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第310回:旧来の価値観を“越える”クロスオーバー
「マツダ越 KOERU」のチーフデザイナーに聞く

2015.09.18 エディターから一言
クロスオーバーのコンセプトモデル「マツダ越 KOERU」。
クロスオーバーのコンセプトモデル「マツダ越 KOERU」。 拡大

マツダはフランクフルトモーターショー(開催期間:9月15日~27日、一般公開は9月19日から)でクロスオーバーのコンセプトモデル「マツダ越 KOERU」を世界初公開した。このクルマで表現していること、そしてそこに込められた思いを、チーフデザイナーの小泉 巌氏に聞いた。

野生動物のような力強い生命感に加え、研ぎ澄まされた品格を表現することにより、「魂動」表現の進化が図られている。
野生動物のような力強い生命感に加え、研ぎ澄まされた品格を表現することにより、「魂動」表現の進化が図られている。 拡大
「越 KOERU」という車名には、「既存の概念や枠組みを“越える”価値を提供したい」というマツダの思いが込められている。
「越 KOERU」という車名には、「既存の概念や枠組みを“越える”価値を提供したい」というマツダの思いが込められている。 拡大
「越 KOERU」はエクステリアデザインを世に問うためのショーカーだが、SKYACTIV技術や、先進安全技術のi-ACTIVSENSE、カーコネクティビティーシステムのMazda Connectの搭載を想定して製作されている。
「越 KOERU」はエクステリアデザインを世に問うためのショーカーだが、SKYACTIV技術や、先進安全技術のi-ACTIVSENSE、カーコネクティビティーシステムのMazda Connectの搭載を想定して製作されている。 拡大

ボディーサイズは「CX-5」を上回る

フランクフルトショーでお披露目されたマツダのクロスオーバーコンセプトモデル、越 KOERU。「CX-5」に始まった同社の新世代商品群に貫かれるデザインテーマ「魂動」がこのクルマにも採用されていることがひと目でわかる、シャープかつ有機的なデザインだ。ここのところマツダがコミュニケーションカラーとして用いるソウルレッドに塗装されているようにも見えるが、聞けば、ショーカーということで、ソウルレッドをベースにしながらも、ひと味異なる赤に塗装されているという。

「CX-3」に似ているなというのが第一印象。黒く縁取りされたホイールアーチ、天地に薄いチョップド風のウィンドウグラフィックなどに共通するものを感じる。そして何より水平基調のフロントグリル両端がそのままヘッドランプにつながる「シグネチャーウイング」がこのクルマでも力強く表現されている。

サイズは、全長×全幅×全高=4600×1900×1500mm、ホイールベースは2700mm。大ざっぱに言えば、CX-3の同4275×1765×1550mm、および2570mmよりも、CX-5の同4540×1840×1705mm、および2700mmよりも大きい。低めの全高がもたらす車両全体のボリューム感は、意外にもCXシリーズではなく「アクセラ」あたりに近い。

越 KOERUはあくまでショーカーであり、CX-3よりも低い全高やCX-5よりも幅広い全幅などは、仮に市販化されるとすれば見直される可能性が高い。ウィンドウ越しにのぞく限りインテリアもデザインされていたが、あくまでエクステリアデザインのみの展示であり、ドアは開かない。とはいえ、現在のマツダがもつガソリン、ディーゼル、ハイブリッドのいずれのパワートレインをも搭載を想定してデザインされているとのことで、ショーカーといえどもブースを彩るためだけの存在ではないようだ。

魂動デザインに「品格」を盛り込む

チーフデザイナーの小泉 巌氏は、1982年にマツダ入社後、「ユーノス・コスモ」、「ユーノス500」、初代「プレマシー」などのエクステリアデザインを担当したほか、「CX-7」や「ビアンテ」のチーフデザイナーを務めた。また、CX-5に端を発するマツダの新世代商品群を一括企画した人物でもある。今回、ショー会場でインタビューの機会を得た。

――デザインテーマ「魂動」にのっとった最新作ですが、特徴は?

小泉 巌(敬称略、以下小泉):これまでの魂動デザインは強く抑揚のついた動きのあるものでしたが、このクルマではそうした要素をベースとしながら「品格」を盛り込みました。また、サイズや豪華さといったヒエラルキーから解放されるようなデザインを目指しました。ヒエラルキーなどといった旧来の価値観を“越え”たかったのです。

――クロスオーバーとして提案されていますが、何と何のクロスオーバーなのでしょうか?

小泉:便宜上クロスオーバーと表現していますが、何と何の掛けあわせといった考え方でなく、自由にデザインしています。カテゴライズするとさまざまな約束、例えばSUVなら車内が広くなければいけないとかクーペなら流麗でなければならないといった約束事に縛られることになります。今回は純粋なショーカーなのでそうした約束事からは解放されてデザインすることができました。

「越 KOERU」を手がけた小泉 巌チーフデザイナー。
「越 KOERU」を手がけた小泉 巌チーフデザイナー。 拡大
タイトなキャノピーと抑揚のあるボディーが作り出すスピード感のあるボリュームの動きが、クロスオーバー車として独特な存在感を生み出している。265/45R21サイズのタイヤを履く。
タイトなキャノピーと抑揚のあるボディーが作り出すスピード感のあるボリュームの動きが、クロスオーバー車として独特な存在感を生み出している。265/45R21サイズのタイヤを履く。 拡大
マツダの前田育男デザイン本部長(右)と小泉 巌氏(左)。(写真=塩見 智)
マツダの前田育男デザイン本部長(右)と小泉 巌氏(左)。(写真=塩見 智) 拡大

マツダのデザインへの挑戦は続く

――フロントウィンドウ、リアウィンドウともに強く寝ていて、ルーフに向かって絞り込みが強いデザインですね。

小泉:キャビンではなくキャノピーにしたかったんです。航空機がもつ雰囲気を取り入れています。

――どういうユーザーを思い浮かべてデザインしたのですか?

小泉:若いエリート層です。多くの若者から憧れる存在にしたいと考えながらデザインしました。

ここのところ、商品やPRなどからマツダの上昇志向のようなものを感じるようになったが、インタビューを終え、その印象を強くした。そこで最後に「マツダはプレミアムブランドを目指しているのですか?」という直球の質問をぶつけてみたところ、「プレミアムの定義にもよりますが、われわれは価格やヒエラルキーの面でいわゆるプレミアムを目指すわけではなく、とにかくデザインに憧れていただけるという意味でのプレミアム性は獲得したいと考えています」という答えが返ってきた。だんだん“買えないマツダ”になっていくんじゃないかという懸念が払拭(ふっしょく)され、安心した。

越 KOERUの存在は、今後のマツダ車がもうしばらくは魂動デザインにのっとったカタチで登場することを示している。今回のフランクフルトショーでは、各ブランドからミドルサイズより小さなクロスオーバーを含むSUVが多数出展された。SUV勢力はこの先も拡大の一途であることが予想される。そうした時代にあって、越 KOERUは、「デザインでまだまだ存在感を示すぞ!」というマツダの意思表示のように感じられた。

(文=塩見 智/写真=塩見 智、Thomas Niedermuüller/Getty Images for Mazda Motor Co.)

「越 KOERU」のワールドプレミア(世界初公開)の様子。
「越 KOERU」のワールドプレミア(世界初公開)の様子。 拡大
プレスカンファレンスで登壇するマツダの小飼雅道代表取締役社長兼CEO。
プレスカンファレンスで登壇するマツダの小飼雅道代表取締役社長兼CEO。 拡大
アンベールされた「越 KOERU」。
アンベールされた「越 KOERU」。 拡大
存在感を増したシグネチャーウイングは「強い意志」を、LED導光リングを採用したヘッドランプは「生命力に満ちた瞳」を表現しているという。
存在感を増したシグネチャーウイングは「強い意志」を、LED導光リングを採用したヘッドランプは「生命力に満ちた瞳」を表現しているという。 拡大
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