第18戦ブラジルGP「ロズベルグ完全制覇」【F1 2014 続報】
2014.11.10 自動車ニュース ![]() |
【F1 2014 続報】第18戦ブラジルGP「ロズベルグ完全制覇」
2014年11月9日、ブラジルのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで行われたF1世界選手権第18戦ブラジルGP。前戦アメリカGPでポイントリーダーのルイス・ハミルトンに5連勝を許したランキング2位のニコ・ロズベルグが、起死回生となる優勝を飾り、最終戦での逆転に望みをつなげた。
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■タイトル争いはラスト2レースへ
43、25、43、43、43。これは第13戦イタリアGPからシンガポールGP、日本GP、ロシアGP、そして前戦アメリカGPまでの5戦で、メルセデスが獲得したポイントである。43点は1位(25点)+2位(18点)、すなわち1レースでチームが手に入れられる最高得点だ。
この5戦すべてで優勝しているのが、17戦を終え24点差でチャンピオンシップをリードしているルイス・ハミルトン。チームメイトのニコ・ロズベルグは、メカニカルトラブルでリタイアという不運に見舞われた第14戦シンガポールGPでランキング首位の座を奪われて以来、宿敵ハミルトンにやられっぱなしの2位に甘んじている。
一発の速さだけなら、実はロズベルグの方に分がある。この5戦だけを見れば、ロズベルグがポールポジションからスタートしたのは日本GPとアメリカGPの2回。今季のチームメイト同士の予選戦績を見ると、意外にも10勝7敗でロズベルグの方がハミルトンを上回っており、ポールポジションの数はハミルトンが7回なのに対し、ロズベルグは9回も取っているのだ。
それがレースとなると形勢逆転、勝利数はハミルトン10勝、ロズベルグは4勝にとどまる。日本GP、アメリカGPはレース途中でハミルトンにリードを奪われ、またイタリアGP、ロシアGPとアメリカGPでは自ら手痛いミスをおかした。
ロズベルグがポール・トゥ・ウィンを達成したのはたったの2回。初タイトルを渇望するドイツ人ドライバーの課題はここにある。
最速マシンを操る2人の、熾烈(しれつ)な覇権争いのターニングポイントは、夏休み直後の第12戦ベルギーGPだった。ポールシッターのロズベルグはスタートで失敗、トップのハミルトンを抜こうとして接触した“同士打ち事件”は、ロズベルグに非があったということで決着を見たが、その後メルセデスのガレージから目立った不協和音は聞こえてこない。
ハミルトンは落ち着いたクレバーなレース運びで勝利を重ね、一方でロズベルグは速さを勝ちに結びつけることができなかった。想像の域を出ないが、あの接触がロズベルグの心境になんらかの影響を及ぼしたと見えなくもない。
「自分にとってはいつもと変わらぬアプローチ。全力でコミット、アタックし、ポールを取ってインテルラゴス(ブラジル)で勝つ。それだけ」と楽観的にも取れるコメントを残したロズベルグ。物議を醸した最終戦アブダビGPでの「ダブルポイント」を味方につけ、7月以来遠ざかる表彰台の頂点とその先の栄冠を目指す。
シーズンを通じて火花を散らし、見るものを魅了し、時に論争の的となったシルバーアロー対決。およそ1勝分となる24点のギャップを挟み、2014年のラスト2レースへと突入していった。
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■ロズベルグ、10回目のポールポジション獲得
レースウイークエンドが始まると、背水の陣に追い込まれたロズベルグが目覚ましい活躍を見せた。金曜、土曜の3回すべてのフリー走行に加え、予選に入ってもQ1、Q2でトップタイムを連発。Q3最初のアタックでも、ハミルトンが記録した1分10秒195を、ロズベルグは0.029秒だけ上回った。
そして最後のフライングラップ、ハミルトンが1分10秒056とタイムを更新した直後、わずか0.033秒の差でロズベルグがポールポジションを奪い取った。手に汗握る予選での接戦を制したロズベルグは2戦連続、今季誰よりも多い10回目のポールを決め、今年から創設されたポールポジション・トロフィーを勝ち取った。
2戦連続2位はハミルトン。タイヤをロックさせてタイムを失ったのが痛かった。メルセデスにとっては11回目のフロントローロックアウトとなる。
セカンドローはこの位置が定着したウィリアムズの2台。地元の声援を受けたフェリッペ・マッサが3番手、バルテリ・ボッタスは4番手タイムを出したのだが、マッサは燃料系にトラブルが起き、思うように走れなかったと不満げな表情を見せた。
来季残留に黄色信号かと報道されているマクラーレンのジェンソン・バトンが奮起し5番グリッド、レッドブルをドライブするのもあと2戦となったセバスチャン・ベッテルは6番手につけ、マクラーレンのルーキー、ケビン・マグヌッセン、フェラーリのフェルナンド・アロンソ、レッドブルのダニエル・リカルドが続いた。トップ10の最後にはフェラーリのキミ・ライコネンが収まった。
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■ハミルトン、レース半ばに痛恨のスピン
今年、インテルラゴスの名で知られるこのコースは全面再舗装され、悪名高きバンピーな路面はスムーズになったと評判も上々だった。ピレリはここにミディアムとソフトタイヤを持ち込み、多くがソフトを履いてスタートを迎えた。
オープニングラップをとったのは、ポールシッターのロズベルグ。ハミルトンが2位、マッサ3位、ボッタス4位、バトン5位とグリッド順通りにきて、ベッテルはマグヌッセン、アロンソに抜かれ8位までポジションを落とした。
路面温度が50度まで高まったこともあり、各車早々にタイヤを交換。トップのロズベルグは71周レースの7周終了後、翌周ハミルトンもミディアムに変えた。それまで1.2秒あった2台の間隔は一気にDRS圏内の1秒以下に接近したものの、メルセデスが最初からミディアムを履いていたニコ・ヒュルケンベルグやダニール・クビアトらを抜く間に2.3秒まで拡大していた。
2位ハミルトンは無線でタイヤ温度を管理するよう指示を受けての走行。トップのロズベルグを含め、ほかの多くのドライバーもブリスターを抱えて周回を重ねたが、それでもハミルトンはファステストラップを更新しながら追撃の手を緩めなかった。
1秒まで接近したメルセデス2台のうち、1位ロズベルグは27周目に2度目のタイヤ交換。その間、ハミルトンはペースを上げ勝負に出るも、勢い余ってスピン、コースをはみ出してしまった。このハミルトンのミスが、今回の勝敗を分ける決定的な出来事となった。
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■ロズベルグ、全セッション制覇で最終戦へ
その後タイヤをフレッシュなミディアムに変えたハミルトンは、ロズベルグに7秒強差まで逃げられてしまったのだが、もちろんこれでレースを投げ出したわけではない。
トップを争う、2台のシルバーアローの間隔は、35周で5.5秒、40周を過ぎると3秒台に突入し、48周でいよいよ1.9秒まで縮まった。貯金を徐々に減らしていった首位ロズベルグは50周を終えて最後のピットストップ、次の周でハミルトンもその動きにならった。
残り20周、1秒を切った勝利への攻防戦は白熱。トップのロズベルグがファステストラップで逃げようと必死に走れば、2位ハミルトンもそうはさせぬと最速タイムで応戦。チャンピオンの座をかけた2人の戦いは見応えのあるものだった。
結果、1週間前のオースティンでの失敗を繰り返さなかったロズベルグが、およそ4カ月ぶりとなる勝利を決めた。6連勝ならず2位に終わったハミルトンは、痛恨のミスを悔やんだ。
そして3位表彰台にのぼったのが、地元ブラジルのヒーロー、マッサだった。最初のピットストップでスピードリミッターがうまく作動せずピットレーンでの制限速度を超過、5秒のストップ/ゴーペナルティーを受けた時は「ポディウムのチャンスをなくしたかと思った」。さらに3回目のピットインでは、似たユニフォームを着たマクラーレンのピットに間違えて入ってしまいタイムを無駄にした。それでも、ウィリアムズの速いストレートスピードを生かして巻き返しを図り、イタリアGPに次ぐ今年2回目の3位を獲得した。
いよいよ次は最終戦アブダビGP。ブラジルで全セッションすべてを制覇したロズベルグの起死回生の勝利で、24点あったポイント差は17点差まで縮まり、タイトル決定戦を迎える。
物議を醸したダブルポイントのルールにより、ウィナーには50点、2位には36点、3位には30点と、このレースに限り通常の2倍のポイントが与えられる。勢いを取り戻したロズベルグが最終戦でも勝利すると、ランキング1位のハミルトンが自身2度目のタイトルを獲得するためには2位が必須条件となる。
シーズンを通じて繰り広げられた同門対決、11月23日に勝利の美酒に酔うのは、ハミルトンか、ロズベルグか?
(文=bg)