ホンダがBEV「スーパーONE」の情報を先行公開 「ブルドッグ」の再来といわれるその特徴は?
2026.02.26 デイリーコラム外装デザインは「シティ ターボII」がモチーフ
2026年中のデビューを予定する小型電気自動車(BEV)「ホンダ・スーパーONE」。先行情報は、すでにオフィシャルウェブサイトで公開されている(参照)。ひと目見て、このBEVは優等生的なキャラクターではなく、やんちゃな性格の持ち主であることがわかる。そして、ひと足早くデビューした軽自動車規格のBEV「N-ONE e:」の派生モデルであることも伝わってくる。
ホンダはかつてそうだったように、尖(とが)ったクルマを出していきたいのだという。軽自動車とミニバンとSUVだけのメーカーではないんだぞ、というわけだ。尖り具合で先行するのが2025年にデビューした「プレリュード」であり、スーパーONEもその部類に入る。N-ONE e:のような通常のラインナップが規定演技なら、スーパーONEは自由演技だと担当デザイナーは語っている。これからどんどん自由演技を披露する場面は増えていくはずで、本格的に先陣を切るのがスーパーONEというわけだ。
50代以上の人たちはスーパーONEを見て、1983年に登場した「シティ ターボII」を思い起こすことだろう。四角く張り出した前後のブリスターフェンダーとワイドトレッドが特徴だ。スーパーONEを見て「ブルドッグ」の愛称で親しまれたシティ ターボIIを連想したのは正解、というかデザイナーの思うつぼで、実際、スーパーONEのエクステリアはシティ ターボIIをモチーフにデザインされている。
シティ ターボIIをリアルタイムで知る50代にとっては懐かしさを感じ、その子供世代には新しく感じてもらうことを狙った。ちょうど、カセットテープやレコードをエモいと感じるような感覚で。
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パワーは「軽BEV+α」のレベル
ホンダのある技術者は、高校生の娘の男友達が家に遊びにきたとき、レースシミュレーターのゲームをやらせてみたという。運転免許取得前なので、実物のクルマを運転した経験はないし、先入観もない。高性能なBEVと、高出力なガソリンエンジンを積んだスポーツカーで遊ばせた後、「どっちが楽しかった?」と質問した。彼氏、いや男友達は迷わず、ガソリンエンジンを積んだスポーツカーと答えたという。
筆者が思うに、スーパーONEはガソリンエンジン車でスポーティーな走りをしたときに味わえるエッセンスを抽出し、それをBEVで再現したクルマである。少しばかりのスパイスを加えて。
N-ONE e:をベースにワイドボディーにしたのは、本来、ブルドッグに寄せるためではなくパフォーマンスを引き上げるためだ。いかにモーターの出力を上げたところで、タイヤの能力を超えた力を路面に伝えることはできない。だからまず、ワイドなタイヤが収まるようボディーをワイドにした(同時にトレッドを広げている)。タイヤサイズはN-ONE e:の155/65R14から185/55R15に変更している(諸元はいずれもランニングプロトタイプのもの。以下同)。タイヤの接地面積が増えたぶんだけ、グリップ力は上がる道理だ。
モーターの最高出力は未公表だが、軽自動車の枠から外れているので自主規制の64PS(47kW)に縛られることなく、パワーは引き上げられている。とはいえ、栃木のテストコースでランニングプロトタイプを少し運転させてもらった経験からいえば「軽BEV+α」のレベルだ。首が後ろにくの字に曲がりそうなほどの猛烈な加速は期待しないほうがいい。
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キモはエンジン車のような制御と雰囲気づくり
猛烈な加速はない代わりに、電動ゴーカートでも操っているかのようにスパッ、スパッと向きを変え、キビキビ動く。専門用語を用いてエラそうに表現すれば、ヨー応答が高い。ステアリング操舵に対する横Gの発生が間髪入れずといった印象だ。そして、踏ん張りが利く。ワイドなタイヤを装着しているので当然のことながら、軽自動車からイメージする以上に高いGを維持したままコーナーをクリアする。
しかしスーパーONEの真骨頂は有段変速機を組み合わせたガソリンエンジン車のような制御と雰囲気づくりだ。ステアリングの右スポーク部に設けられた「BOOST」ボタンを押すと、文字どおりスイッチが入る。車内のスピーカーからボロボロボロといったやんちゃな疑似エンジン音が流れて車内を満たし、アクセルペダルの動きに連動してエンジン車と同じように音が変化する。
変化するのはエンジンを再現した音だけではない。スーパーONEは仮想のエンジンに仮想の7段変速機を組み合わせた制御モデルを持っており、車速や車両挙動などの走行状態に応じてエンジン回転を上下させたり、変速したりする。疑似1速ではアクセルレスポンスを鋭く、疑似7速ではアクセルレスポンスを鈍くする凝りようだ。
定常走行時にアクセルを強く踏み込むと、モーターの制御によってショックを生み出し、キックダウンを再現する。また、マニュアルモードに切り替えて低速段を選択して固定し、アクセルを踏み抜くと回転が上昇して最後は頭打ちになり、ワンワンワンとフューエルカットが入った状態を音と振動で再現する。実際はモーターで走っているのだが、レスポンスがめっぽういいエンジン車を操っている感覚だ。
ガソリンエンジン車だからこそ実感可能な「操る楽しさ」は間違いなくあるが、レースシミュレーターのゲームで再現しても体感は可能だし、BEVでも再現できる。それを証明したのがスーパーONE。ブルドッグ似の小さなBEVが「エモいクルマ」として登場するのは間違いない。
(文=世良耕太/写真=本田技研工業、webCG/編集=櫻井健一)
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世良 耕太
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