第10戦ドイツGP「ロズベルグ、母国で4勝目」【F1 2014 続報】
2014.07.21 自動車ニュース ![]() |
【F1 2014 続報】第10戦ドイツGP「ロズベルグ、母国で4勝目」
2014年7月20日、ドイツのホッケンハイムリンクで行われたF1世界選手権第10戦ドイツGP。前戦、ポイントリーダーのニコ・ロズベルグに4点差まで詰め寄ったルイス・ハミルトンだったが、ドイツでは予選中にブレーキトラブルに見舞われ、またも“ダメージ最小化”を考えざるを得ないレースに。その間、ロズベルグは母国でクルージングを楽しんだのであった。
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■降ってわいた「FRIC騒動」
F1を統括するFIA(国際自動車連盟)は、前戦イギリスGP終了後にある通達を各チームに出した。サスペンション機構の「FRIC」が現行レギュレーションに抵触する可能性があるという内容だった。
「FRIC=Front to Rear Interconnected」サスペンションは、字義の通り前後サスを連動させ、ブレーキング時の、マシンのライドハイトの最適化を図るもの。ピッチング(前後間で異なる上下動)やヒーブ(前後の浮き沈み)といった車体の姿勢を空力的に一番いい状態に保つ仕組みであり、いまでは多くのチームが採用しているという。中でも最も洗練されたFRICを搭載しているのは、今年チャンピオンまっしぐらのメルセデス、という意見が大勢だ。
FIAがこの通達を出したのは、常勝メルセデスを引きずり下ろす、ためではなく、来シーズンを見据えたコスト抑制策の一環と考えてのことらしい。各陣営にも聞き取りを行った結果、テクニカルレギュレーションの「可動式空力パーツの禁止」に違反しているという疑いも持ち上がった。FRICはサスペンション機構ではあるものの、その最大の目的は空力性能向上にあるからだ。
ただコスト抑制を一義に置いた以上、対応費を考慮すれば、シーズン途中に突如FRIC禁止を打ち出すのは筋が通らない。そこでFIAは、全チームの合意があればこの機構の禁止を2015年シーズンまで保留するという案を出してきた。
さまざまな思惑が渦巻くF1界にあって、全会一致というのはなかなか難しい。当初この案は実らず、一時はFRIC搭載チームと非搭載チームの間で抗議の応酬が起こるのではないかと心配されたが、GPウイーク目前に全チームが非搭載でドイツGPを迎えることがはっきりし、事態は決着をみた。
事実上のFRIC禁止となれば、今度はこのシステムがなくなった状態で勢力図がどう変わるか、特に自慢の武器を奪われたかっこうの、メルセデスの独走状態が揺らぐのかに注目が集まった。
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■ロズベルグが5回目のポールポジション
2つのサーキットが隔年でGPを開催するドイツ。今年はアクセル全開率60%以上という高速コースのホッケンハイムが舞台となる。ニコ・ロズベルグ&メルセデスのチャンピオンシップリード(さらにはサッカーのワールドカップ優勝)と、何かと盛り上がる話題に恵まれていたものの、観客の入りはいまひとつだった。
3回のフリー走行では、FRICなしでもメルセデスがトップ2に君臨。だが土曜日の予選、全車参加のQ1アタック中に、不運がルイス・ハミルトンを襲った。スタジアムセクションでいきなり挙動を乱しクラッシュ。Q2に進出できるタイムを計時していたものの、その後の走行は不可能となり15番グリッド、ギアボックス交換でさらに5グリッド下がり、結果20番グリッドからスタートすることとなってしまったのだ。原因は、メルセデスの右フロントブレーキのディスク不良とされた。
トップ10台によるQ3では、ロズベルグが母国で今季5回目のポールポジションを獲得。前戦イギリスGPの今季初リタイアで、29点あったポイントリードが一気に4点差にまで縮まったロズベルグだったが、“ダメージ最小化”を考えざるを得ないランキング2位のハミルトンに対して大きなアドバンテージを得た。
マクラーレンの新人ケビン・マグヌッセンが健闘し4番グリッド。その後ろにはレッドブルの2台が並んだが、今回もダニエル・リカルドがセバスチャン・ベッテルを上回り5番手タイムを記録した。フェラーリのフェルナンド・アロンソ7位、そしてトロロッソのルーキーであるダニール・クビアトが8番手につけ、5列目にはニコ・ヒュルケンベルグ9位、セルジオ・ペレス10位とフォースインディア勢が収まった。
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■ハミルトンの目覚ましい追い上げ
土曜日までは夏の日が降り注ぎ、気温30度、路面温度は50度を超える暑いホッケンハイムだったが、明くる決勝日は涼しくなり、朝は雨、レースは曇り空のもと行われた。
スタートでは3番手のマッサと4番手のマグヌッセンが接触、マッサのウィリアムズがひっくり返りながらコースを外れストップし早々にセーフティーカーが導入された。
67周レースの3周目にリスタート。1位ロズベルグ、2位ボッタス、3位に上がったベッテル、4位にアロンソ、5位ヒュルケンベルグ、6位バトン。マッサとマグヌッセンの接触を避けたリカルドは一気に14位に落ち、一方ハミルトンは17位まで順位を上げていた。
順調なペースで飛ばすロズベルグは、15周を終えて最初のピットストップ。タイヤをスーパーソフトからソフトに交換した。その後数周にわたって暫定2位だったのは、追い上げ目覚ましいハミルトンだった。おおかたと違いソフトタイヤを履いてスタートした2008年チャンピオンは、26周まで長めの第1スティントを走り、リカルドの後ろ、8位でコースに復帰、さらなるポジションアップを狙った。
だが焦りからか、あるいは生来の気性からか、この日のハミルトンの抜き方は少々強引なものが多く、キミ・ライコネンのフェラーリやジェンソン・バトンのマクラーレンとは接触するシーンも見られた。バトンと当たった際、メルセデスのフロントウイングの一部が破損。そのまま走行を続けたが、当然空力的にはデメリットとなったはず。これが終盤ボッタスを抜けなかった要因のひとつになったのではないかとも言われている。
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■20位からの3位表彰台
作戦を異にするハミルトンは、43周目のタイヤ交換でスーパーソフトへ。今度は5位でコースに戻る。前には1位ロズベルグ、2位ボッタス、3位アロンソ、4位ベッテル。速いタイヤで飛ばすハミルトンはファステストラップを連発して表彰台を目指し、51周目に最後のタイヤ交換を済ませると3位はほぼ確実となった。
そして残り10周、2位ボッタスとのギャップは4.1秒、2.4秒、1.0秒、そして61周目には0.4秒差と、1周ごとに見る見る縮まった。タイヤ的には不利なボッタスだったが、ウィリアムズの抜群のストレートスピードでメルセデスを抑え、真後ろのハミルトンはDRSを使っても抜けなかった。
後ろで各車が抜きつ抜かれつを繰り広げている間も、ほとんど誰も注目しなかったトップのロズベルグはクルーズを続け、最終的に後続を20秒後方に追いやり、今シーズン4回目の優勝を飾った。
ボッタスは3連続の表彰台、2戦連続で2位。ウィリアムズの復活が2014年前半戦のトピックならば、この名門チームをけん引するのはベテランのマッサではなく、間もなく25歳になるこのフィンランド人ドライバーである。
20位から3位表彰台こそものにできたが、2位を“取り損ねた”ハミルトンのドイツGPは、パーフェクトとまではいかなかったかもしれない。ロズベルグとのポイント差は4点から14点に拡大した。
2連戦の後半はハンガリーGP。7月27日の決勝を終えると、F1は約1カ月の夏休み期間に入る。
(文=bg)