ボルボXC60 B5 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
ボルボに乗れば風呂が沸く 2021.11.12 試乗記 Google搭載の新インフォテインメントシステムを採用した「ボルボXC60」が上陸。スマホと連動する従来のAndroid Autoとは、いったいどこが違うのか。IoT(Internet of Things)がクルマにもたらす可能性についても、思いを巡らせてみた。Googleアプリに移動機能が付いた?
ボルボXC60のマイナーチェンジの最注目ポイントがおもしろい。足まわりの変更でもなければパワートレインの刷新でもなく、情報と娯楽をつかさどるインフォテインメントシステムが、Googleの車載OSに変わったというのが最大のトピックなのだ。
「あれ、それって前からじゃん」と、筆者が勘違いしたのは、スマートフォンとクルマを連携させるAndroid Auto。そうじゃなくて、スマホがあろうがなかろうが、ボルボXC60のインフォテインメントシステムそれ自体が、Google Apps and Service(Googleアプリ/サービス)に変更されたのだ。
これでなにがどう変わるかというと、ひとことで言えば「OK、グーグル」と話しかけることで、カーナビ(もちろんGoogleマップ)の目的地設定から、YouTube MusicやSpotify(スポティファイ)での聴きたい音楽のセレクト、エアコンの温度設定やメッセージの送受信まで、音声操作できるようになる。
ボルボ・カー・ジャパン広報部によれば、「Googleアプリに移動機能が付いたようだ、と表現なさったジャーナリストの方もいらっしゃいます」とのことで、同業者ながらうまいことを言うもんだと感心する。ちなみに、ボルボXC60のほか、「V90」「V90クロスカントリー」「S90」が2022年モデルよりGoogleアプリ/サービスを搭載するという。
試乗インプレッションが「走る」「曲がる」「止まる」の評価ではなく、OSの使用インプレッションになるとはおもしろい時代になったものだと、しみじみしながら「XC60 B5 AWDインスクリプション」の運転席に乗り込む。
もうひとつおもしろいことがあって、それは音声認識システムGoogle Assistant(Googleアシスタント)はまだ日本語に対応しておらず、英語しか受け付けてくれないのだ。2022年の第1四半期に日本語に対応する予定だというけれど、ひと昔前の自動車メーカーだったらこの状態で日本に導入するなんて考えられなかったはずだ。
参考までに、Apple CarPlayに対応するのも2022年の第1四半期とのことで、人によっては拙速と呼ぶかもしれないこのスピード感が、クルマ離れしているというか、いまという時代の商品らしいというか、ボルボのゴン攻めの姿勢を表現しているというか、とにかく興味深い。
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車両の評価ポイントが変わる?
運転席に座って、Googleアプリ/サービスを起動する。前述したように日本語対応はしていないから、筆者の拙い英語で目的地を設定する。「Destination」と発音したつもりがわかってもらえなくて一瞬焦ったけれど、二度目は無事に理解してくれて、ホッとする。Googleアシスタントの日本語対応が完了すれば、目的地を設定したときにGoogleマップに載っている情報、たとえば定休日や営業時間なども案内してくれるようになるという。
アーロ・パークスという女性ミュージシャンの音楽を聴こうと思って、Googleに「Arlo Parks」をリクエストしてみる。けれども何回試しても「Auto Park」と表示され、フェニックスのスタバで3分くらい全然オーダーが通らず、親切な女性店員にメニューを指さし確認してもらってアイスのスターバックスラテを注文した恥ずかしい記憶がよみがえる。ハードルを下げて、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』をリクエストすると、YouTube Musicが立ち上がり、聞き慣れたイントロが聴こえてきた。
Bowers & Wilkinsのプレミアムサウンドオーディオシステムは電動パノラマガラスサンルーフとセットで42万円ナリのオプションで、さすが値段相応というか、すばらしく音がいい。『ホテル・カリフォルニア』が終わると、勝手にドゥービー・ブラザースの『リッスン・トゥ・ザ・ミュージック』がかかって、どうやらグーグル先生に“ドライバーはウエストコーストサウンドが好きな人”と認識されたようだ。
こうした機能を使って運転しながら思うのは、日常生活でごく当たり前になったスマホやインターネットとの暮らしが、車内でも地続きになったということだ。
ボルボ・カー・ジャパン広報部によれば、これからIoT(Internet of Things)に対応したプロダクトが増えると、帰宅途中にボルボを運転しながら、「OK、グーグル、お風呂を沸かしておいて」という暮らしがごく普通になるという。するとこうした試乗においても、パワートレインの滑らかさやハンドリングの評価だけではなく、いかにストレスなく風呂を沸かせるかに注目するようになるかもしれない。
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48Vマイルドハイブリッドの実力
Googleアプリ/サービスについては日本語対応してからまた試すとして、マイナーチェンジを受けたXC60 B5 AWDインスクリプションの変更点やドライブフィールについても記しておきたい。
デザインには少し手が入り、エクステリアではフロント、リアともにバンパーから下の意匠がすっきりとしたものになった。また、インテリアでは、従来はセンターコンソールのエンジンスタート/ストップスイッチそばにあったドライブモードのセレクターがなくなり、シンプルさが増した。ドライブモードは、タッチ式モニターでの操作に改められている。
試乗したXC60 B5 AWDインスクリプションは、2リッターの直列4気筒ガソリンターボエンジンと、48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインを備える。ゼロ発進から、エンジンスターターの役割も兼ねる小型モーターがエンジンをアシスト、滑らかに加速する。いかにも上質なパワートレインという印象を受けるのは、組み合わされる8段ATの変速がシームレスだという理由もある。
楽しいのは高速道路の合流で「クォーン」という気持ちのよい音と爽快な加速フィールを味わえること。こうした場面だと、8段ATは変速ショックがないというだけでなく、変速スピードが素早いという長所もあることがわかる。
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気になるのは日本語対応の出来
試乗車にはオプションのエアサスペンションが備わっていて、乗り心地は速度域を問わず快適だ。ソフトというよりも、明確な狙いを持って伸びたり縮んだりしているという印象のサスペンション。ふわんふわんするわけではなく悪路を乗り越える瞬間のショックを、足を縮めることで和らげつつ次の瞬間にはしっかりと足を踏ん張らせて、姿勢をフラットに保ってくれる。市街地程度のスピードだったら安楽に、高速巡航に入ると安心してハンドルを握ることができる。
ドライブモードを切り替えると、エアサス仕様はサスペンションの性格も切り替わる。スポーティーなモードに切り替えると、エンジンの好レスポンスとあいまって、想像していたよりはるかに敏しょうに走る。
この小気味よさは意外だった。XC60を選ぶ方がシャープなハンドリングやエンジンのレスポンスを第一の選択基準にするとは考えにくい。けれども、そうした操縦性を期待して購入した方も、きっと後悔はしないはずだ。
2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤーを、ボルボとして初めて受賞したXC60は、グローバルで見れば一番の売れ筋、日本でも「XC40」に次ぐ売れ行きを見せているという。クルマとしての素性のよさに加えて、Googleアプリ/サービスによる使い勝手の向上と、さらに進化を続ける。もちろん、日本語対応がしっかりなされていれば、という条件付きではあるけれど。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ボルボXC60 B5 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:250PS(184kW)/5400-5700rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1800-4800rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/3000rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105V/(後)235/55R19 105V(コンチネンタル・エココンタクト6)
燃費:12.1km/リッター(WLTCモード)
価格:749万円/テスト車=840万1650円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナグレーメタリック>(9万2000円)/電子制御4輪エアサスペンション+ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(31万円)/ラグジュアリーパッケージ<チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ、Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム[1100W、15スピーカー、サブウーハー付き]>(42万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<フロント&リアセット/スタンダード/工賃含む>(8万9650円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1161km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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