高性能化だけが正解なのか?
バッテリーの進化にEVの未来を思う
2017.11.27
デイリーコラム
電気自動車の走行距離が2倍に?
韓国のサムスン電子が、現行のリチウムイオン電池の2世代先のものとされる、リチウム空気電池の開発に乗り出すという。これにより、電気自動車(EV)の一充電走行距離を2倍に伸ばすことができるそうだ。現行のリチウムイオン電池を搭載する「日産リーフ」を例に挙げれば、現状JC08モードで400kmであるところを、800kmにできる計算となる。
サムスンのリチウム空気電池は、負極側に金属リチウムを用い、正極側の酸素との化学反応によって電気を生じさせる。正極側に小さな穴をたくさん持つカーボンナノチューブを用いれば、より多くの空気と反応できるため、電池の容量を増大させることができる。だが、これは研究段階での可能性が見え始めたばかりで、実用化のめどがたっているわけではない。
一方トヨタでは、2020年代の前半にリチウムイオン電池の電解液を固体の電解質に置き換えた、全固体電池の実用化を目指すとしている。現在のリチウムイオン電池の電解液は、液体というより粘度のあるゼリー状となっているが、それでもクルマへの搭載方法によっては、電解液が偏りを起こす懸念があり、それによって電池の劣化が進む。これに対し、電解質が固体となれば偏りがなくなるため、電池が常に理想状態で充放電を繰り返せることになり、本来の性能を発揮できるようになる。
もちろん、充放電が繰り返されることによる電極の結晶構造の劣化と、それに伴う電池の性能低下がまったくなくなるわけではない。とはいえ、液体の電解液に比べ、劣化を遅らせることにはつながるという。
高性能化だけが進むべき道ではない
リチウムイオン電池に使う固体の電解質については、トヨタ以外でも開発が進められており、そこへの道筋はある程度見えている様子だ。電池の寿命をできるだけ延ばす点において、進めるべき開発だろう。ただし、量産に際しては既存のリチウムイオン電池でさえ高度な製造工程の自動化と、精密で清浄な生産環境が求められ、その維持管理が必要となる。それ以上に高度な技術を必要とする次世代、あるいは次々世代の電池で、何百万台ものEV需要に応えるとなると、いつ生産体制が整えられるのか。果てしない話だ。
既存のリチウムイオン電池を扱うバッテリーメーカーのみならず、EVを製造するメーカーにおいても、リチウムイオン電池の次もリチウムイオン電池であるという認識があり、その先はまだおとぎ話に近いとの声もある。そのリチウムイオン電池については、資源として限界があるリチウムをいかに上手に無駄なく利用し、安定した性能と品質の電池を大量生産できるかが当面の大きな課題だろう。
自動車部品として高価なリチウムイオン電池を大量に搭載し、ただ一充電走行距離を延ばすことのみに執着する発想は疑問でもある。すでに日産リーフや「BMW i3」「テスラ・モデルS」などで400~500kmの走行距離は実現されている。多くの利用者にとって、それで十分なのではないだろうか。
私は『100km100万円軽EV構想』を各自動車メーカーに提案している。ことに国内においては、ガソリンスタンドの半減や、都市への一極集中と地方の過疎化のなかで、地方に住む人たちの日常の足となる軽規格のEV、それも格安で手に入れられる商品が求められているのではないか。EVをよく知る人の間から、賛同の声も得ている。
EVの開発は、20世紀にエンジン車でとられてきた高性能化、高級化路線だけでなく、「時代の変化に即した移動体の理想像を追求する」という幅広い構想の中で、クルマの存在意義を新たに確立する発想が重要と考える。
(文=御堀直嗣/編集=堀田剛資)

御堀 直嗣
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