レクサス本気の「ドライビングレッスン」体験記(後編)
もっとチャレンジしたくなる 2013.09.19 LEXUS AMAZING EXPERIENCEデータに基づくアドバイス
直線ブレーキとフルブレーキング&レーンチェンジで体を温めたところで、ショートサーキットに移動。「6 Sense Driving(6センス ドライビング)」というメニューを体験する。
これは文字通り第六感までフル動員してクルマと対話するための練習で、教習車となる「レクサスIS350」にはGセンサーとデータロガーが装着されている。
Gセンサーは0.9Gを超すと「ピー」という音を発生する設定で、ドライバーは運転しながらどれくらいのGがかかっているかを瞬時に理解できる。
また、データロガーの運転データはインストラクターの手に渡り、数値やグラフをもとに、カウンセリングを受けるように一対一で具体的なアドバイスをもらうことができる。
このメニューでは、インストラクターがドライブする先導車が付く。といっても、後続車の速度を抑える意図ではなく、走行ラインやブレーキングポイントを示しながら引っ張ることを目的としている。少しでも操作をミスしたりアクセルオンのタイミングをちゅうちょすると、先導車との間隔が開くのがその証拠だ。
富士のショートサーキットは短いながらもアップ&ダウンがあり、出口に向けてタイトになるイヤらしいコーナーがあるなど、なかなか手ごわいレイアウト。でも、先導車の動きを見ながら、意外と最終コーナーのクリッピングポイントを奥に設定していることや、1コーナー手前で思ったより早めにブレーキングランプが点灯していることを学習すると、次第にスムーズに走れるようになってくる。
4周1セットを2セット終えたところで、データロガーのデータを確認する。まずはコース図を見ながら、GT500クラスの現役ドライバー石浦選手の走行ラインと比較。リポーターには、低速コーナーで早めにインについてしまう傾向があることがはっきりとわかる。インストラクターから「もっと大きなRの弧を描くように」とのアドバイスを受ける。
それから、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール操舵(そうだ)のタイミングと量を石浦選手のグラフと比べる。ここで明らかになったのは、コーナーでクルマが向きを変える前にアクセルをオンにしてしまっていることだ。石浦選手より早いタイミングでアクセルペダルを踏んでいるけれど、向きが変わっていないから思いきり踏めていなくて、さらにはアクセルを戻してしまっている。結果、次のストレートでのスピードが伸びない。
「しっかり向きを変えて体勢が整ったところでフルスロットル」というアドバイスをいただく。前々からうすうす感じていた自分の運転の欠点も、こうして可視化するとすんなり納得できる。この時のグラフ一式は、後日郵送されるとのことだ。
ここで午前の部は終了。ランチ休憩へと入った、のだけれど……。
クルマ好き同士の交流もいい
今回の「LEXUS AMAZING EXPERIENCE」のプログラムの中で、ひとつ残念だったのは食事が充実していなかったことだ。
ランチのメニューは、あしたか牛チーズ入りカツレツサンド、ローストチキン、スズキときのこのアーモンドクリームソース、じゃがいもと長ネギのクリームスープ、それにデザートのメロン。全カリキュラム終了後のアフターパーティーで供された料理も含めて、想像を超えた驚きはなかったように思う。
ドライビングレッスンが充実していればそれでいいという考え方もあるかもしれない。でも、「AMAZING」を提供するイベントなのだから、細部までびっくりさせてほしかった。初回だから、「どこまでやればいいのか」が手探りだったことは間違いない。このあたりのホスピタリティーは、次回以降に期待したい。
とはいえ、関西から「BMW M5」を自走して駆けつけた方、北海道から飛行機で乗り込んだ方たちとのクルマ談義は楽しく、この種のイベントが社交場に発展する可能性を感じることができた。
昼休みの後は、午前中のレッスン結果を踏まえて「スラロームタイムアタック」と「ブレーキング&エクストリームコントロール」のふたつの組に分かれた。リポーターは前者、つまり比較的シンプルなレイアウト(フル加速→Jターン→スラローム→フルブレーキング)でのスラロームに挑んだ。
インストラクターの“模範演技”の後、受講者全員で時間が許す限りタイムアタックに挑む。走行中、インストラクターからは無線で「Jターンはきれいだけど、スラロームの2つ目でふくらんだ!」などの指示を受ける。そしてそのひと言ひと言が、体に染みる。
ただ「ドカン!」と踏むだけでなく、向きを変えるための薄くて長いブレーキング、向きを変えてからのアクセルオン、スラロームでの素早いけれどスムーズな操舵など、コースはシンプルだけど操縦は奥深い。納得できるまでやり込んだら、このコースだけで半日や一日はアッという間に過ぎてしまうだろう。
仕上げの走りは最高のマシンで
再びショートサーキットへ戻り、今度は先導車なしで思いきり走るメニュー「6 Sense Driving+」。やはりデータロガーで吸い上げたデータをもとに、インストラクターからアドバイスをいただく。
うれしいことに、ブレーキングのタイミングと強さ、アクセルペダルを全開にするタイミング、操舵の量などが、午前中より明らかに石浦選手に近づいている。
映画『ベスト・キッド』では、何度も繰り返したペンキ塗りの動作が実戦に役立つシーンがあった。個々のレッスンの積み重ねが、「しっかりとしたブレーキング」→「丁寧な操舵で確実に向きを変える」→「早いタイミングでフルスロットル」という一連の操作につながっているあたり、『ベスト・キッド』のミヤギ老人を思い出した。
そして最後は本コースへ移動。まずは慣熟走行で、先導車の後を付いて走る。コースに慣れたところで、「LFA」と「IS F CCS-R」の助手席にインストラクターを乗せての全開走行。ここでは先導車が付くけれど、先導車という言葉から想像するよりはるかに速く、時には後続車を引き離すほどのスピードだ。真剣に走る。
9000rpm+まで回した時のLFAのエキゾーストノートは「天使の咆哮(ほうこう)」という表現にふさわしく、腰から背中にかけてぞくぞくするような快音だった。長いホームストレートの1コーナー手前ではメーター読みで260km/hを確認。このスピード感にもゾクッとくる。
IS F CCS-Rからは、ちょっとバラつくけれどパワフルなエンジンやダイレクトなステアリングフィール、ブレーキの応答性など、レーシングマシンの迫力を生で感じることができた。
参加者の話を聞くと、多くの方がこの2台を富士スピードウェイの本コースで全開にできることを応募の理由に挙げていた。この全開走行には、みなさんも「お金じゃ買えない経験」「遠くから来たかいがあった」と、大満足の様子だった。
そして掉尾(ちょうび)を飾るのが、インストラクターを務めたレーシングドライバーが全開で走らせるLFAへの同乗走行。ここまでのスピードで走らせることはできないにしても、もっとうまくなる余地がある、うまくなりたい、と思わせて、大団円となる。
朝8時30分から夜7時すぎまで、フルにメニューをこなしておなかいっぱい、くたくたである。クラスメートたちも、レッスンの質、量ともに満足したようだった。冒頭で記したように、10万5000円が高いという声は聞かれなかった。
終了後の懇親会では、「こうなったら次は本コースを同乗インストラクターなしに攻略したい」という声を複数の方から聞いた。スポーツドライビングに目覚めた方々を、どこに導くのか。次はレースなのかサーキットでのタイムアタックなのか、さらに高度なドライビングレッスンなのか。
第1回の完成度の高さに感心しながら、この取り組みは第2回、第3回と継続することが重要になると感じながら帰路についた。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。