いよいよ開幕SUPER GT 2018
今シーズンはここに注目!
2018.04.06
デイリーコラム
F1王者バトンと小林可夢偉がフル参戦
4月を迎え、SUPER GTの開幕が近づいてきた。今季の開幕戦は4月7日、8日。岡山国際サーキットを舞台に、GT500クラス15台、GT300クラス29台、計44台がそれぞれのクラスチャンピオンを目指して戦う。
国内3大メーカーの激突や世界のGTマシンの競演で人気を呼ぶSUPER GTだが、今季はマシンよりも2人の元F1ドライバーのレギュラー参戦に国内外の視線が注がれている。
そのドライバーとは、ジェンソン・バトンと小林可夢偉。バトンはホンダのF1マシンにも乗り、2009年にF1ワールチャンピオンを獲得した世界のビッグネームだ。可夢偉は、2012年の日本GPで日本人最高位タイとなる決勝3位に入った男。昨年の第6戦鈴鹿1000kmに初のスポット参戦を済ませた2人だが、今年はついにシーズンのフル参戦が決定した(可夢偉はWEC<世界耐久選手権>出場で1戦欠場予定)。
昨年の鈴鹿戦は実質“ゲスト”だった彼らだが、今季はバトンがNo.100 RAYBRIG NSX-GTでホンダのエース山本尚貴とペアになり、可夢偉はNo.39 DENSO KOBELCO SARD LC500でF1優勝経験のあるヘイキ・コバライネンと組む。どちらも“勝てるチーム体制”だけに、早くも勝利のXデーを期待するメディアも多い。
しかし、F1の経験があるGTドライバーの先輩であり2016年王者のコバライネンも、1年目はハイスピードで50台近い2クラスのマシンが混走するSUPER GTの難しさ、そして大馬力のGT500マシンの扱いに悩んだ。それに、SUPER GTの歴戦の猛者がF1の看板にビビることもないだろう。世界も注目するビッグネームが、GT500でどんなバトルを見せてくれるのか? 開幕戦岡山が非常に楽しみだ。
今季もLC500勢が優位か? テストではNSX-GTも互角のタイム
さて、今年のGT500クラスを戦う3メーカーのマシンに目を向けてみよう。2017年はレギュレーション改定でダウンフォースが約25%ダウンする中、全車が新型車になった。レクサスはこれを機にLC500にモデルチェンジ。トヨタ流ともいえるドライバーやチーム首脳への徹底的なヒアリングや開発参加を実施し、新型車は“走りやすくて速い”マシンになった。結果、昨年の開幕戦は参戦した6台のLCでトップ6を独占。そのまま4連勝し、全8戦で5勝してチャンピオンマシンとなった。
今年もその速さは健在で、3月に岡山と富士で行われた公式テストではNo.6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィスト)がコースレコードを超えるタイムを記録。どのセッションでもLC500各車がタイム上位に少なからず食い込んでおり、今季もアドバンテージを持つと予想される。
しかし、岡山のテストではホンダNSX-GTもLC500勢と互角の速さを披露していた。中でもNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史)はLC500の6号車に迫るタイムで、一躍開幕戦岡山の優勝候補に名乗りを挙げた。ホンダはこの時点でシーズン前半用の新エンジン(規定で年間2基まで)を投入していないという。これが当たれば、今年の開幕戦はNSX-GTが上位独占するかもしれない。
昨年はわずか1勝に終わった日産GT-R。特にエンジンに問題を抱えたシーズン前半は苦戦を強いられた。それだけに今季はエンジンのみならず、空力の改善にもかなり力が入れられている。にもかかわらず、岡山のテストではNo.12 カルソニックIMPUL GT-R(佐々木大樹/ヤン・マーデンボロー)が1度セッションのトップを取ったものの、相対的にタイムは上がっていない。
が、思いのほか陣営の様子は明るい。それは原因が見えているから。大幅刷新ゆえに、まだセットアップが十分ではなかったのだ。実際、岡山から1週間後の富士のテストでは、No.24 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/高星明誠)が2日間総合トップタイムという速さを見せた。現在のSUPER GTはマシンの基本的な空力特性がシーズン中変更できないため、車種ごとにコースの得意不得意が顕著になるが、そういう意味でGT-Rはシーズンの戦略として“高速コース狙い”なのかもしれない。もちろん、テクニカルコースの開幕戦岡山を捨ててはいないだろうが、“タイトル奪還”が最大目標の日産だけに、開幕戦だけで一喜一憂すべきではないだろう。
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GT300開幕戦はニッポンの技術 vs ドイツのプライド!?
GT300クラスはコースごとに主役が変わるだけに、ここでは開幕戦に絞って見てみよう。
先の岡山のテストでは、No.25 HOPPY 86 MC(松井孝允/坪井 翔)とNo.2 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規)が両日のトップタイムを記録した。この2車種はマザーシャシーと呼ばれるキットのレーシングカーを使って「86」と「ロータス・エヴォーラ」に仕立てた、GT300マシンだ。近年はGT3と呼ばれる“改造できない”市販レーシングGTマシンが主流だが、テクニカルな岡山では、レーシングガレージがコースに合わせたチューンをできるJAF-GT300規定のマシン(マザーシャシー含む)が台頭している。
しかし、昨年の開幕戦岡山は、年間チャンピオンになったNo.0 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)とNo.65 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹/蒲生尚弥)が、決勝・予選でワンツーを獲得している。つまり、GT3規定マシンでもコーナリングに優れる車種なら岡山で勝負はできる。岡山テストではNo.21 Hitotsuyama Audi R8 LMS(リチャード・ライアン/富田竜一郎)も上位タイムを出しており、メルセデスAMG GT3の2台と共に優勝候補に挙げられている。
このほかに注目されるのは、日本で初戦となるホンダNSX GT3の2台だ。No.34 Modulo KENWOOD NSX GT3は、NSXで初のGT500王者になった道上 龍が5年ぶりに復帰してドライブ。そして、スーパーカー愛好集団“自動車冒険隊”で知られる木村武史のNo.777 CARGUY ADA NSX GT3がどう戦うかも見逃せない。
(文=古屋知幸/写真=GTA、webCG/編集=関 顕也)
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古屋 知幸
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