【F1 2017 続報】第11戦ハンガリーGP「跳ね馬の逆襲」
2017.07.31 自動車ニュース![]() |
2017年7月30日、ハンガリーのハンガロリンク・サーキットで行われたF1世界選手権第11戦ハンガリーGP。わずか1点差で迎えたセバスチャン・ベッテル対ルイス・ハミルトンのタイトル争いは、サマーブレイク前の最後の一戦でフェラーリが逆襲に転じた。
![]() |
![]() |
![]() |
シーズン折り返し、1点差のタイトル争い
全20戦の2017年シーズンも10戦を終え、恒例の夏休み前の最後の一戦、ハンガリーGPを迎えた。前戦イギリスGPでは、母国の大観衆の前でルイス・ハミルトンがポールポジションから見事なまでの完勝で4勝目をマークし、さらにバルテリ・ボッタスが9番グリッドから2位でチェッカードフラッグを受け、メルセデスは今年2度目の1-2フィニッシュを達成した。
一方、打倒メルセデスをもくろむフェラーリは、予選で0.5秒も突き放され、レースではペースを上げるもハミルトンにやすやすと逃げられ、そして最後には2台ともタイヤトラブルに見舞われ、キミ・ライコネン3位、セバスチャン・ベッテルは7位と惨敗した。
今季序盤、速さでこそメルセデスに一日の長があったものの、安定感のあるレース運びでチャンピオンシップをリードし続けてきたフェラーリとベッテル。第6戦モナコGPでは、ベッテルが3勝目を挙げ、6戦連続で表彰台にのぼり(しかも優勝以外はすべて2位)、ランキング2位のハミルトンに1勝分にあたる25点もの大差をつけたのだが、それ以降ポディウムはオーストリアGPでの2位のみと振るわず、シーズンの折り返しで残された貯金はたった1点となった。
ハミルトンもここまで決して順風満帆というわけではなく、ヘッドレストの緩みで第8戦アゼルバイジャンGPは5位、続くオーストリアGPではギアボックス交換の降格ペナルティーで8番グリッドから4位と自分以外の要因に足を引っ張られることもあったが、イギリスでの圧勝とフェラーリの敗戦で好機が転がり込んできた。
昨年の第11戦ハンガリーGPを振り返れば、連勝中のハミルトンが宿敵ニコ・ロズベルグを破り、チャンピオンシップでも首位に躍り出た。この時、流れは明らかにハミルトン優勢に向かっていたが、ロズベルグがサマーブレイク後に反撃に転じ、結果タイトルはロズベルグの手に渡った。シーズン中間地点にあって、この「流れ」は読めるようでなかなか読みにくい。勝負の転換点とは、あくまで結果論にすぎないのだ。
過去10年で5勝しているハミルトンの「庭」、ハンガロリンクで、フェラーリは反攻に転ずることができるのか。
![]() |
フェラーリ、抜きにくいハンガロリンクでフロントロー独占
イギリスGPの舞台が超高速のシルバーストーンなら、ハンガリーGPのハンガロリンクは真逆で、パワーユニットの差が出にくい中低速コースだ。大幅な空力改良を行ってきたレッドブルが好調な滑り出しを見せ、初日2回のフリー走行でダニエル・リカルドが最速タイムをたたき出せば、翌日の3回目にはベッテル、ライコネンのフェラーリが1-2。これにメルセデスを加えての三つどもえの戦いに期待が高まった。
予選に入るとQ1でベッテル、Q2ではハミルトンがトップ。そして迎えたQ3ではフェラーリがメルセデスを突き放し、ベッテルが第4戦ロシアGP以来となる今季2回目、通算48回目のポールポジションを奪った。さらにライコネンも2番手につけ、抜きにくいハンガロリンクでフェラーリはフロントロー独占というアドバンテージを得た。メルセデス勢は2列目に追いやられ、ポールから遅れること0.254秒でボッタスが3位、タイヤのバイブレーションに悩まされたハミルトンは4位に甘んじた。
マックス・フェルスタッペン5位、ダニエル・リカルド6位とレッドブルが3列目を占拠。ルノーのニコ・ヒュルケンベルグは7位に入るも、ギアボックス交換で5グリッドダウン。代わって2台そろってQ3進出を果たしたマクラーレンのフェルナンド・アロンソが7番グリッド、チームメイトのストフェル・バンドールンが8番グリッドに繰り上がった。トロロッソのカルロス・サインツJr.は9番グリッド、そしてルノーのジョリオン・パーマーは10番グリッドからレースに臨んだ。
![]() |
![]() |
フェラーリ1-2を堅持、レッドブルは同士打ち
「壁のないモナコ」の異名を持つ抜けないハンガロリンクで、2列目のメルセデス勢が狙うはスタートでフェラーリを抜くこと。しかしシグナルが消えると赤いマシンは2台とも好スタートを切り、逆にメルセデスはレッドブルからの突き上げにあってしまう。1位ベッテル、2位ライコネン、3位ボッタスに続いたのはフェルスタッペンで、ハミルトンは5位に落ちた。
好発進を決めたレッドブルだったが、オープニングラップのターン2でフェルスタッペンとリカルドが接触。はじき出されたリカルドのマシンは0周で戦列を去ることになってしまった。セーフティーカーランを経て、70周レースの6周目にレースが再開すると、先の接触の責任がフェルスタッペンにあるとされ、4位走行中のレッドブルに10秒のペナルティーが言い渡された。
10周を過ぎると、2位ライコネンと3位ボッタスとの間には6秒程度のギャップができ、その差はしばし変わらなかった。快調に飛ばすフェラーリの2台に見えたが、トップのベッテルのマシンは、ストレートでステアリングが左に切れるという珍しいトラブルを抱えており、縁石に乗り上げない走行を余儀なくされていた。また5位を走るハミルトンも無線の不調でチームと交信ができない状況に置かれていた。
上位陣で最初にピットに入ったのは3位ボッタス。30周を終えてスーパーソフトタイヤからソフトタイヤに履き替えた。そして翌周にはハミルトン、続いてベッテル、ライコネンと次々とピットストップを実施。タイヤ交換が一巡すると、1位ベッテル、2位ライコネン、3位ボッタス、4位ハミルトン、42周目のピットストップでペナルティーを受けたフェルスタッペンは5位にポジションダウンした。
![]() |
![]() |
ハミルトンの猛攻に、跳ね馬が耐え切る
レース後半に入ってもフェラーリが1-2をキープしていたが、ベッテルのペースは上がらず、1位から4位まで1秒半程度の等間隔で数珠つなぎになりはじめた。
ようやく無線が回復したハミルトンは、チームに「自分の方が速いんだ」と直訴。これを受けたメルセデスは、47周目にハミルトンとボッタスの順位を変え、3位に上がったハミルトンにフェラーリ攻略を任せることとした。もしハミルトンがフェラーリを抜けなかったら、ボッタスに3位のポジションを返すという条件付きのチームオーダーだった。
首位ベッテルに、ライコネンとハミルトンが迫ってきた。周回遅れのマシンを挟んでの3台による攻防戦。ハミルトンとてコース上で抜くことが難しいことは百も承知で、プレッシャーをかけ続けフェラーリのミスを誘おうという作戦であったのだが、赤い壁はなかなか崩れなかった。
ゴール目前、約束通り3位の座をボッタスに返したいハミルトンだったが、ボッタスは7秒も後方を走っており、さらにライバルよりフレッシュなタイヤで元気いっぱいのフェルスタッペンが真後ろの5位に控えていた。ハミルトンは最終ラップの最終コーナーで上手に、そして潔くボッタスを先行させ、チームプレーに徹し4位でチェッカードフラッグを受けた。
ベッテルより速く走れたはずのライコネンもまた、チームに貢献する走りで2位でフィニッシュ。そしてベッテルはハミルトンと肩を並べる今季4勝目を記録し、たった1点だったリードを14点にまで拡大することに成功した。
メルセデスとフェラーリ、ベッテルとハミルトン、ライコネンとボッタス。それぞれが高度な総合戦を繰り広げた、2017年前半戦を象徴するかのようなレースだった。
サマーブレイク明けの初戦はベルギーGP。決勝は8月27日に行われる。
(文=bg)
-
NEW
第638回:京都で最新EV「ポルシェ・タイカン」と歴代クラシックポルシェに触れる
2021.1.16エディターから一言最新のフルEV「ポルシェ・タイカン」の登場に合わせ、ドイツ・シュトゥットガルトのポルシェミュージアムから貴重な3台のクラシックモデルが日本上陸。幸運にもタイカンとともに、冬の京都を舞台に試乗するチャンスに恵まれた。 -
NEW
シトロエン・ベルランゴ フィール(FF/8AT)【試乗記】
2021.1.16試乗記先行導入された特別仕様車「デビューエディション」があっという間に売り切れた「シトロエン・ベルランゴ」が、ついにカタログモデルとして正式に上陸。エントリーグレード「フィール」を連れ出し、フレンチMPVのニューフェイスが秘める“素”の魅力を探った。 -
NEW
福野礼一郎の新刊『福野礼一郎 あれ以後全集9 完結編』発売!
2021.1.15From Our Staff自動車評論家、福野礼一郎が『CG』本誌をはじめ、各誌で執筆した作品を年代ごとに収録した『福野礼一郎 あれ以後全集』シリーズの第9弾がついに発売。今回は、2016年から2018年までの著作を集めた“完結編”で、読み応えある390ページ超、全41編を収録しています。 -
NEW
第31回:ボルボからオキテ破りの電撃移籍! 豪腕社長はプジョー&シトロエン&DSをどう料理する?
2021.1.15小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ日本におけるボルボ躍進の立役者と言っても過言ではない木村隆之さんが、ボルボ・カー・ジャパンの社長からグループPSAジャパンの社長に電撃移籍。就任2日目でご多忙のところに不肖・小沢コージがお邪魔し、アレコレ聞いてきました。 -
NEW
日産キックスAUTECH/ノートAUTECH/エルグランドAUTECH
2021.1.15画像・写真「プレミアムスポーティー」を開発コンセプトに掲げ、日産車の独創的なカスタマイズカーを製作するオーテック。最新モデルである「キックスAUTECH」をはじめ、昨年デビューしたばかりの「ノートAUTECH」「エルグランドAUTECH」の詳細な姿を、写真で紹介する。 -
NEW
日産エルグランドに見る高級車の本質
2021.1.15日産エルグランド 進化し続けるパイオニア<AD>堂々とした存在感と質の高い走りでファンを魅了する「日産エルグランド」。この風格漂う日産の最上級ミニバンが、さらなる進化を遂げた。デザインや先進装備など、多方面で磨きのかかった最新モデルの実力は?「プレミアムミニバン」というジャンルを切り開いた、パイオニアの矜持に触れた。