第198回:クラシックカーに浸る週末 ペブルビーチ・コンクール・デレガンス2013を観る
2013.09.06 エディターから一言世界で最も権威あるクラシックカーの祭典“ペブルビーチ・コンクール・デレガンス”が2013年8月18日、米国カリフォルニア州のペブルビーチ・ゴルフリンクスで開催された。第63回となる今年の見どころは、創業50周年のランボルギーニ。そして初代の登場から50周年を迎えた「ポルシェ911」だった。
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全世界から248台が集結
クルマ好きにとって理想の夏休みの過ごし方は? そう聞かれたら、筆者は自信をもってこう答えたい。「ペブルビーチを訪れるに限る!」と。8月第3週の週末、ここはまさにクラシックカーの夢の楽園になるのだ。
その中心となるイベントが、カリフォルニア州モントレーのペブルビーチ・ゴルフリンクスにて開催される“ペブルビーチ・コンクール・デレガンス”である。これは平たく言えば、クラシックカーの美を競い合うコンクール。クルマ好きなら、誰もが名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。この日曜日、ペブルビーチ・ゴルフリンクス18番ホールの芝の上には、クラシックカーがずらりと並ぶのである。
さらに、この週末に向けてペブルビーチでは、さまざまなクラシックカー関連イベントが開催される。えりすぐりのクラシックカーで周辺の街を走行するツール・デレガンスや、クルマやモーターサイクル、さらにはさまざまなグッズなどが展示されるレトロオートなども、それぞれにファンの多い人気イベントなのだ。
しかし、何といっても目玉はコンクール・デレガンスだ。今年で実に63回目となったこのイベント、出展車両の数は248台にも及んだ。全米36の州、そして世界12カ国から、この“聖地”に貴重なクラシックカーたちが集結したのである。
日産とペブルビーチのひとかたならぬ関係
出展車両はいくつかのカテゴリーに分けられ、その中で審査が行われる。例えば1900年代初頭のアンティークモデル、アメリカンクラシックのオープン/クローズ、戦前/戦後のスポーツカーに、フェラーリ、ロールス・ロイス&ベントレー、未レストア車クラス等々、クラス分けは実にバラエティーに富んでいる。
また、その年ごとにテーマ車が設定され、それに沿ったクルマたちも展示される。今年で言えば、誕生50周年を迎えた「ポルシェ911」や、こちらはブランドが創業50周年となるランボルギーニなどが、それに当たる。そして最後に全体の中から1台、選出されるのが栄えある“Best of Show”だ。
審査は、世界の著名な自動車人からなる審査委員会によって行われる。例えばアストン・マーティンのウルリッヒ・ベッツCEO、ポルシェのデザイン部門トップを務めるミハエル・マウアー氏、元BMWのクリス・バングル氏に、伝説のレーシングドライバーであるスターリング・モス、ジャッキー・スチュアート両氏など、顔ぶれはそうそうたるもの。日本からは日産自動車のチーフクリエイティブオフィサーである中村史郎氏、そして『グランツーリスモ』で知られるポリフォニー・デジタルの山内一典氏が、ここに加わっている。
中村氏は、今年が審査員を務めるようになって10年目という節目の年であり、オープニングイベントではスピーチも行っていた。インフィニティは、ここペブルビーチの会場に常にブースを出して、試乗などのイベントを開催。場の盛り上げにひと役買っている。プレミアムブランドを標榜(ひょうぼう)するなら、ここにいるのは絶対条件。その存在感がますます増してきているのも、よく理解できる気がした。
ちなみに中村氏いわく、日産自動車としても今後、クラシックカー文化の発展に寄与していくための構想があるとのことだった。それが何かはまだ分からないが、今やペブルビーチの顔のひとりである中村氏がそう言うのだから、楽しみにしておきたい。
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このイベントを観ずして……
さて、この“ペブルビーチ”の週末には、周辺で他にもさまざまなイベントが開催されている。例えばクエイル・ロッジにて開催されている「ア・モータースポーツ・ギャザリング」は、入場人数を絞ることでエクスクルーシブ性を出した、実にセレブ感あふれるイベント。入場料には場内での飲食などもすべて含まれていて、筆者も昼間から、いや朝から、山盛りのシーフードを堪能しつつシャンパン片手にクラシックカーを楽しんでしまった。あまりの人気に今ではチケットにプレミアまで付いているということである。
他にもラグナ・セカのレーシングコースで開催されている「モータースポーツ・リユニオン」は有名なイベントだ。それこそ戦前のものから今に至る世界のさまざまなレースで活躍したレーシングカーが、本気の勢いで走るのだから堪(たま)らない。
また、今回は訪れなかったが、イタリア車だけのイベント「コンコルソ・イタリアーノ」もある。今年はランボルギーニ50周年ということで大いに盛り上がっていたようで、行けるチャンスがなくて残念だ。
他にもRMやグディングのオークションは有名なところ。しかも、それだけではなくこの週末のペブルビーチ周辺は、大小さまざまなクラシックカー関連のイベントが開催されて、まさに地域全体がクラシックカー天国になっている。熱にうかされるように撮り歩いた写真で、少しでもその熱気を感じていただければうれしい。
そして皆さんにもゼヒ、この8月の“ペブルビーチ”をいつか一度体験してほしいと心から思う。間違いなく、ここはクルマ好きにとっての真夏のパラダイス。私もすでに今から、来年の予定を立て始めているところなのだ。
(文と写真=島下泰久)
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島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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