クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

コンパクトSUVが人気を集める背景とは!?
ユーザーとメーカー、それぞれの視点から考える

2018.05.09 デイリーコラム 高山 正寛
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

5年前と比べて販売台数は“倍増”

確かに見かける機会が増えた。そして何よりも売れている。それが今回のお題に選んだスポーツユーティリティービークル(SUV)、その中でもチョイ小型のコンパクトSUVである。

国内におけるSUV人気は、数字の面からもホンモノである。自販連のデータによれば2017年の国内におけるSUVの販売台数は45万5804台、対前年比で121.7%を記録した。2013年の販売台数22万7532台から見ればなんとほぼ2倍! このご時世、5年前との比較とはいえ、販売台数を2倍に伸ばしている自動車のジャンルはほかにないだろう。実際、国産車だけではなく、輸入車の国内販売が20年ぶりに30万台を超えたのも、SUVの好調さが支えたという事実があるのだ。

国産勢では目下のところ「トヨタC-HR」が独走状態。C-HRの登場までこのカテゴリーでトップだった「ホンダ・ヴェゼル」もいったん落ちた販売台数をマイナーチェンジによって徐々に盛り返しつつある。「マツダCX-3」も毎年行われる改良により商品力をキープしているし、三菱は新型車「エクリプス クロス」を投入した。輸入車勢も、最近では「BMW X2」や「ボルボXC40」がデビュー、また「メルセデス・ベンツGLA」「アウディQ2」なども好調なセールスが伝えられている。

2018年4月に発売されたばかりのBMWの新型コンパクトSUV「X2」。クーペスタイルのボディーを持ち、BMWでは「スポーツアクティビティークーペ」と呼んでいる。
2018年4月に発売されたばかりのBMWの新型コンパクトSUV「X2」。クーペスタイルのボディーを持ち、BMWでは「スポーツアクティビティークーペ」と呼んでいる。拡大

立体駐車場に入るサイズがうけている

それではなぜこんなにコンパクトSUVが人気なのか? ユーザー側から見たメリットを考えてみる。SUVの定義は非常に幅広いが、セダンやハッチバックに比べると全高や最低地上高が高めに設定されるのが一般的。当然のことながら着座位置も高めとなるが、これが車内への乗り込みやすさにつながる。地上からシートのヒップポイントまでの高さが600mm~650mm前後あると「スッと腰を下ろすような感覚」で座ることができるのだ。昔ながらのオフロード4WDによじ登るように乗ったり、セダンやハッチバックのようにやや体を折り曲げて乗ったりするのに比べれば、負担は圧倒的に少ない。腰痛持ちの筆者にとってもこれはうれしいポイントだ。

これに伴う視界の良さも重要な要素だ。大型のSUVほどではないが、高めの視点によって「少し先」の様子がわかることで、運転に余裕ができる。車高が高くなると、車両によっては死角も発生しやすくなるが、昨今ではこれを車両に取り付けたカメラシステムやセンサー類によってカバーすることができる。

また意外と評価が高いのが、前述した余裕のある最低地上高である。セダンなどが約150mm前後なのに対し、SUVは200mm前後。この50mmの差、実はコンビニやスーパーなどの駐車場に入出庫する際に、車両の底をヒットしにくいというメリットがある。実際、こういった場所で“ガリガリ”という経験がある人も多いのではないだろうか。だからというわけではないが、「トヨタ・アクア クロスオーバー」や「フォルクスワーゲン・クロスポロ」(現在はカタログ落ち)のように、最低地上高を上げてSUVっぽく仕上げたクロスオーバーモデルもよく売れている。

そしてコンパクトSUVのメリットを最も感じるのが、立体駐車場の多くに入庫可能な「全高1550mm以下」をキープしている点である。昔ほどではないが、全高による入庫制限を行う立体駐車場はまだまだ多い。現在売れているコンパクトSUVの多くは最低地上高が高く、室内空間も広く、それでいて立体駐車場への入庫が可能。これにコンパクトボディーによる取り回しのしやすさなどが加わることで人気となっているのだ。

「アウディQ2」が日本で発売されたのは2017年6月のこと。デビュー当初から、全高を1550mm以下に抑えたことで立体駐車場が利用できることをうたい文句にしていた。
「アウディQ2」が日本で発売されたのは2017年6月のこと。デビュー当初から、全高を1550mm以下に抑えたことで立体駐車場が利用できることをうたい文句にしていた。拡大

同じプラットフォームでより多くの利益を生み出す

それではなぜ自動車メーカーはコンパクトSUVをこんなに多くリリースするのだろうか。もちろん「他のメーカーがやっているから」とか「今が旬だから」ということもあるだろうが、本質はそこではない。

昔ながらの強固なラダーフレームを使った本格的クロカン4WDとは違い、現在のSUVの多くはモノコックボディーを採用している。これが乗用車的な乗り心地の良さなどを実現しているわけだが、要は同クラスのコンパクトカーのプラットフォームをベースとすることで、開発期間やコストを大きく削減することができるのだ。

すべてがイコールではないとはいえ、マツダCX-3は「デミオ」と、ホンダ・ヴェゼルは「フィット」と、というようにプラットフォームなどを共有している。またC-HRのように「プリウス」から始まった「TNGA」プラットフォームによって、開発を最適化するというのもトレンドのひとつといえるだろう。

クルマの見た目の印象も大きく立派に映る。少々安直な物言いかもしれないが、現在のコンパクトSUVは同クラスのコンパクトカーなどに比べ、デザインはもちろん、内装の素材や装備などにもお金がかかっている。ゆえに車両価格が高くなることは当然なのだが、結果としてメーカー側の利益はアップする。また上質な部品を使うことで、下取り時の価格を高めに維持できるといったメリットもある。

個人的には“SUVバブル?”と思わないでもないが、この勢いはまだまだ止まりそうにない。今の時代に求められる要素の“いいとこ取り”ができている、それがコンパクトSUVの立ち位置だと感じている。

(文=高山正寛/編集=藤沢 勝)

「ホンダ・ヴェゼル」は、コンパクトハッチバック「フィット」と同じ「グローバルスモールプラットフォーム」を採用する。スペックの似たグレード同士を比較すると、ヴェゼルのほうが60~70万円ほど高い値付けとなっている。
「ホンダ・ヴェゼル」は、コンパクトハッチバック「フィット」と同じ「グローバルスモールプラットフォーム」を採用する。スペックの似たグレード同士を比較すると、ヴェゼルのほうが60~70万円ほど高い値付けとなっている。拡大
デイリーコラムの新着記事
デイリーコラムの記事をもっとみる
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。