メルセデスが新型「Sクラス クーペ」を披露【ジュネーブショー2014】

2014.03.05 自動車ニュース 石井 昌道
「メルセデス・ベンツSクラス クーペ」
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【ジュネーブショー2014】メルセデス・ベンツが新型「Sクラス クーペ」を披露

独ダイムラーは、ジュネーブショー開幕を翌日に控えた2014年3月3日、メディア向けに行ったイベントで、メルセデス・ベンツの新型「Sクラス クーペ」を披露した。

 
メルセデスが新型「Sクラス クーペ」を披露【ジュネーブショー2014】の画像 拡大
 
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アップルと共同で開発した「カープレイ」のディスプレイ表示。
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「メルセデス・ベンツSクラス クーペ」
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■”つながる”がキーワード

メルセデス・ベンツがモーターショー開幕前夜にメディア向けのイベントを行うのはすっかり恒例となっているが、今回は少しだけ様子が違った。

普段はレオナ・ルイスやケリー・ローランドなど有名ミュージシャンのミニライブがオープニングを飾り、しかる後に目玉の新型車がドーンと登場してくるのが常だが、今回は鳴り物はなく、まずディーター・ツェッチェCEOが長めにスピーチ。若者を中心に人々の日常生活が変化してきており、モビリティーもそれに追従していく必要性を感じていることを語った。
その変化とはずばりインターネットとの付き合いのこと。誰しもが一日中ネットワークにつながっていることが当たり前になってきていて、モビリティーもスタンドアローンのままでは時代遅れになってしまいそうなのだ。

メルセデス・ベンツも“つながる”ことを大切にしてハードウエアだけではなくソフトウエアにも注力。インターネットを活用して「CONVENIENCE」というキーワードが成り立つソリューションを開発し、これを「Mercedes Me」と名付けた。「move me」「connect me」「assist me」「finance me」「inspire me」の5本柱からなり、あらゆるサービスを、クルマの内外でシームレスに統合するパッケージだという。

例えばユーザーは自分のクルマと常につながっていて、家にいるときも自車の燃費情報を確認したり、乗る前にエアコンをかけておいたり、あるいは所在がわからなくなったら居場所を探すなんてこともできる。
また、メーカー側がユーザーに歩み寄ることも可能。意見や要望を素早くくみとり、開発にとりいれていくこともできるわけで、そのニーズに素早く対応していく。

もう一つのトピックスはアップルと共同で開発した「カープレイ」(まだプロトタイプで商品になったときの名称は未定)。
自分のiPhoneをクルマにつなぐと、ディスプレイにはクルマ用に最適化した画面が現れる。人気のあるアプリやクルマ向きのアプリがリデザインされており、操作はメルセデス・ベンツのコマンドでコントロール。

それとともに音声操作のSiriを多用できるので便利だ。電話をかけるのも、ラジオを聴くのも、Mapsをカーナビとして使う際の操作もほとんどがSiriからでOK。目的地入力を音声以外でしたい場合は、画面上にキーボードが現れ、コマンドコントローラーで文字入力することになる。

Mapsは、クルマにGPSが内蔵されていて車輪センサーの情報もとれるモデルであれば、それをiPhoneに取り込み、場所の特定に活用。つまり従来の自動車用カーナビと同じようにジャイロセンサーがはたらくので、iPhone単体で使っているときよりも精度が高まるのだ。また、ディスプレイ上では文字の大きさを調整したり、細い道を省いて表示したりするなど、カーナビとしての最適化もなされている。

カープレイは2014年12月頃には新型「メルセデス・ベンツCクラス」への設定が始まる見込み。また、iPhone だけではなく、グーグルと共同で、アンドロイド用に同様のシステムも開発中だという。

「メルセデス・ベンツSクラス クーペ」(写真=ダイムラー)
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「メルセデス・ベンツSクラス クーペ」(写真=ダイムラー)
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「メルセデス・ベンツVクラス」(写真=ダイムラー)
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「メルセデス・ベンツVクラス」のインテリアスケッチ。(写真=ダイムラー)
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■「CLクラス」の後継モデル「Sクラス クーペ」

本番のショーでワールドプレミアとなったのは「Sクラス クーペ」。優雅なフラッグシップクーペはここ2世代は「CLクラス」とされていたが、以前の名称に戻されることになった。ここ10年ほどでメルセデス・ベンツのラインナップは急増しており、ポートフォリオを整理する意味合いもあるようだ。
たしかに、「CLAクラス」などと混同しそうだし、Sクラスの一員であるとはっきりさせてくれたほうが、わかりやすいだろう。
トピックスは左右それぞれにスワロフスキークリスタルを47個あしらったヘッドライトの設定。そして能動的カーブチルティング機能の量産車世界初採用だ。カーブに進入するとき、バイクやスキーのように内側に車体を傾ける(最大2.5度)というこのシステム、まずはどんなものなのかと早く試してみたい。

「Vクラス」はコンセプトこそ従来と変わりなく、MPVとして使い勝手にすぐれるモデルだが、メルセデス・ベンツらしい質感の高さ、快適性や走りの楽しさを追求したという。
たしかにインテリアにはかなり高級感が漂う。開発陣が、これに勝る高級感を得たいならSクラスを買うしかないでしょうと自信をのぞかせていたのにも納得。従来モデルは、以前ほどではないにしてもどこか商用車風味が残っていたが、新型はメルセデス・ベンツのコアモデルであるサルーンラインに匹敵する高級乗用車になったというわけだ。

そのほか、今年のメルセデス・ベンツの話題の中心になるだろう新型Cクラスの欧州初公開などで、ブースはにぎわっていたが、新しさを感じたのはMercedes Meやカープレイなどのソフト系。今どきはインフォテインメントに力を入れるのは当たり前だが、メルセデス・ベンツほど早くから研究開発に取り込み、実際に商品に組み込んできた、つまり本気度の高いメーカーもなかなかない。

これからのプレミアムカーは、プレミアムなサービスがセットされていなくてはならない。ソフトウエアの激しい戦いのベルが、いままさに鳴らされたのだ。

(文=石井昌道/写真=石井昌道、ダイムラー)

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