ交換も難なくこなし、最大20秒までリードを築いたレッドブルのエースは、チームからの指示もありペースを抑え、最終的に14秒もの大差でチェッカードフラッグを受けた。
途中、10周目にはモントリオール独特のコース間近にそびえる壁にホイールを当て、また52周目には1コーナーをはみ出るミスをおかしたが、それ以外は空模様同様、チャンピオンの走りに曇りなし。6位までを周回遅れにする圧倒的な勝利を飾った。
一方、好天が悪く働いたのが予選3位のボッタスだった。スタート直後に両脇からロズベルグ、ウェバーに抜かれ5位、何とかアロンソを抑え切ろうとしたが、フェラーリは1周目終了間際のバックストレートでウィリアムズを抜き一気に6位まで順位を落とした。このルーキーは待望の初得点を目指したものの、ウィリアムズのペースは思わしくなく、結局ポイント圏外の14位で完走することなった。
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■アロンソ躍進、ロズベルグ、ウェバー、そしてハミルトンを抜く
ベッテル&レッドブルの快進撃を前に冷めかけた観客の興味は、残る表彰台のポジションをかけた攻防により再び熱を帯びることとなった。
ハミルトンが2位、ロズベルグ3位と序盤2-3フォーメーションを築いたメルセデス勢だったが、特にロズベルグのタイヤの性能悪化は著しく、さらに最初のピットストップでもう一度スーパーソフトを履いたのが裏目に出て苦戦。ついに30周目にはウェバー、アロンソに次々と抜かれ、結果5位でレースを終えた。
3位の座を奪ったウェバーは、36周目、ケイターハムのギド・バン・デル・ガルデを周回遅れにする際に接触、フロントウイングの一部を壊してしまう。このチャンスを見逃さなかったのが4位アロンソで、42周目にウェバーを抜き3位までポジションを上げ、ウェバーは4位の座に甘んじることとなった。
最大のライバル、ベッテルの優勝がほぼ確実となったいま、アロンソにできることは2位でゴールしダメージを最小限にすること。フェラーリのエースは2位ハミルトンに照準を合わせ、みるみる差を縮め、そして残り8周の時点でその望みをかなえた。
ハミルトンは今年3度目の3位表彰台を獲得。アロンソとハミルトン、当代きってのトップドライバーの丁々発止は見応え十分だった。
アロンソはチャンピオンシップで1つ順位を上げて2位となったが、ベッテルは21点から36点にまでリードを広げることに成功した。
これからヨーロッパでの中盤戦に突入するが、ここで3連覇中のチャンピオンに誰かが待ったをかけないと、この流れが一気に加速するのではないか、そんな予感を抱かせるベッテルの独走劇だった。
次戦イギリスGP決勝は、6月30日に行われる。投入が見込まれる改良型リアタイヤは、この戦況に影響するのだろうか?
(文=bg)
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