【F1 2016 続報】第8戦ヨーロッパGP「ロズベルグ、再起の5勝目」
2016.06.20 自動車ニュース![]() |
2016年6月19日、アゼルバイジャンのバクー・シティー・サーキットで行われたF1世界選手権第8戦ヨーロッパGP。今年加わった新しいコースでポール・トゥ・ウィンを飾ったニコ・ロズベルグは、1週間前に9点まで激減したポイントリードを24点にまで回復し、失いかけた勢いを取り戻した。
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■ヨーロッパの東の果て
F1にまた新しい開催国が加わった。ソビエト連邦の構成国から1991年8月に独立したアゼルバイジャン共和国だ。東にカスピ海をのぞみ、北はロシア、南はイランと接する国で、北海道よりやや広い程度の国土に約950万人の人々が暮らしている。
昨今、F1とは縁もゆかりもなかった国がGPカレンダーに加わることは珍しくない。天然資源が豊富で、石油や天然ガスの輸出で経済成長を遂げてきたアゼルバイジャンは、近年、国際的なビッグイベントの誘致に積極的で、F1に加え昨年はヨーロッパ競技大会を開催。2020年にはサッカーのユーロ2020の試合も控えている。成長の過程でスポーツ大会を開催し、内外にその存在をアピールしたいのだ。
首都バクーにつくられたバクー・シティー・サーキットは、最近のF1コースをことごとく手がけてきたヘルマン・ティルケがレイアウトをデザインした「最速の市街地サーキット」。今シーズンでは、ベルギーのスパ・フランコルシャンに次ぐ長さとなる6kmのコースに20のターンが配された、超高速と低速の区間を組み合わせたユニークなサーキットだ。
最初のセクターはストリートコースならではの直角コーナーが続き、真ん中のセクターは世界遺産に登録される旧市街の城壁を抜ける狭くツイスティーなセクション、そして最後は2km超を全開で駆け抜けるという、世界中のさまざまなサーキットの特徴を掛け合わせたような、バラエティーに富んだ性格を持つ。
欧州の東の果て、あるいはアジアの西の端っこともいえるアゼルバイジャンでのヨーロッパGP。壁に囲まれた市街地コースということもあり、レースは荒れるのではないかと思われていたが、意外にも一度もセーフティーカーは出ず、落ち着いた展開となった。
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■ハミルトンがクラッシュ、ポールはロズベルグ
予選では王者がミスをおかした。3回のフリー走行すべてでトップタイムをマークしていたルイス・ハミルトンだったが、Q3最初のアタック中にタイヤをロックアップ。それを挽回しようとしていた2度目のフライングラップで、今度はウオールにタイヤをヒットさせマシンを壊してしまった。名手らしからぬエラーでハミルトンは10番グリッドに沈んだ。
ポールポジションは同じメルセデスのニコ・ロズベルグの手に渡り、後続に0.75秒もの差をつけ、今季3度目、通算25回目の予選P1を獲得した。予選2番手は、強力なメルセデスのパワーユニットを武器に戦ったフォースインディアのセルジオ・ペレスだったが、フリー走行でクラッシュしギアボックスを交換、5グリッド降格ペナルティーを受け7番グリッドに落ちてしまった。
代わってフロントローにつけたのは、レッドブルのダニエル・リカルド。フェラーリのセバスチャン・ベッテルはリカルドとまったくの同タイムながら、後に記録されたため3番グリッドに。フェラーリのキミ・ライコネン4番手、ウィリアムズのフェリッペ・マッサ5番手、そしてトロロッソのダニール・クビアトは6番手からレースにのぞんだ。
アタック中に接触寸前で丁々発止とやりあったウィリアムズのバルテリ・ボッタスとレッドブルのマックス・フェルスタッペンはボッタス8位、フェルスタッペン9位という結果となった。
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■ロズベルグ、スタートから逃げる
市街地コースということで、オープニングラップは何が起きてもおかしくなかったが、各車慎重にスタートし、その後も大きな混乱なく51周のレースは行われた。
1周目は1位ロズベルグ、2位リカルド、3位ベッテル、4位ライコネンと、ここまでは予選順位のまま。5位にペレスがポジションアップしていた。
トップのロズベルグは5周で7秒リードと逃げに入る一方で、2位リカルドはペースが上がらず。6周目にベッテルに2位の座を譲ったリカルドは早々にピットに入り、ニュータイヤに履き替えた。結局レッドブルはライバルより1回多い2ストップ作戦を選択し、リカルド7位、フェルスタッペン8位と中位でレースを終えることになった。
2位に上がったベッテルはといえば、レッドブルの動きを見てタイヤ交換の指示を出したチームに対し「まだいける」とコースにとどまり続け、20周目にようやくピットイン。4冠王者のこの判断が、2戦連続2位というリザルトに結びつくことになる。
20秒以上のリードタイムを築いていたロズベルグも22周目にタイヤを替え、トップのままコースに復帰。ロズベルグにとっては不安要素の少ないレース展開となっていった。
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■ハミルトン、マシンのセッティングと格闘
各車1回目の(多くにとっては唯一の)タイヤ交換を終えると、1位ロズベルグ、18秒差で2位ライコネン、3位ベッテル、4位ペレス、そして5位ハミルトンというオーダーに。10番手スタートのハミルトンは10周して5位、翌周には4位とポジションアップした後、バイブレーションを訴え15周してピットインしていたが、その後、4位ペレスとの5秒前後の差を詰められずにいた。
パワーユニットに十分な力強さがないことを訴えるハミルトンは、無線を通してチームにその原因と解決法をたずねた。しかし今年から一層厳格化されたピット通信規制により、チームはドライバーを補助するような助言ができなかった。さまざまなエンジンモードと格闘するハミルトンは、何かの拍子にパワーを取り戻したものの時既に遅し、5位完走がやっとだった。
フェラーリはライコネンがベッテルに2位のポジションを譲り、ベッテルはハイペースで18秒前のロズベルグを追ったが、既にレースの主導権を握っていたロズベルグが動じることはなく、トップ2はそのままの順位でゴールへ。
表彰台の最後の一角をかけた争いは、3番手を走るライコネンがピットエントリーの白線を踏んだことによる5秒加算ペナルティーを受けることが分かっていたため、レース終盤には事実上ペレスが3位となることが見えていたが、最終周にフォースインディアがフェラーリを抜き去り、ペレスが名実ともに今季2度目のポディウムを決めた。
開幕から4連勝の後に、第6戦モナコ、第7戦カナダと、最大のライバルであるハミルトンに連勝を許していたロズベルグが、失いかけた勢いを取り戻す勝利を収め、1週間前に9点まで激減していたポイントリードは、再び24点まで開いた。
史上最多、21戦が組まれる今季のF1は、1カ月に4戦が開催される忙しい7月を迎える。
その初戦、オーストリアGPは7月3日に決勝が行われる。
(文=bg)