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第198回:クラシックカーに浸る週末 ペブルビーチ・コンクール・デレガンス2013を観る

2013.09.06 エディターから一言 島下 泰久

世界で最も権威あるクラシックカーの祭典“ペブルビーチ・コンクール・デレガンス”が2013年8月18日、米国カリフォルニア州のペブルビーチ・ゴルフリンクスで開催された。第63回となる今年の見どころは、創業50周年のランボルギーニ。そして初代の登場から50周年を迎えた「ポルシェ911」だった。

今年50周年を迎えた「ポルシェ911」はテーマ車のひとつ。オープニングイベントでも出展車のうち2台が展示された。こちらはカルマン社とともに製作された幻のカブリオレの試作車。
今年50周年を迎えた「ポルシェ911」はテーマ車のひとつ。オープニングイベントでも出展車のうち2台が展示された。こちらはカルマン社とともに製作された幻のカブリオレの試作車。
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手前は1963年に製造された「ポルシェ911」、当時はまだ「901」のプロトタイプ。外装はディテール以外ほぼ完成しているが、室内はメーターまわりなどさまざまな所に「356」ゆずりの部分が見られるなど結構異なっている。
手前は1963年に製造された「ポルシェ911」、当時はまだ「901」のプロトタイプ。外装はディテール以外ほぼ完成しているが、室内はメーターまわりなどさまざまな所に「356」ゆずりの部分が見られるなど結構異なっている。 拡大
コンクール当日。会場に入ると、まずは各メーカーのコンセプトカーが一堂に会するコーナーが。ポルシェがフランクフルトショーで正式に公開する予定の「918スパイダー」も並んでいた。
コンクール当日。会場に入ると、まずは各メーカーのコンセプトカーが一堂に会するコーナーが。ポルシェがフランクフルトショーで正式に公開する予定の「918スパイダー」も並んでいた。 拡大
コンクール参加者は年式やタイプなどからクラス分けされる。こちらは「アンティーク」クラスで3位となった「ポープ・トレド タイプXII ロワ デ ベルジュ 7パッセンジャー ツーリング」(1906年)。クルマもいいけれど、出展者のコスプレも見もの!
コンクール参加者は年式やタイプなどからクラス分けされる。こちらは「アンティーク」クラスで3位となった「ポープ・トレド タイプXII ロワ デ ベルジュ 7パッセンジャー ツーリング」(1906年)。クルマもいいけれど、出展者のコスプレも見もの! 拡大

全世界から248台が集結

クルマ好きにとって理想の夏休みの過ごし方は? そう聞かれたら、筆者は自信をもってこう答えたい。「ペブルビーチを訪れるに限る!」と。8月第3週の週末、ここはまさにクラシックカーの夢の楽園になるのだ。

その中心となるイベントが、カリフォルニア州モントレーのペブルビーチ・ゴルフリンクスにて開催される“ペブルビーチ・コンクール・デレガンス”である。これは平たく言えば、クラシックカーの美を競い合うコンクール。クルマ好きなら、誰もが名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。この日曜日、ペブルビーチ・ゴルフリンクス18番ホールの芝の上には、クラシックカーがずらりと並ぶのである。

さらに、この週末に向けてペブルビーチでは、さまざまなクラシックカー関連イベントが開催される。えりすぐりのクラシックカーで周辺の街を走行するツール・デレガンスや、クルマやモーターサイクル、さらにはさまざまなグッズなどが展示されるレトロオートなども、それぞれにファンの多い人気イベントなのだ。

しかし、何といっても目玉はコンクール・デレガンスだ。今年で実に63回目となったこのイベント、出展車両の数は248台にも及んだ。全米36の州、そして世界12カ国から、この“聖地”に貴重なクラシックカーたちが集結したのである。

日産とペブルビーチのひとかたならぬ関係

出展車両はいくつかのカテゴリーに分けられ、その中で審査が行われる。例えば1900年代初頭のアンティークモデル、アメリカンクラシックのオープン/クローズ、戦前/戦後のスポーツカーに、フェラーリ、ロールス・ロイス&ベントレー、未レストア車クラス等々、クラス分けは実にバラエティーに富んでいる。

また、その年ごとにテーマ車が設定され、それに沿ったクルマたちも展示される。今年で言えば、誕生50周年を迎えた「ポルシェ911」や、こちらはブランドが創業50周年となるランボルギーニなどが、それに当たる。そして最後に全体の中から1台、選出されるのが栄えある“Best of Show”だ。

審査は、世界の著名な自動車人からなる審査委員会によって行われる。例えばアストン・マーティンのウルリッヒ・ベッツCEO、ポルシェのデザイン部門トップを務めるミハエル・マウアー氏、元BMWのクリス・バングル氏に、伝説のレーシングドライバーであるスターリング・モス、ジャッキー・スチュアート両氏など、顔ぶれはそうそうたるもの。日本からは日産自動車のチーフクリエイティブオフィサーである中村史郎氏、そして『グランツーリスモ』で知られるポリフォニー・デジタルの山内一典氏が、ここに加わっている。

中村氏は、今年が審査員を務めるようになって10年目という節目の年であり、オープニングイベントではスピーチも行っていた。インフィニティは、ここペブルビーチの会場に常にブースを出して、試乗などのイベントを開催。場の盛り上げにひと役買っている。プレミアムブランドを標榜(ひょうぼう)するなら、ここにいるのは絶対条件。その存在感がますます増してきているのも、よく理解できる気がした。

ちなみに中村氏いわく、日産自動車としても今後、クラシックカー文化の発展に寄与していくための構想があるとのことだった。それが何かはまだ分からないが、今やペブルビーチの顔のひとりである中村氏がそう言うのだから、楽しみにしておきたい。

今回のテーマ車のひとつだったシンプレックスは、1904年にニューヨークにて創業した自動車メーカー。写真は「シンプレックス38HP ホルブルック 5パッセンジャー トーペード フェートン」(1913年)。38psを発生するエンジンは排気量7.8リッターだ。
今回のテーマ車のひとつだったシンプレックスは、1904年にニューヨークにて創業した自動車メーカー。写真は「シンプレックス38HP ホルブルック 5パッセンジャー トーペード フェートン」(1913年)。38psを発生するエンジンは排気量7.8リッターだ。 拡大
「PREWAR PRESERVATION」、つまり戦前の未再生車クラスで2位に入った「ヴォワザン・クレリエール ベルリーヌ」(1935年)。フランス・ヴォワザン社でもっとも有名なモデルといえる「C25」は、空力ボディーにに直列6気筒3リッターエンジンを搭載する。雰囲気はサイコー。
「PREWAR PRESERVATION」、つまり戦前の未再生車クラスで2位に入った「ヴォワザン・クレリエール ベルリーヌ」(1935年)。フランス・ヴォワザン社でもっとも有名なモデルといえる「C25」は、空力ボディーにに直列6気筒3リッターエンジンを搭載する。雰囲気はサイコー。 拡大
木曜日、コンクール・デレガンスのオープニングイベントにてスピーチする日産自動車チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏。氏にとって今回は、審査員を務めて10回目という記念すべき年だったのだ。
木曜日、コンクール・デレガンスのオープニングイベントにてスピーチする日産自動車チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏。氏にとって今回は、審査員を務めて10回目という記念すべき年だったのだ。 拡大
「フェラーリ・グランド・ツーリング」クラス2位の「フェラーリ212インテル ヴィニャーレ クーペ」(1952年)は、さすがの素晴らしいコンディション。フィンの付いた“ジェット世代”のスタイリング、黒と緑に塗り分けられたボディーが魅力的だ。
「フェラーリ・グランド・ツーリング」クラス2位の「フェラーリ212インテル ヴィニャーレ クーペ」(1952年)は、さすがの素晴らしいコンディション。フィンの付いた“ジェット世代”のスタイリング、黒と緑に塗り分けられたボディーが魅力的だ。 拡大
テーマ車だけあって数多くの、それもストーリーをもったモデルが並んでいた「ポルシェ911」。「911S GTクーペ」は、見ての通り1968年のマラソン・デ・ラ・ルート、つまりニュルブルクリンク84時間耐久レースの優勝車両そのものなのだ。
テーマ車だけあって数多くの、それもストーリーをもったモデルが並んでいた「ポルシェ911」。「911S GTクーペ」は、見ての通り1968年のマラソン・デ・ラ・ルート、つまりニュルブルクリンク84時間耐久レースの優勝車両そのものなのだ。 拡大

このイベントを観ずして……

さて、この“ペブルビーチ”の週末には、周辺で他にもさまざまなイベントが開催されている。例えばクエイル・ロッジにて開催されている「ア・モータースポーツ・ギャザリング」は、入場人数を絞ることでエクスクルーシブ性を出した、実にセレブ感あふれるイベント。入場料には場内での飲食などもすべて含まれていて、筆者も昼間から、いや朝から、山盛りのシーフードを堪能しつつシャンパン片手にクラシックカーを楽しんでしまった。あまりの人気に今ではチケットにプレミアまで付いているということである。

他にもラグナ・セカのレーシングコースで開催されている「モータースポーツ・リユニオン」は有名なイベントだ。それこそ戦前のものから今に至る世界のさまざまなレースで活躍したレーシングカーが、本気の勢いで走るのだから堪(たま)らない。

また、今回は訪れなかったが、イタリア車だけのイベント「コンコルソ・イタリアーノ」もある。今年はランボルギーニ50周年ということで大いに盛り上がっていたようで、行けるチャンスがなくて残念だ。

他にもRMやグディングのオークションは有名なところ。しかも、それだけではなくこの週末のペブルビーチ周辺は、大小さまざまなクラシックカー関連のイベントが開催されて、まさに地域全体がクラシックカー天国になっている。熱にうかされるように撮り歩いた写真で、少しでもその熱気を感じていただければうれしい。

そして皆さんにもゼヒ、この8月の“ペブルビーチ”をいつか一度体験してほしいと心から思う。間違いなく、ここはクルマ好きにとっての真夏のパラダイス。私もすでに今から、来年の予定を立て始めているところなのだ。

(文と写真=島下泰久)

創業50周年を迎えたランボルギーニも、さまざまなモデルが並んでいた。手前はクラス2位となった「ランボルギーニ・カウンタックLP400」(1976年)。その後ろには素晴らしいコンディションの「エスパーダ」も。
創業50周年を迎えたランボルギーニも、さまざまなモデルが並んでいた。手前はクラス2位となった「ランボルギーニ・カウンタックLP400」(1976年)。その後ろには素晴らしいコンディションの「エスパーダ」も。
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写真では、ごく普通に見えるかもしれない、この「ポルシェ911クーペ」(1965年)の何がすごいかといえば、そのコンディション。レストア車ではない未再生車ながら、どこから見ても、まるでタイムスリップしてきたかのように新車同然なのだ。
写真では、ごく普通に見えるかもしれない、この「ポルシェ911クーペ」(1965年)の何がすごいかといえば、そのコンディション。レストア車ではない未再生車ながら、どこから見ても、まるでタイムスリップしてきたかのように新車同然なのだ。
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戦前のアルファ・ロメオ黄金時代を築いたレーシングスポーツである「8C」シリーズも多数集結。何と28台がずらりと勢ぞろいしていた。一番右は「8C2300ツーリングスパイダー」、左は同「コルサ」である。
戦前のアルファ・ロメオ黄金時代を築いたレーシングスポーツである「8C」シリーズも多数集結。何と28台がずらりと勢ぞろいしていた。一番右は「8C2300ツーリングスパイダー」、左は同「コルサ」である。
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珍しいオリーブグリーンメタリックで塗られた「ポルシェ911Sクーペ」(1969年)は、フェルディナント・ポルシェの長男であり「356」の生みの親、フェリー・ポルシェが新車で発注したもの。今も素晴らしいコンディションが保たれている。
珍しいオリーブグリーンメタリックで塗られた「ポルシェ911Sクーペ」(1969年)は、フェルディナント・ポルシェの長男であり「356」の生みの親、フェリー・ポルシェが新車で発注したもの。今も素晴らしいコンディションが保たれている。 拡大
北米では圧倒的にコンバーチブルの人気が高かった「ポルシェ356」の後継車である「911」も、当然オープンボディーが検討された。しかし北米の安全基準を満たせず、結局「タルガ」が世に出ることになる。これは1964年製の貴重なカブリオレの試作車だ。
北米では圧倒的にコンバーチブルの人気が高かった「ポルシェ356」の後継車である「911」も、当然オープンボディーが検討された。しかし北米の安全基準を満たせず、結局「タルガ」が世に出ることになる。これは1964年製の貴重なカブリオレの試作車だ。 拡大
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