第458回:フォルクスワーゲンが考える自動運転社会とは?
近未来のモビリティーを自動運転責任者に聞く
2017.11.25
エディターから一言
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世界中の自動車メーカーがしのぎを削る自動運転車の開発競争。今後クルマは何を得て、一方で何を捨て去って、完全自動運転を実現するのだろうか。フォルクスワーゲン(VW)グループで自動運転研究部門の責任者を務めるヘルゲ・ノイナー氏に、同グループが思い描く近未来のモビリティー社会について聞いた。
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自動車製造業からモビリティーカンパニーへ
――自動運転はクルマのあり方にどのような影響を与えていくのでしょうか。
ヘルゲ・ノイナー氏(以下、ノイナー):それはわれわれにとっても非常に重要なテーマです。例えば20年後のビジネスモデルがどうなっているのかということに直結するテーマだからです。グローバルレベルで見ると、答えは1つではありません。大都市に限って言えば、クルマを所有しない流れが強まり、「モビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS)」(「サービスとしてのモビリティー」や「モビリティーのサービス化」などと訳される)の方向へ進んでいくでしょう。そうなると自動車の台数自体は減っていきますが、走行距離は現在より長くなるでしょう。なぜなら、さらに多くの人が自動車を利用するようになるからです。それに伴い、より耐久性の高い自動車を造るとか、高い頻度で自動車を入れ替えるといったことが必要になってくるでしょう。一方で、大都市以外ではドライバーによる運転が引き続き残ると思われます。VWはそういったトレンドをすでに見据えており、従来の自動車の製造業からモビリティーカンパニーへ、会社の形を変えていこうとしています。
――自動運転が実現すると、ドライバーは最終的には運転から解放されます。運転から解放された時、ドライバーたちは車内で何をしたがっているとお考えですか。
ノイナー:自動運転中に車内でしたいことの優先順位はマーケットによって変わってきますが、どのマーケットにも共通するのが次の3つ、「遊びやレジャー」、「仕事」、「睡眠」です。もっとも、自動運転レベル3の段階では、自動運転中に何かが起こった時、人による運転にテイクオーバー(引き継ぎ)しなくてはならないので、ドライバーが寝ることは許されません。レベル4やレベル5の段階になり、自動車からステアリングホイールがなくなれば、睡眠を取ることが許されるようになるかもしれません。
IT企業と自動車メーカーにはそれぞれの役割がある
――VWは2020年に発表する電気自動車にレベル4の自動運転機能を搭載し、「ゴルフ」のディーゼル車並みの価格に抑えるとしています。それは可能なのでしょうか。
ノイナー:私は電気自動車の責任者ではありませんので、そちらについてはお答えしかねますが、これだけは言えます。それは実現しなくてはなりません、と。やはり、世界の国々のニーズを見ていると、自動運転レベル4および5を、約束した時までに提供すべきだと思っています。そのために、わが社は多くの投資をしているのです。
――自動車メーカー以外に、IT企業も自動運転車の開発を進めています。これをどう見ていますか。
ノイナー:IT企業の役割とは、ある技術を最前線の領域まで推し進めていくことだと私は理解しています。そして、それはわれわれ自動車メーカーにとっても有効なことだと考えています。今、交通渋滞の問題が深刻になっていますが、それに対してIT企業に新しいイノベーションを起こしてもらい、その技術をクルマに取り込むことができれば、それはクルマのユーザーにとっても有効です。自動車産業は長い歴史を持っており、複雑な構造を持つ自動車というものを、安全に進化させて世の中に提供してきました。全体的なシステムを作るうえで、経験や技術、そして知見もあります。IT企業にはIT企業の役割があり、われわれ自動車メーカーには自動車メーカーの役割があり、それぞれの役割を担っていくという意味では、とてもいい関係にあると思っています。
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ブランドの再定義が必要になる
――個人が自動車を所有しないというビジネスモデルを、自動車メーカー自身が推し進めていくことに危険性はないのでしょうか。
ノイナー:われわれは現在、自動車のハードウエアを売る企業と認識されていると思いますが、これからはそれだけではありません。先ほども申し上げましたが、ハードウエアだけでなくユーザー体験とサービスを組み合わせたものを提供する企業になっていくでしょう。自動車メーカーのビジネスモデルが根本から変わってきているのです。
――自動運転を推し進めていくと、自動車ブランド間の差別化が難しくなって、コモディティー化が進むのではないでしょうか。そこに対する懸念はありませんか。
ノイナー:おっしゃるとおり、ブランドについてはKPI(重要業績評価指標)が変わるために、現在のブランドとは違ったイメージのものになるでしょう。従来はクルマにとって馬力とか性能が重要でしたが、自動運転が始まれば快適性とか車内でどんな体験ができるかということの方がより重要になってくるはずです。お客さま自身のクルマに対する見方や求めるものが変わってくるのです。ですから、われわれはすべてのブランドに対し、このブランドは自動運転に対してどのような位置づけにすべきかとか、このブランドにとって自動運転の定義とはどのようなものだろうかということを、すでに検討し始めています。
(文=webCG 竹下元太郎/写真=webCG、VW、アウディ)
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竹下 元太郎
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