第14戦韓国GP「4連勝でタイトルに王手」【F1 2013 続報】
2013.10.07 自動車ニュース ![]() |
【F1 2013 続報】第14戦韓国GP「4連勝でタイトルに王手」
2013年10月6日、韓国の韓国インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第14戦韓国GP。8月末のベルギーGPから誰にも勝利を譲っていないレッドブルのセバスチャン・ベッテルが、今季6回目のポールポジションから4連勝を飾り、次戦にもタイトル獲得の可能性が出てきた。
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■2014年は最長シーズンになるか?
9月27日、クロアチアで開かれていた世界モータースポーツ評議会において、2014年シーズンのF1カレンダーが発表された。これまでの年間最多20戦という“壁”があっさり取り払われ、全22戦が予定される過去最多のチャンピオンシップとなる。
3月16日にオーストラリアで開幕し、11月30日にブラジルでフィナーレを迎えるのは例年通り。昨年開催を延期した、アメリカはニュージャージーでのアメリカGPが新たに加わり、モナコ、アメリカ、カナダと、5月末から過酷な3連戦が組まれる(2012年から始まったテキサスでのレースはUSA GPとして継続)。
また近年F1でのスポンサー活動や出身ドライバーが増えているメキシコでは22年ぶりにGPが復活。来年冬季オリンピックが開かれるソチでは初めてF1ロシアGPが行われ、レッドブルの活躍のおかげでオーストリアGPもカムバックを果たす。
インドGPは外れ、2015年復帰を目指しているという。鈴鹿サーキットでの日本GPは、いつも通りシーズン後半の10月12日に開催される。
ただし、この来季のカレンダーはまだ暫定であり、10月から4月に日程を移す韓国GP、そしてアメリカGPとメキシコGPは調整中というステータス。特にアメリカと韓国は開催が難しいのではないかとうわさされており、どこかが抜け落ちる可能性も、ある程度織り込み済みである。
とはいえ、年間20レースを超える場合、ドライバーやチームにとってかなりの負担増となるのは事実で、レッドブルのボス、クリスチャン・ホーナーは「22レースは限度を超える」と懸念を示している。一方でレースが増えることは興行としては極めて“おいしい”ことでもあり、F1マネーを牛耳るバーニー・エクレストンはカレンダー拡大にご執心である。
NAエンジンからターボへとレギュレーションが大きく変わる2014年は、各陣営にとってただでさえ厳しい1年となることが予想されるゆえに、最終的にレース数が20を超えるか否かには多くが注目している。
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■ベッテル、3戦連続ポールポジション
来シーズンの話題の前に、まだ6戦を残している今季の戦況に目を向けるべきかもしれないが、こちらはセバスチャン・ベッテルとレッドブルのワンサイドゲームにいささか興が削(そ)がれてしまっているのも事実。
前戦シンガポールGPで見せつけられた、1周で2秒も速く走れるベッテルのワンマンショーは、ライバルにかなりの精神的打撃を与えたはずだった。さらに8月末のベルギーGPからの3連勝で今季通算7勝を記録、60点ものポイントリードを築いているといえば、このドイツ人ドライバーの4年連続となるタイトル獲得はもはや時間の問題といっても過言ではない。
しかも、2010年から開かれている韓国GPは、ベッテル得意のコースである。初年度こそ、優勝目前でエンジンが壊れフェルナンド・アロンソに勝利を譲ったが、2011年、2012年と連続で勝利を収めている。レッドブルのエースにさらなる弾みをつける展開となってもおかしくはない。
実際、初日の金曜日こそメルセデスのルイス・ハミルトンにトップタイムを奪われたが、土曜日のフリー走行ではベッテル、マーク・ウェバーでレッドブル1-2。そして予選でもベッテルの優位は揺るがず、3戦連続ポールポジションをやすやすと決めてしまった。トップ10グリッドを決めるQ3セッション、最初のアタックでベッテルが記録した最速タイムは結局誰も超えることができず、ベッテルは2回目のアタックをせずに済むほどだった。
2番手には0.218秒差でハミルトンが入り、レースでは一矢報いたいところ。ハミルトンはドライバーズチャンピオンシップ3位だが、ベッテルとは96点という絶望的な差をつけられている(残り6戦で得られる最大ポイントは150点“しか”ない)。
予選3位はウェバーだったが、シンガポールでスチュワードから今年3回目のおとがめを受けて、韓国では10グリッド降格の憂き目に。代わってロータスのロメ・グロジャンが3番グリッドを獲得した。ニコ・ロズベルグのメルセデスの後ろにフェラーリの2人、アロンソ5番グリッド、フェリッペ・マッサ6番グリッド。直線での速さを生かしてザウバーが健闘し、ニコ・ヒュルケンベルグとエステバン・グティエレスが7、8番グリッドに続いた。
ロータスのキミ・ライコネンはドライビングミスで10番手タイム、グリッドは9番手。そしてQ2落ちしたマクラーレンのセルジオ・ペレスが10番グリッドに繰り上がった。
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■スタートでグロジャンが2位にアップ
今季6回目のポールポジションからスタートするベッテルにとって、不安要素といえば、マシンの信頼性か「韓国でポールは勝てない」という過去のジンクスくらいのもの。レース自体はセーフティーカーが2度も出動する荒れ模様となり、またシンガポールでの勝利ほど圧倒的ではなかったが、ベッテルはタイヤをいたわりながらレースをコントロールし、しっかりと勝利を手にした。
オープニングラップをトップのまま終えたベッテルに次いだのは、2番グリッドのハミルトンではなく、その後ろのグロジャン。レース序盤はこの2人が先導し、背後からハミルトンとロズベルグのメルセデス勢が追いかける展開となった。
スーパーソフトとミディアム、2種類のタイヤのうちほとんどが前者を履いてスタート。特にやわらかい方のライフは短く、55周レースの10周もたたないうちに最初のピットストップが始まっていた。
また履き替えたミディアムタイヤでも、各車グレイニング(タイヤの“ささくれ”による一時的なパフォーマンス低下)に悩まされた。1位ベッテルも例外ではなく、2位グロジャンとのギャップが4秒台に入ると、その差をキープしながらタイヤ、特にこの反時計回りコースでは酷使される右フロントタイヤを気遣いながら走行を続けた。
一方でタイヤに足を引っ張られたのは3位ハミルトンだった。「タイヤが終わっている」と無線でチームに状況を訴えている間に、チームメイトのロズベルグが背後に迫り、ストレートで並ばれた。しかしハミルトンを抜きにかかろうとした直後、ロズベルグのフロントウイングから火花が飛び散り始めた。ウイングがあるべきポジションから外れるというトラブルも加わり、メルセデスは2台とも表彰台の機会を逸した。
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■次戦でチャンピオン決定の可能性
最初のセーフティーカー出動は31周目のこと。ターン1で派手にブレーキをロックさせたペレスの右フロントタイヤがトレッド剥離(はくり)を起こし、タイヤやマシンのデブリー(破片)がコースに散乱したためだった。このタイミングで、まだ2回目のタイヤ交換を済ませていなかった首位ベッテル、2位グロジャンらがピットに飛び込んだ。
37周目にレース再開。ベッテル1位、グロジャン2位のまま、そしてこの時点で3位にはライコネンが上がっていた。ライコネンのロータスは2度目のピットストップをライバルに先んじて26周目に済ませ、10位でコースに復帰。その後他車がタイヤを替えている間に上位へと駒を進めていたのだ。そしてリスタート後、間髪入れずにグロジャンをオーバーテイクし2位に浮上。2007年チャンピオンは、チームメイトの一瞬のミスを見逃すことはなかった。
その直後に早くも2度目のセーフティーカーの出番が回ってきた。エイドリアン・スーティルがスピンしウェバーにヒットしたことで、レッドブルがコースを外れてストップ。炎上し始めたのだった。
41周目に徐行が解かれると、ベッテルは最後の踏ん張りをきかせ、立て続けにファステストラップを更新。2位ライコネンとの差は1.4秒、2.0秒、2.4秒、2.8秒と数周のうちに開き、4.2秒のアドバンテージを得たところでチェッカードフラッグが振られたのだった。
夏休み後の4戦すべてで勝利し100点を上積みしたベッテルは、今回まったくいいところなく6位でレースを終えたランキング2位のアロンソをさらに突き放した。両者のポイントギャップは77点。次戦もベッテルが勝利し、アロンソが9位以下となれば、ベッテルの4連覇が決まることになる。そしてレッドブルの連覇も、あと7点あれば達成できる計算となった。
次なる戦いの舞台は、世界屈指のドライバーズサーキットであり、昨年ベッテルがポール・トゥ・ウィンを飾った鈴鹿サーキット。日本GP決勝は、10月13日に行われる。
(文=bg)