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第260回:氷上の「アシンメトリコ」の実力は?
ピレリの新作「ICE ASIMMETRICO」を試す

2014.09.29 エディターから一言 竹下 元太郎
ピレリ・アイス アシンメトリコを履くテスト車の「BMW 3シリーズ」。
ピレリ・アイス アシンメトリコを履くテスト車の「BMW 3シリーズ」。 拡大

ピレリは2014年7月14日、スタッドレスタイヤの新製品「ICE ASIMMETRICO(アイス アシンメトリコ)」を発表した。その実力を試すために、冬のまっただ中にある南半球のニュージーランドを訪れた。

対象車種はコンパクトカーからプレミアムサルーン、そしてSUVまでと幅広い。
対象車種はコンパクトカーからプレミアムサルーン、そしてSUVまでと幅広い。 拡大
アイス アシンメトリコの開発コンセプトは「パワーとコントロール」。
アイス アシンメトリコの開発コンセプトは「パワーとコントロール」。
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テスト車の「アウディQ5 2.0 TDIクワトロ」。
テスト車の「アウディQ5 2.0 TDIクワトロ」。 拡大

日本の冬を研究した新製品

ピレリの新しいスタッドレスタイヤ、アイス アシンメトリコのキーワードは、ずばり同社のDNAである「パワーとコントロール」だ。特に氷雪路における正確なハンドリングと力強いトラクション、確実なブレーキングの獲得を目標にしており、日本や中国をはじめとするアジアパシフィック市場に向けて開発された。

ピレリはスタッドレスタイヤを開発するにあたり、「販売する現地の使用実態を踏まえた製品作り」を掲げている。日本や中国を「およそ気温は-5度から5度ぐらい、ところによっては雪深く、滑りやすい氷の路面ものぞき、ヨーロッパと比べて道の流れが遅い」マーケットと分類しており、まずは「アイス路面でのトラクションとハンドリング」の確保が重要と考えている。これに「スノー路面におけるトラクションとハンドリング」が続く。

アイス アシンメトリコの開発自体はピレリの本拠地であるイタリアで行われたが、開発テストは日本でも行われたそうだ。また、正式発売前の2013年には、同製品(205/55R16サイズ)を日本で限定的に販売し、事前のマーケットテストを行っており、購入者の評価は上々だったとのことだ。

アジアパシフィック向けの製品とうたわれるが、こういった事実からも、アイス アシンメトリコが日本を重視した製品であることがうかがわれる。なお、生産は中国・山東省にあるYanzhou(エン州)工場で行われている。

氷上のハンドリングとブレーキ性能を重視

アシンメトリコとはイタリア語で「非対称」の意。英語のアシンメトリック(asymmetric)に相当する。ピレリの製品だと非対称パターンはPゼロ・シリーズなどでおなじみだが、アイス アシンメトリコではドライとウエットの両路面で接地を最適化する溝の配分を行っている。

採用された新技術を具体的に見ていくと、まず「3Dバタフライサイプ」と呼ばれる立体サイプがある。他社製品を含め、最近は複雑な立体サイプを用いる製品が少なからず見られるが、ピレリは独自の波型の立体カット(その形をチョウに例えている)を施すことで、エッジ部の接地圧を高めると同時に接地面積も拡大させ、コーナリング性能を高めている。通常のサイプと比較して、コーナリング時に接地面積は8%増えているという。

また、ブロックには「ソフトコアブロック」を用い、路面に対してトレッド面が均一な接地を維持する工夫をしている。さらに、レジン(樹脂)とシリカを化合させた「デュラ・フレキシィコンパウンド」を使用して凍結路面でも柔軟性を維持し、極限条件下での性能の持続性を確保している。

そのほか、タイヤの使用初期からグリップ力を発揮させるために浅溝サイプ「インスタントグリップ」を施したり、トレッド面に“エッジポケット”を設けることで雪をつかんでグリップさせる「スノートラップ」と呼ばれる技術を用いたりしている。

Pゼロ・シリーズなどでおなじみの左右非対称パターンを採用する(右がアウト側)。
Pゼロ・シリーズなどでおなじみの左右非対称パターンを採用する(右がアウト側)。 拡大
13インチから18インチまで計35サイズがラインナップされ、その中にはランフラットタイプも4サイズ含まれている。
13インチから18インチまで計35サイズがラインナップされ、その中にはランフラットタイプも4サイズ含まれている。 拡大
テスト車の「ボルボXC60」。
テスト車の「ボルボXC60」。 拡大

愛車を確実に手なづけたいドライバーへ

試走はニュージーランド南島の「サザン・ヘミスフィア・プルービング・グラウンド(SHPG)」で行われた。クイーンズタウンから車で北へ1時間ほどの位置にあるSHPGは、南島の「背骨」にあたるサザンアルプス山脈の東側の、標高約1500mの山間部にある。

余談だが、SHPGは「スノーファーム」の愛称を持つが、なぜファームかというと、夏はこの一帯に羊が放牧されるためだ(シープファーム)。雪に覆われる冬季、羊たちは標高が低く、暖かい冬営地へと移牧させられている。ニュージーランドらしいエピソードである。

さて、注目の氷上でのコントロール性については、屋内施設で氷上ブレーキングを試すアクティビティーが用意されていた。路面は水膜のない完全な氷。30km/h弱を維持して走行し、70m先に設定された停止位置にいかに近づけて止められるかという内容だったが、テスト車の「トヨタ・オーリス」にせよ「アクア」にせよ、路面が氷であることを勘案して早めにブレーキングを開始すると、想定したポイントよりずっと手前で止まってしまう。トレッド面がアイス路面にしっかり接地し、捉えているさまが想像でき、氷上の安心感は予想以上だった。

雪上におけるハンドリング性能についても、ステアリングの切り始めから路面の情報が伝わってくるだけでなく、切り増していったときの路面追従性、あるいは絶対的なグリップもまったく不満はなく、テストコースのコンディション下(テスト車の車載温度計によれば、日中の外気温は-6度から-7.5度ぐらい。人工降雪機を併用しており、足で踏むと雪がキュキュッと泣くような良好な雪質が大半を占めた)では極めてリラックスして運転することができた。また、ハンドリングといえば、FR車のスタビリティーコントロールをオフにして、意図的にテールをブレイクさせたときの挙動が素直で印象に残った。

ピレリが主張するとおり、アイス アシンメトリコには「パワーとコントロール」にこだわって開発された、確かな手応えが感じられた。アイスでもスノーでも愛車を確実に手なずけていきたいと考えているドライバーには格好の選択肢であろう。

(文=webCG 竹下元太郎/写真=ピレリ)

屋内施設「アイストンネル」に用意されたブレーキテスト用アイスバーン。
屋内施設「アイストンネル」に用意されたブレーキテスト用アイスバーン。 拡大
氷上ブレーキテストに臨む「トヨタ・アクア」(現地名:「プリウスc」)。トレッド面がアイス路面をしっかり捉えている様子が体感できた。
氷上ブレーキテストに臨む「トヨタ・アクア」(現地名:「プリウスc」)。トレッド面がアイス路面をしっかり捉えている様子が体感できた。 拡大
ハンドングコースを行く「BMW 3シリーズ」。
ハンドングコースを行く「BMW 3シリーズ」。
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スタビリティーコントロールをオフにしてハンドリングコースに臨む「メルセデス・ベンツC200」。素直な挙動が印象的。
スタビリティーコントロールをオフにしてハンドリングコースに臨む「メルセデス・ベンツC200」。素直な挙動が印象的。
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アイスファームは標高約1500mの高地にある。14のテストコースがまるでスキー場のごとく点在し(かつてはクロスカントリーのスキー場だったとか)、北半球とは正反対となる6月から8月まで開業している。
アイスファームは標高約1500mの高地にある。14のテストコースがまるでスキー場のごとく点在し(かつてはクロスカントリーのスキー場だったとか)、北半球とは正反対となる6月から8月まで開業している。
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