【F1 2018 続報】第5戦スペインGP「ハミルトン連勝の陰に」
2018.05.14 自動車ニュース![]() |
2018年5月13日、スペインのサーキット・デ・バルセロナ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。“第2の開幕戦”といわれる欧州初戦でチャンピオンチームが息を吹き返し、ルイス・ハミルトンが2連勝を飾ったが、その陰では2戦にわたるライバルの取りこぼしも……。
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若きマックスのスランプ
さかのぼること2年前のスペインGPは、史上最年少ウィナーが誕生した記念すべきレースとなった。勝者の名はマックス・フェルスタッペン。この週末にトロロッソからトップチームのレッドブルに昇格したばかりの彼は、セバスチャン・ベッテルが保持していた最年少優勝記録を2年以上縮める18歳227日で、誰もが渇望するポディウムの頂点に立った。
その後2年弱のうちにさらに2回の優勝を勝ち取り、将来のチャンピオン候補と目されるようになったフェルスタッペンは、今季に入りスランプに陥っていた。開幕戦オーストラリアGPではケビン・マグヌッセンのハースからポジションを奪還しようと焦ってスピンし6位。第2戦バーレーンGPでは予選でクラッシュ、追い上げ中にルイス・ハミルトンと接触しリタイアを喫した。続く第3戦中国GPではベッテルに体当たりした責任を問われ、ペナルティーで1つ順位を落とし5位。そして前戦アゼルバイジャンGP、チームメイトのダニエル・リカルドに度々勝負を挑んでは強引とも思える抜きっぷりでチームをひやひやさせ、最後には同士打ちで戦列を去るという最悪の結末を迎えてしまった。
レッドブルの弱点は予選での速さにあり、レースになればどうしても集団を抜け出さなければならなくなる。とはいえ、中国では先輩格の僚友リカルドが華麗なるオーバーテイクを次々と決め劇的優勝を飾っており、フェルスタッペンのドライビングの“あら”が余計に目立てしまった。
若干20歳ながらGPキャリア4年目を迎えたフェルスタッペン。チャンピオン争いへ絡みたいというはやる気持ちを鎮め、シーズンを通してしたたかに戦う術を学ぶ時がきているのかもしれない。果たして初優勝の地で挽回となったか……。
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メルセデス、今季初のフロントロー独占
フェラーリのベッテル2勝、レッドブルのリカルド1勝、そして前戦アゼルバイジャンで前年王者メルセデスのハミルトンがようやく1勝して迎えた第5戦スペインGPは、欧州初戦ということで例年通り各陣営が大小さまざまなアップデートを施したマシンを投入。冬のテストの舞台としても使われる、総合力が試されるバルセロナのコースは、さながら第2の開幕戦という様相を呈した。
そんな中、3回のフリー走行をいずれでもトップで終えたのはメルセデス勢。ベッテルの4戦連続ポールポジションを阻止したいシルバーアローは、予選でもそのペースを維持し、ハミルトンが開幕戦以来となる今季2回目、スペインでは3年連続、通算74回目のポール奪取に成功した。0.040秒と僅差で2番手につけたのはチームメイトのバルテリ・ボッタス。メルセデスは今年初めてフロントローを独占することとなった。
ポールから遅れること0.132秒でベッテルが予選3位、僚友キミ・ライコネンは4位だった。3列目はレッドブルの2台が並び、フェルスタッペン5位、リカルド6位。両者の差はたったの1000分の2秒だった。
3強に次ぐポジションを得たのはハースのケビン・マグヌッセンで7位。ロメ・グロジャンのもう1台のハースも10位につけた。母国ファンの声援を受けたマクラーレンのフェルナンド・アロンソが8位、同郷のカルロス・サインツJr.もルノーを駆り9位に入った。
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ハミルトン首位キープ、ベッテルが2番手に
フロントローからの勝率89%。1991年から続くバルセロナでのスペインGPで勝つためには最前列が必須条件といってよく、メルセデスはそのアドバンテージを最大限に生かしたいところだった。
しかし、66周レースのスタートから数秒のうちに、早くもシルバーアローの1-2が崩れてしまう。トップを堅持したハミルトンの後ろでは、ボッタスのスリップストリームを使ってベッテルが2位に上がり、ボッタスは3位に落ちてしまった。
後続の集団では多重クラッシュが発生。グロジャンがコースを外れスピンした後、スロットルを開けっぱなしにして再びコースに戻ってきてしまい、ピエール・ガスリーのトロロッソ、ニコ・ヒュルケンベルグのルノーらを道連れにしてリタイアした。この結果、セーフティーカーが出動しコースクリアに数周を費やしたのだった。
7周目、ハミルトンを先頭に、2位ベッテル、3位ボッタス、4位ライコネン、5位フェルスタッペン、6位リカルドという順位でレース再開。前方がクリアなハミルトンはファステストラップを立て続けに更新しながらベッテルを引き離しにかかり、その後の10周で7秒以上のマージンを築き、この日の主導権を握ることになった。
18周目にピットへ飛び込んだのは2位ベッテルで、ソフトからミディアムタイヤに交換。翌周にはボッタスがミディアムタイヤへ換装するも、メルセデスはオーバーカットならず、再びベッテルの後ろにつくことになった。
25周目にフェラーリの一角が姿を消す。暫定2位走行中のライコネンがスローダウン、ピットへと戻ってきたものの再起ならず戦列を去ることとなった。
トップのハミルトンは26周目にピットストップを敢行。さらに34周目になるとリカルド、35周目にはフェルスタッペンがようやくピットに入った。タイヤ交換が一巡すると、1位ハミルトン、10秒後方に2位ベッテル、その1.5秒差で3位ボッタス。さらに4位フェルスタッペン、5位リカルドとレッドブル勢が続いた。
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ハミルトン完勝、ベッテルは2ストップで4位
40周目、エステバン・オコンのフォースインディアがパワーを失いコース脇にストップすると、バーチャルセーフティーカーの指示が出た。このタイミングで上位勢で唯一タイヤ交換に踏み切ったのがフェラーリだった。ベッテルは新しいミディアムタイヤを履き、トップから26秒後方の4位から再び上位を狙うことになったのだが、ここは“空力コース”のバルセロナ、前車を抜くのは至難の業だ。3位を走るフェルスタッペンは、前にいたウィリアムズと接触してフロントウイングの一部を壊していたが、ベッテルはフレッシュなタイヤをもってしてもレッドブルを攻略しきれずに終わった。
労せずして1-2を奪還したメルセデス勢だったが、2位ボッタスは古いタイヤでペースを上げられず、最終的にハミルトンは20秒もの大差をつけて2連勝を飾ることになった。
トップから26秒差の3位に入ったのはフェルスタッペン。手負いのマシンを手なずけ、1秒以内に迫ったベッテルを抑え切ることに成功した。4戦続いたふがいないレースに区切りをつける、今季初の表彰台となった。
“棚ぼた勝利”だったアゼルバイジャンとは違い、晴れやかな表情でスペインのポディウムにのぼったハミルトン。これでタイトル争いではランキング2位ベッテルに17点もの差をつけたことになる。
この17点差の陰には、2戦にわたるフェラーリの取りこぼしもあった。スペインでは2位ベッテルに2度目のタイヤ交換をさせたことが痛手となった。タイヤに不安を抱えていたことが2ストップにした理由というが、一方で同じようなタイミングでタイヤを替えていたボッタスは無事にゴールしている。さらに前戦においてもベッテルはオーバーテイクに失敗し4位に脱落しており、取れるポイントを失うレースが続いているといえる。
次の第6戦は、昨年フェラーリが1-2フィニッシュしたモナコGPだ。1年前のようなスクーデリアの反撃はなるのか。注目の決勝は5月27日に行われる。
(文=bg)