第536回:コンパクトSUV「アウディQ2」
ただいま欧州で絶好調!
2018.01.12
マッキナ あらモーダ!
意外なほどのスタートダッシュ
イタリアの路上において、発売直後から見かけるクルマはまれである。新型車、特に廉価なモデルは、いわゆる新古車がディーラーに並ぶのを多くのユーザーがじっと待つからだ。
そうした中、近年珍しく発売直後から頻繁に見かけるようになったクルマがある。アウディのコンパクトSUV「Q2」だ。欧州での販売開始は、2016年秋であった。
発売直後から目にするモデルの中には、企業が社員の通勤用に貸与する、いわゆるカンパニーカーがある。しかしQ2は商品の性格上、あまりそうした用途には向かない。実際、路上で窓越しにユーザーをのぞいてみても、個人ユースのムードが漂う人たちがほとんどだ。
2017年1~10月のヨーロッパにおけるQ2の販売台数(データはJATOダイナミクス調べ)を確認してみた。その数6万9484台。早くも「A3」「A4」そして「A1」に次ぐ好成績である。
イタリアやフランス市場向けのカタログを見ると、TFSI(ガソリンターボ)は1.0、1.4、2.0の3種、TDI(ディーゼルターボ)は1.6と2.0の2種が用意されている。TFSI、TDIとも2.0は、クワトロ(4WD)+Sトロニックの組み合わせとなる。クワトロ以外は6段マニュアルも選択可能だ。
イタリア仕様の場合、価格は1.0 TFSI+6段マニュアルの2万6250ユーロ(約354万円。付加価値税22%込み)からである。
目玉となる1リッターモデルの人気は?
イタリアではQ2の、どのバージョンに人気があるかを確認するため、中古車検索サイト『オートスカウト24』を開いてみた。
なぜならそうしたサイトには、本エッセイ第529回で紹介したような並行輸入業者も在庫車情報を掲載しているからだ。彼らは、人気がある仕様の新古車・中古車を重点的に仕入れては売っているのである。
答えは一発で、一番人気は「1.6 TDIのMT車」である。667台掲載されているうち実に92%にあたる616台がTDI、6割を超える447台がマニュアルトランスミッションだ。クワトロ仕様は約9%の61台にとどまる。
オートスカウト24では各国の在庫車を検索できるので、「ヨーロッパ」に検索範囲を拡大して調べてみた。すると5070台のQ2がリストアップされた。
クワトロ比率こそイタリアと同じ9%だが、TDIは2572台と約5割まで後退、マニュアル車の比率も58%にまで下がる。最近でこそ変化の兆しがみられるとはいえ、イタリア人のディーゼル+MT信仰は、いまだ他国に比べて根強い。
それよりも気になるのは、1.0 TFSIの少なさだ。イタリアにおける出品は3%ちょっとの25台。欧州全体に広げても12%だ。
もしボクが買うのだったらダウンサイジングターボの潮流に乗って、TFSI 1.0を試したいところである。自動車税も安いし。だがヨーロッパにおいて「2万ユーロ台後半のクルマで1リッター」というのは、技術志向の人を除き、理解されるのにもう少し時間を要するようだ。
プレミアムな「ポロ」?
Q2についてのプロの評価は、どの国の試乗インプレッションも似通っているので、ここはひとつ、インターネット上で見られる、Q2に対するヨーロッパの一般ユーザーの評価を見てみる。
イタリアの自動車サイトの書き込み欄では「『フォルクスワーゲン・ポロ』と同じプラットフォーム(MQB)とエンジンのクルマだと考えると、やはり高い」という見解が複数目につく。
価格はネックのひとつであるようで、フランスの“アウディスト”向けサイトでも「自身にとって5台目のアウディ。8カ月待ちでQ2の1.4 TFSIを手に入れた」というユーザーが、「さまざまなオプション価格が高額で、サイフに重くのしかかった」と書き込んでいる。
一方で好印象もつづられている。例えばイタリアでは、「ミニマリズムを感じさせるスタイルに好感」という意見を発見することができる。また前述の1.4 TFSIを購入したユーザーは「しなやかに回転するエンジン、接地性そして静粛性」を高く評価している。
Q2に関して、もうひとつ。ここ1年ヨーロッパ各地で、路上以外でQ2の姿をたびたび目にした場所といえば、ずばりレンタカー業者の広告である。世界的な大手チェーンではない。ローカル資本の店だ。
彼らの多くは、顧客のアイキャッチになるクルマを厳選したうえ、メーカーのカタログ写真を拝借してチラシに掲載してしまう。ここに紹介するスペイン・カタルーニャ地方のビーチタウンを拠点とする業者もしかりである。これもQ2人気のバロメーターといえる。長年の「フィアット500」のお株を奪ったかたちだ。
チラシの裏面を確認すると、Q2は“4×4カテゴリーのクルマ”として用意されていて、「さもなければ、『フォルクスワーゲン・ティグアン』(をレンタル)」となっている。
小規模と思われるこの店でQ2が当たる確率は2分の1か。ヨーロッパ各地の大空港で、かなりの確率でオペルが当たってしまう筆者である。もちろんティグアンでもいいのだが、実際に当たりにこだわって予約するとなったら、少なからずビビりそうだ。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第944回:こんな自動車生活は最後かもしれない ―ある修理工場で考えたこと― 2026.1.15 いつもお世話になっている“街のクルマ屋さん”で、「シトロエン・メアリ」をさかなにクルマ談議に花が咲く。そんな生活を楽しめるのも、今が最後かもしれない。クルマを取り巻く環境の変化に感じた一抹の寂しさを、イタリア在住の大矢アキオが語る。
-
第943回:スバルとマツダ、イタリアでの意外なステータス感 2026.1.8 日本では、数ある自動車メーカーのひとつといった感覚のスバルとマツダだが、実はイタリアでは、根強いファンを抱える“ひとつ上のブランド”となっていた! 現地在住の大矢アキオが、イタリアにおけるスバルとマツダのブランド力を語る。
-
第942回:「デメオ劇場」は続いていた! 前ルノーCEOの功績と近況 2025.12.25 長年にわたり欧州の自動車メーカーで辣腕(らつわん)を振るい、2025年9月に高級ブランドグループのCEOに転身したルカ・デメオ氏。読者諸氏のあいだでも親しまれていたであろう重鎮の近況を、ルノー時代の功績とともに、欧州在住の大矢アキオ氏が解説する。
-
第941回:イタルデザインが米企業の傘下に! トリノ激動の一年を振り返る 2025.12.18 デザイン開発会社のイタルデザインが、米IT企業の傘下に! 歴史ある企業やブランドの売却・買収に、フィアットによるミラフィオーリの改修開始と、2025年も大いに揺れ動いたトリノ。“自動車の街”の今と未来を、イタリア在住の大矢アキオが語る。
-
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達― 2025.12.11 イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。








