混戦を制したのは「ボルボXC60」!
「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の結果を受けて思うこと
2017.12.13
デイリーコラム
ボルボ車としては初の快挙
「日本カー・オブ・ザ・イヤー2017-2018」の栄冠は「ボルボXC60」の頭上に輝いた。60人の選考委員の投票による獲得点数は294点。2位となった「BMW 5シリーズセダン/ツーリング」の242点に、50点以上の差をつけての大賞獲得だった。
この結果には正直相当に驚いた。筆者の見立てでは、XC60の戴冠はまったく頭になかった。XC60と5シリーズのほか、最終選考の対象となった“10ベストカー”は以下の顔ぶれ。「スズキ・スイフト」「トヨタ・カムリ」「レクサスLC」「ホンダN-BOX/N-BOXカスタム」「マツダCX-5」「アルファ・ロメオ・ジュリア」「シトロエンC3」「フォルクスワーゲン・ティグアン」である。
これまでの日本カー・オブ・ザ・イヤーで、軽自動車が大賞を受賞したことは一度もない。また、輸入車を見ても「日本カー・オブ・ザ・イヤー2013-2014」で「フォルクスワーゲン・ゴルフ」がただ一度大賞を獲得したのみ。そんな過去の傾向を鑑みれば、スイフト、カムリ、CX-5、LCの4台が浮上するが、LCは高級車すぎるということで除外。それなら、現在日本で一番売れているクルマであるN-BOXに、軽自動車初の大賞獲得の目が出てくるのではないか。つまり、スイフト、カムリ、CX-5が本命でN-BOXが大穴。事前にそんな予想を立てていたのだ。
しかし、フタを開けてみれば、大賞がXC60、2位が5シリーズ、3位カムリ、4位スイフト、5位N-BOXという結果となった。ボルボの日本カー・オブ・ザ・イヤー獲得はもちろん初めてのこととなる。これにはたくさんの人が驚いたと思う。
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10点満点の獲得数ではカムリがトップ
ちなみに60人の選考委員の投票内容をチェックしてみると、また違った景色が見えてくる。選考委員による投票にはルールがある。持ち点は25点。それを5台に振り分け、ベストの1台には10点を与えるというものだ。つまり、60人の選考委員は必ず1台をベストとして投票している。そこで投票内容の中から10点満点をより多く獲得したクルマに注目すると、なんと1位はカムリだった。14人から10点満点を得ている。2位は11人のスイフト。3位は10人のN-BOX。そして4位に9人のXC60となる。仮に選考委員がベストの1位だけを投票していたら、カムリが受賞していたということになる。逆にXC60は幅広い選考委員から点数を得ており、XC60を0点としたのはわずかに6人だけ。「XC60がベスト! と推す人は、それほど多くなかったが、より多くの選考委員に受けた」というのが大賞獲得の理由といえる。
ボルボXC60は、日本市場で決してメジャーといえる存在ではない。2016年度のボルボの新車販売台数は1万5000台ほどと、市場全体からみればほんのわずかな数字だ。その少数派が大賞をとったことに対する批判もあるかもしれない。しかし、販売台数だけで賞が獲れるならば、自動車メディアを中心としたクルマの専門家たちがベストの1台を選ぶ必要はない。販売ランキングを見ればいい。そうではなく、毎年、数えきれないほどたくさんの新型車を試乗する選考委員がいいと思ったクルマがボルボXC60であったのだ。プロのお眼鏡にかなった一台がボルボXC60というわけ。知名度や販売台数ではなく、内容が高く評価されたクルマと言っていいだろう。
そして、今回ボルボXC60が大賞を受賞したことで、日本カー・オブ・ザ・イヤーにおける輸入車のプレゼンスはますます大きくなるのではないだろうか。
(文=鈴木ケンイチ/編集=藤沢 勝)
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鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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