第46回:328のタイベルはアルゼンチン製!
2017.06.20 カーマニア人間国宝への道“赤い玉号”の検診に潜入
真っ赤な「フェラーリ328GTS」を買い、ココロからの幸福感に満たされている清水草一です。最初の真っ赤な「348tb」の時だけは、フェラーリなんちゅうとんでもないお買い物をしてしまった重荷でペッチャンコになりそうでしたが、2台目からはココロからの幸福感に満たされてます。なので皆さま、フェラーリは生涯2台以上お買いになるのがオススメですよウフフ~!
私は4台目の「F355スパイダー」以来、自分のフェラーリ様に愛称をつけているのですが、今回は55歳で買った真っ赤なフェラーリということで、“赤い玉号”と名付けました。もう今回で打ち止め、コロンと出た赤い玉です。我ながら素晴らしい命名だ……。
ところでその赤い玉号ですが、納車前にタイミングベルト交換をやってくださるということで、その様子を見学に行きました。交換工賃も980万円にコミコミでした。ありがとうエノテン!
フェラーリのタイミングベルト交換は、庶民系フェラーリオーナーにとってひとつの大きな恐怖だ。「348」から「360」までのV8フェラーリや「テスタロッサ」、「512TR」など、タイミングベルトを使っている縦置きミドシップフェラーリは、エンジンを下ろして交換せねばならず、エンジンを下ろすとせっかくなのでその他のベルト類すべて&消耗部品も全とっかえ気味となり、30~40万円ほどかかる。
タイベル交換は5年5万kmでOK
交換頻度は、24年前つまり私が初めてフェラーリを買ったころは「2年ごと」といわれていた。それをやらずにタイベルが切れると、バルブクラッシュでエンジンがパー。だから死んでもやる! それがフェラーリ様の年貢取り立て! 石にかじりついてでも専守防衛! そんな悲壮感バリバリだった。
初めてフェラーリを買われる方は、「タイミングベルトは交換済みですか?」と尋ねるのが「こんにちは」と言う代わりになっていたほどである。それやってないフェラーリは死刑台のエレベーター。そんな恐怖が支配していた。
が、実をいうと現在はもう、フェラーリのタイミングベルトはまず切れません。理由は「タイベルそのものの品質が劇的に向上したから」です! たぶん。
昔、フェラーリのタイベルはピレリ製だった。だからたまに切れた(神話)。でも今は日本製。だから大丈夫(神話)。そんなことも20年ぐらい前に聞きました。
とにかく最近は、フェラーリのタイベル交換は5年5万kmぐらいでOKという感じになっている。フツーのクルマの目安が10年10万kmでしょ? 一応フェラーリ様なので大事を取ってその2倍励行する。つっても5万km乗るには通常25年ぐらいかかるので、実質的には5~7年おき。そんなところが相場です。
がしかし、赤い玉号はヨソから仕入れたクルマにつき、最後にいつ交換したかはっきりわからないので、一応交換しましょう。328はエンジン横置きだからエンジン下ろさずに交換できるし。そういうご厚意でした。ありがとうエノテン!
奇跡の11年選手
で、コーナーストーンズの整備工場である尾上サービスで交換風景を見学したのですが、ベルトには「DAYCO」と書いてあった。新旧ともにDAYCO。これって大胡? 日本製?
調べたら、デトロイト近郊に本拠を置く自動車部品メーカーだった。でもアメリカ製ではなくMADE IN ARGENTINA。アルゼンチン製とは意表を突かれたぜ!
で、アルゼンチン製の新品ベルトに交換したのですが、装着されていたベルトを見てもひび割れ皆無、山もしっかり角が立っている。「DAYCO」の文字が薄くなっているだけで、劣化はほとんど感じられない。
あらためてクルマに積まれていた整備記録簿を全部確認すると、どうも最後の交換は11年前という気配が濃厚なのですよ……。
フェラーリのタイミングベルトは11年持つ!! とは言い切れないが、赤い玉号は11年持ったらしい!
「やっぱフェラーリはメッチャ丈夫だぜ! まず壊れねぇな。ダッハハハハ!」
私は勝利の高笑いをしました。
まぁこんなノーテンキなことを言えるのも、いつも大変素晴らしいコンディションのフェラーリ様をご用意くださるコーナーストーンズ様のおかげさまなのですが。24年間で合計11台、カウンタックも含めると12台、すべて全幅の信頼を置くエノテン様より買わせていただいています。おかげで気が緩みまくってます。やっぱり中古車選びはお店選びが鉄則だネ! いつもありがとうエノテン&尾上メカウフフフフ~~!!
(文=清水草一/写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。