第320回:脳内デートカー
2025.10.06 カーマニア人間国宝への道路面を滑るように走る
デートカー世代ど真ん中だった私も、現在63歳。日々顔面のシワが増え、平家の没落気分を味わっている。
そんな私は2年前、ジャパンモビリティショー2023で「ホンダ・プレリュード コンセプト」を見て以来、大いなる疑問を抱いてきた。プレリュードを令和のデートカーとして復活させるなんて本気か!? しかもパワーユニットはハイブリッドのみ。「タイプR」が出るならともかく、そんなフツーな動力性能のスポーツクーペを、今どき誰が欲しがるのか。カッコもよくわかんないし、商品企画が根本的に間違ってる!
しかし期待値がゼロだと、伸びしろしかない。最近、同業者から走りのよさを聞きまくったことで、脳内の評価は急激に上昇していた。
そんなプレリュードに、本日、公道で試乗させていただきました。
初対面のプレリュードは、相変わらずヌメッとしたよくわかんない形をしていた。少なくとも「カッコイイ!」と見ほれるタイプじゃない。
運転席に座ると、思ったより座面が高くて視界がいい。ペッタンコなクルマに乗ると、前を走るSUVに視界を遮られてなんにも見えないご時世だが、1355mmという全高は、昔のセダンとそんなに変わらない。これくらいの視点なら、視力・視界が衰える一方の中高年でも、日常的に乗れそうだ。
走りだすと、乗り心地がウルトラいい。「シビック タイプR」の100倍いい。「COMFORT」モードはもちろんのこと、「GT」モードでも「SPORT」モードでも、路面を滑るように走る。まさにグライダー!
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走りは100点満点だ!
コーナリングがまたスゲエ。あまりにも気持ちよく曲がるので、インターチェンジ内のカーブで「うおおおお~~~~!」と叫んでしまった。クネクネした峠道を走っても、曲がる曲がる、死ぬほど曲がるぜ!!
パワーユニットはホンダ得意の「e:HEV」で2リッターバージョンだ。私はコイツに関しては、「シビック」のも「アコード」のも大好きである。ホンダの2リッター自然吸気エンジンの吹け上がりが、最高に気持ちイイ。プレリュードはさらに若干気持ちイイ。アクセル全開での8段ステップ変速は、F1マシンに乗ってるみたい! F1マシンに乗ったことないけど!
しかも、加速のよさがそこそこなので、思う存分アクセル全開を楽しめる。今日びの1000PS級スポーツクーペは、公道では1秒も全開にできないが、プレリュードなら、5秒は全開にできる。その間にステップ変速を3段くらい味わえる。ひょえ~~っ、気持ちイイ~~~~~っ!
視界がよくて、乗り心地が超滑らかで、エンジンが超絶気持ちイイ。実際にタイヤを駆動してるのはモーターだけど、そんなことはどうでもいい。すべてが衰えつつある中高年のクルマ好きとして、走りは100点満点だ! 「プレリュード タイプR」なんていらん! いや、そんなもん出したら、令和のデートカーというコンセプトが崩壊する! 絶対出しちゃダメ!
これだけ走りがいいと、よくわかんない形もカッコよく見えてきた。とりあえず古典的にカッコをつけたスポーツクーペであることは確かなので、細かいことは言わずにカッコいいことにしよう。リアスポイラーを装着すればなおよし!
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初期購入者の8割が50代~60代
よく見るとこのクルマ、エアダム中央にブルーの縦線が入ってる。写真じゃ気づかなかったけど、これがジョン・トラボルタの割れたアゴみたいでセクシーだ。お尻にもブルーの縦線が。OH! セクシー!!
ホンダの方に聞いたら、このラインが視点を下に導くことで、車高を低く見せる効果があるそうだ。言われてみればっ!
少し前まで、「プレリュード? どこが令和のデートカーじゃ!」とか言ってたけど、実物に乗り、じっくり眺めたら、デートカー世代の血がふつふつと沸き立ってきた。
考えてみれば、デートカーといったって、必ずしもデートする必要はないじゃないか。これはデートカーだと思うだけでいいじゃないか!
私はプレリュードに乗り、デート気分を存分に味わった。助手席に誰もいなくても、40年くらい前の、ガツガツしたデートドライブを思い出して陶酔した。やっぱ音楽はユーミンか山下達郎だな……。
試乗を終えてホンダの方に聞いてみた。
オレ:どんな方が買われてるんですか?
ホンダの方:初期にオーダーされた方の8割が50代から60代です。
ヨッシャ~~~~~~ッ!! 「意外と若い方に人気です」とか言われたらどうしようかと思ったぜ! 中高年の脳内デートカー万歳!
プレリュード唯一の欠点は、シートヒーターしか付いてない清貧すぎるシートだ。脳内デートを楽しむためには、シートはできるだけゴージャスでなくてはならない。本革電動にベンチレーション&マッサージ機構を追加した「リラクゼーションパッケージ」を用意してくれ! 中高年は、令和の脳内デートカーに、プラス100万円くらい喜んで払うだろう。万が一のデートに備える意味でも。涙。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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