【F1 2018 続報】第7戦カナダGP「ベッテルのハットトリック」

2018.06.11 自動車ニュース
 編集 F1第7戦カナダGPを制したフェラーリのセバスチャン・ベッテル(写真右から2番目)、2位に入ったメルセデスのバルテリ・ボッタス(同左端)、3位でレースを終えたレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同右端)。(Photo=Red Bull Racing)
 編集 F1第7戦カナダGPを制したフェラーリのセバスチャン・ベッテル(写真右から2番目)、2位に入ったメルセデスのバルテリ・ボッタス(同左端)、3位でレースを終えたレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同右端)。(Photo=Red Bull Racing)拡大

2018年6月10日、カナダはモントリオールのサーキット・ジル・ビルヌーブで行われたF1世界選手権第7戦カナダGP。GPウイークエンドの始まりはレッドブルが猛威をふるうも、予選、決勝を通じて持ち直したフェラーリ&セバスチャン・ベッテルがレースを席巻した。

スタートでトップを守ったポールシッターのベッテル(写真先頭)。その後ろでは、一番やわらかいハイパーソフトタイヤを履いたフェルスタッペンがボッタスに並びかけるも抜けず。(Photo=Ferrari)
スタートでトップを守ったポールシッターのベッテル(写真先頭)。その後ろでは、一番やわらかいハイパーソフトタイヤを履いたフェルスタッペンがボッタスに並びかけるも抜けず。(Photo=Ferrari)拡大
金曜日にはペースが伸び悩んだフェラーリも、土曜日になるとスイートスポットを探り当て、セバスチャン・ベッテル(写真)は今季7戦して4度目のポールポジションを獲得。レースでも早々に盤石の態勢でリードを築き、今季3勝目、通算50勝目を挙げた。さらにチャンピオンシップでは、タイトルを争うルイス・ハミルトンに1点差をつけトップに返り咲いた。僚友キミ・ライコネンは5番グリッドから6位完走。(Photo=Ferrari)
金曜日にはペースが伸び悩んだフェラーリも、土曜日になるとスイートスポットを探り当て、セバスチャン・ベッテル(写真)は今季7戦して4度目のポールポジションを獲得。レースでも早々に盤石の態勢でリードを築き、今季3勝目、通算50勝目を挙げた。さらにチャンピオンシップでは、タイトルを争うルイス・ハミルトンに1点差をつけトップに返り咲いた。僚友キミ・ライコネンは5番グリッドから6位完走。(Photo=Ferrari)拡大
メルセデスは、品質に問題があるとの観点からパワーユニットを新型にせず、マイレージのかさんだ旧型でカナダGPを戦ったのだが、予選、決勝を通して苦戦を強いられた。ボッタス(写真)はわずかにベッテルにおよばず、0.093秒差で2番グリッド。スタートでフェルスタッペンを押さえ込み2位を守ったが、その上を目指すことはできず、今年4度目の2位フィニッシュ。(Photo=Mercedes)
メルセデスは、品質に問題があるとの観点からパワーユニットを新型にせず、マイレージのかさんだ旧型でカナダGPを戦ったのだが、予選、決勝を通して苦戦を強いられた。ボッタス(写真)はわずかにベッテルにおよばず、0.093秒差で2番グリッド。スタートでフェルスタッペンを押さえ込み2位を守ったが、その上を目指すことはできず、今年4度目の2位フィニッシュ。(Photo=Mercedes)拡大

「レッドブル・ホンダ」か「レッドブル・ルノー」か

モントリオールはセントローレンス川に浮かぶ人工島の公園周遊道を使ったサーキット・ジル・ビルヌーブは、名うてのパワーコースとして知られる。全長4.3kmと短めのトラックは60%でフルスロットルといわれ、散在する低速コーナーからの立ち上がりでトラクションも重視されるためだ。

このコース特性もあり、今季7戦目にしてパワーユニットメーカーがアップデート版を投入。中でも注目を集めたのがホンダとルノー、そして双方に熱い視線を注いでいたのがレッドブルだった。

来季のパワーユニットを決めかねているレッドブルは、2007年から続くルノーとの契約を延長するか、今シーズン姉妹チームのトロロッソに独占供給されているホンダを新たなパートナーにするかで悩んでいる。ルノーからは「早期決定を」と催促されながらも、レッドブルは候補に挙げている両陣営の改良具合を見てからと、態度を保留しているのだ。

マクラーレンとの受難の3年間を終え、今季トロロッソを新天地として挽回を図っているホンダにとっては、4連覇を達成したこともある強豪レッドブルとのタッグは極めて魅力的に見える。ホンダは、田辺豊治テクニカルディレクターの指揮の下、特に内燃機関たるICEを中心とした改良を実施し、ピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーの2台に新型を搭載してその実力をアピールしようとした。もちろんルノー陣営とて黙っているわけではなく、レッドブル、マクラーレン、そして本家ルノーチームにニューエンジンを載せて対抗した。

2つのパワーユニットメーカーによるプライドをかけた戦いに加えて、レッドブルにはダニエル・リカルドとの来季に向けた契約交渉という問題も残っている。リカルドは、前戦モナコGPでパワーロスに見舞われながらも見事キャリア7勝目を飾り、その評価をますます上げている。そんなリカルドをつなぎとめるためにも、2019年のパワーユニットは、単に“勝てるもの”ではなく、“勝ち続けられるもの”が是が非でも欲しいところである。

これまでの6戦でフェラーリ、メルセデス、レッドブルが2勝ずつ分け合うという混戦模様で始まった今シーズンのF1。カナダGPは、来季を見据えてのさまざまな思惑が交錯する中、幕を開けた。

今シーズンはミスやクラッシュが多く非難の的となっているレッドブルのフェルスタッペン(写真)。カナダではそうした批判の声を黙らせるパフォーマンスを披露することに。3回のフリー走行すべてでトップタイムをマークし、予選では3番手を奪い、そしてレースをきっちりと走り切り、3位表彰台を獲得した。チームメイトのダニエル・リカルドは4位フィニッシュ。(Photo=Red Bull Racing)
今シーズンはミスやクラッシュが多く非難の的となっているレッドブルのフェルスタッペン(写真)。カナダではそうした批判の声を黙らせるパフォーマンスを披露することに。3回のフリー走行すべてでトップタイムをマークし、予選では3番手を奪い、そしてレースをきっちりと走り切り、3位表彰台を獲得した。チームメイトのダニエル・リカルドは4位フィニッシュ。(Photo=Red Bull Racing)拡大

好調レッドブルを負かし、ベッテルが今季4回目のポール

モナコGP同様、フリー走行3回すべてで最速だったのはレッドブル。しかし今回はリカルドではなく、今年クラッシュやミスが多く非難の的となってきた若武者マックス・フェルスタッペンだった。ルノーの新しいパワーユニットに加え、モンテカルロと同じ最もやわらかい「ハイパーソフト」をはじめとするソフト寄りなタイヤとの相性も抜群だった。

とはいえ、好調レッドブル勢も予選に入るとライバルの追い上げにあうことに。トップ10グリッドを決めるQ3、フェラーリのセバスチャン・ベッテルがコースレコードを更新する会心の一発を決め、第4戦アゼルバイジャンGP以来となる今季4回目、通算54回目のポールポジションを獲得した。

メルセデス勢はバルテリ・ボッタスが0.093秒差で2位。最後に3位に上がったフェルスタッペンに蹴落とされるかたちで、ハミルトンは4位からのスタートとなった。キミ・ライコネン5位、ダニエル・リカルド6位と、3強が3列目までを占めた。

以下10位までは黄色とピンクのマシンが分け合い、ルノーはニコ・ヒュルケンベルグ7位、カルロス・サインツJr.9位、フォースインディア勢はエステバン・オコン8位、セルジオ・ペレス10位からレースに臨むこととなった。

カナダで過去6勝と、ミハエル・シューマッハーの持つ記録にあとひとつに迫っていたメルセデスのハミルトン(写真)は、予選でチームメイトのバルテリ・ボッタスにも先を越され4位と振るわず。レースでは、7戦目のパワーユニットにパワーダウンが発生し思うようなレースができなかった。終盤リカルドを1秒以下に追い詰めるも抜けず5位。チャンピオンシップでもベッテルに1点先行を許したが、「もっとポイントを失っていたかもしれないんだから、完走できただけとてもうれしい」とポジティブにレースを振り返っていた。(Photo=Mercedes)
カナダで過去6勝と、ミハエル・シューマッハーの持つ記録にあとひとつに迫っていたメルセデスのハミルトン(写真)は、予選でチームメイトのバルテリ・ボッタスにも先を越され4位と振るわず。レースでは、7戦目のパワーユニットにパワーダウンが発生し思うようなレースができなかった。終盤リカルドを1秒以下に追い詰めるも抜けず5位。チャンピオンシップでもベッテルに1点先行を許したが、「もっとポイントを失っていたかもしれないんだから、完走できただけとてもうれしい」とポジティブにレースを振り返っていた。(Photo=Mercedes)拡大
パワーサーキットでの戦いを前に、ホンダは内燃機関たるICEを中心とした改良を実施し、トロロッソの2台ともに新型を搭載させて臨んだ。今季入賞1回とチームメイトの影に隠れがちだったブレンドン・ハートレーが予選で奮起しQ2突破の12位。しかしスタート間もなくして前を走っていたランス・ストロールのウィリアムズに乗り上げるようにしてクラッシュ、0周リタイアを喫した。もう1台を駆るピエール・ガスリー(写真)は、フリー走行3回目でパワーロスを生じたため、チームは旧型パワーユニットに急きょ変更。予選順位は16位ながら、決勝直前に新型に載せ替えたことで19番グリッドに降格。レースでは入賞圏手前の11位で完走した。ホンダの新型パワーユニットからは一定の成果を感じ取ったものの、結果に結びつけられず。(Photo=Toro Rosso)
 
パワーサーキットでの戦いを前に、ホンダは内燃機関たるICEを中心とした改良を実施し、トロロッソの2台ともに新型を搭載させて臨んだ。今季入賞1回とチームメイトの影に隠れがちだったブレンドン・ハートレーが予選で奮起しQ2突破の12位。しかしスタート間もなくして前を走っていたランス・ストロールのウィリアムズに乗り上げるようにしてクラッシュ、0周リタイアを喫した。もう1台を駆るピエール・ガスリー(写真)は、フリー走行3回目でパワーロスを生じたため、チームは旧型パワーユニットに急きょ変更。予選順位は16位ながら、決勝直前に新型に載せ替えたことで19番グリッドに降格。レースでは入賞圏手前の11位で完走した。ホンダの新型パワーユニットからは一定の成果を感じ取ったものの、結果に結びつけられず。(Photo=Toro Rosso)
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ハートレーがクラッシュ、ベッテルは最速タイムで逃げる

グリッド上位6台では、レッドブルが一番やわらかいハイパーソフト、その他は1段硬めのウルトラソフトタイヤを履き、70周レースをスタート。そのレッドブルの2台の蹴り出しがよく、フェルスタッペンは2位ボッタスに一瞬並びかけるも抜けず3位のまま、リカルドはライコネンをかわし5位に上がった。

後続では、ランス・ストロールのウィリアムズに行く手を阻まれ、ブレンドン・ハートレーのトロロッソが乗り上げるかたちで2台がクラッシュ。新型パワーユニットでの入賞をもくろんでいたトロロッソ・ホンダは早々に1台を失い、レースはセーフティーカーでしばしの徐行を余儀なくされた。

5周目、1位ベッテル、2位ボッタス、3位フェルスタッペン、4位ハミルトン、5位リカルド、6位ライコネンという順位でレース再開。すると首位ベッテルはファステストラップを更新しながらリードタイムを着実に伸ばしはじめ、次の5周で2位ボッタスに3.5秒の差をつけた。この日のベッテルには安定した速さがあり、またボッタスには戦える武器がなかった。

スタートタイヤにハイパーソフトを選んだレッドブルは、17周目にフェルスタッペン、翌周リカルドをピットに呼び、今回一番硬めのスーパーソフトを与えてコースに戻した。フェルスタッペンと同時にピットインしたのは、ロングランも可能なウルトラソフトを装着していたハミルトン。メルセデスは、パワーロスを感じていたハミルトンに早めのストップを行う判断を下したのだが、このピット作業でリカルドに先行を許してしまった。

一方、1位ベッテル、2位ボッタス、そして3位を走るライコネンは第1スティントをさらに延ばし、折り返し間近の33周目にライコネン、37周目にボッタス、38周にはベッテルがそれぞれ新しいスーパーソフトタイヤを装着しゴールを目指すこととなった。

史上4人目となるGP参戦300戦目を迎えたフェルナンド・アロンソ(写真)。予選ではカナダに持ち込まれた新型ルノーパワーユニットをもってしてもQ2どまりで、今季一番後ろの14番グリッド。決勝では入賞目前の11位を走行するも、42周目にエキゾーストトラブルでスローダウン、ピットにてリタイアし、節目のレースで結果が得られなかった。なおアロンソとマクラーレンの契約は今年限り。マクラーレンは来年から米インディカーシリーズへの参戦を検討しているといわれており、インディ500制覇をもくろむアロンソがドライブするのではとの見方も出ている。(Photo=McLaren)
史上4人目となるGP参戦300戦目を迎えたフェルナンド・アロンソ(写真)。予選ではカナダに持ち込まれた新型ルノーパワーユニットをもってしてもQ2どまりで、今季一番後ろの14番グリッド。決勝では入賞目前の11位を走行するも、42周目にエキゾーストトラブルでスローダウン、ピットにてリタイアし、節目のレースで結果が得られなかった。なおアロンソとマクラーレンの契約は今年限り。マクラーレンは来年から米インディカーシリーズへの参戦を検討しているといわれており、インディ500制覇をもくろむアロンソがドライブするのではとの見方も出ている。(Photo=McLaren)拡大
セントローレンス川の人工島にあるサーキットではおなじみの「イカダレース」。各チームに加えFIA(国際自動車連盟)やピレリも参戦し、今年も白熱した戦いが繰り広げられた。各陣営には同じキットが配られ、30分以内に独自の“マシン”を完成させなければならないルール。本物のレース同様、FIAのチャーリー・ホワイティングがスターターを務めた真剣勝負は、2017年の覇者マクラーレンが3位、チームF1が2位、そしてウィリアムズが映えある栄冠を手に。歓声と笑いがたえないモントリオールの土曜日のひと時だった。(Photo=Toro Rosso)
セントローレンス川の人工島にあるサーキットではおなじみの「イカダレース」。各チームに加えFIA(国際自動車連盟)やピレリも参戦し、今年も白熱した戦いが繰り広げられた。各陣営には同じキットが配られ、30分以内に独自の“マシン”を完成させなければならないルール。本物のレース同様、FIAのチャーリー・ホワイティングがスターターを務めた真剣勝負は、2017年の覇者マクラーレンが3位、チームF1が2位、そしてウィリアムズが映えある栄冠を手に。歓声と笑いがたえないモントリオールの土曜日のひと時だった。(Photo=Toro Rosso)拡大

ゴール前のハプニング、ベッテルは完勝でハットトリック

タイヤ交換が一巡すると、1位ベッテル、5.5秒差で2位ボッタス、さらに5秒開けて3位フェルスタッペン、トップから14秒離れて4位リカルド、同17秒で5位ハミルトン。以降は、ボッタスが周回遅れの処理で一瞬コース外にタイヤを落とし、またハミルトンが4位リカルドに肉薄することがあったものの、コース上で特筆するような出来事は起こらなかった。

いや、“コースの上”では、めずらしいハプニングがあった。コントロールラインを見下ろす場所で、カナダ出身のモデル、ウィニー・ハーロウが予定より早めにチェッカードフラッグを振ってしまい、レースリザルトは70周より2周短い68周で確定されたのだ。

そんな珍事にも振り回されることなく、ベッテルは2連勝を飾った4月の第2戦バーレーンGP以来となる今季3回目の勝利を手にした。ポールから全ラップをリードしての、まさに完勝だった。フェラーリにとっては、2004年のミハエル・シューマッハー以来となるカナダでの優勝。この国の英雄であるジル・ビルヌーブが、モントリオールでの初GPでフェラーリを駆り初優勝を遂げてから40年目ということもあり、スクーデリアにとっては格別の1勝となったはずである。

タイトルを争うハミルトンがトップから21秒遅れの5位に終わったことで、ベッテルはそれまであった14点差をひっくり返しチャンピオンシップリーダーの座に返り咲いた。

「今日のようなレースができるなんて信じられない。フェラーリファンは今夜派手に騒ぐだろうよ」と、今年誰よりも先にハットトリックを達成したベッテルはご満悦の様子。しかしハミルトンに対するリードはわずか1点。史上最多21レースで争われるシーズンは、ようやく3分の1を消化したところだ。3強による栄冠の争奪戦は、これからも続いていくはずである。

次の第8戦は、2008年以来10年ぶりの開催となるフランスGP。決勝は6月24日に行われる。

(文=bg)

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