【F1 2018 続報】第14戦イタリアGP「フェラーリの詰めの甘さ」

2018.09.03 自動車ニュース bg
F1第14戦イタリアGPのスタートシーン。フェラーリ駆るポールシッターのキミ・ライコネン(写真先頭中央)を先頭に、ターン1のシケインへ。(Photo=Ferrari)
F1第14戦イタリアGPのスタートシーン。フェラーリ駆るポールシッターのキミ・ライコネン(写真先頭中央)を先頭に、ターン1のシケインへ。(Photo=Ferrari)拡大

2018年9月2日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第14戦イタリアGP。地元で18年ぶりにフロントローを独占したフェラーリだったが、レースになると詰めの甘さを露呈することになり、巧みなチーム作戦に打って出たメルセデスに敗北するのだった。

「エキサイティングなセッションだったね!」とは、予選後のルイス・ハミルトン(写真)のコメント。フェラーリの2台と激しいポール争いを繰り広げ、一時はトップタイムを記録したが、赤いマシンの“最後のひと押し”に3番手に終わった。しかし「絶対に諦めなかった」(ハミルトン)というレースでは、オープニングラップでセバスチャン・ベッテルと接触しながらも2位に上がり、その後はトップのライコネンの1秒以内を走行し続け、ゴールまで残り8周という時点で見事1位の座を勝ち取った。これでベッテルとの間にあった17点のポイント差を30点にまで拡大。メルセデスが不得意としていた次戦シンガポールGPに、今季最大のギャップをつけて臨むことができる。(Photo=Mercedes)
「エキサイティングなセッションだったね!」とは、予選後のルイス・ハミルトン(写真)のコメント。フェラーリの2台と激しいポール争いを繰り広げ、一時はトップタイムを記録したが、赤いマシンの“最後のひと押し”に3番手に終わった。しかし「絶対に諦めなかった」(ハミルトン)というレースでは、オープニングラップでセバスチャン・ベッテルと接触しながらも2位に上がり、その後はトップのライコネンの1秒以内を走行し続け、ゴールまで残り8周という時点で見事1位の座を勝ち取った。これでベッテルとの間にあった17点のポイント差を30点にまで拡大。メルセデスが不得意としていた次戦シンガポールGPに、今季最大のギャップをつけて臨むことができる。(Photo=Mercedes)拡大
予選で僚友ベッテルのスリップストリームをうまく生かし、昨年5月のモナコGP以来となる通算18回目のポールポジションを獲得したフェラーリのライコネン(写真)。平均時速263.587km/hはF1史上最速ラップ。2004年に、BMW製3リッターV10エンジンを搭載するウィリアムズでファン・パブロ・モントーヤが記録したレコードを、1.6リッターV6ターボ ハイブリッドで打ち破った瞬間だった。5年ぶり、フェラーリ復帰後初優勝を目指したレースでは、序盤こそトップを守っていたものの、ライバルのハミルトンを突き放すことはできず。メルセデスの巧みな作戦にも引っかかり、ハミルトンにオーバーテイクを許して2位。マシンの速さがあっただけに、悔しさ残るキャリア100回目のポディウムとなった。(Photo=Ferrari)
予選で僚友ベッテルのスリップストリームをうまく生かし、昨年5月のモナコGP以来となる通算18回目のポールポジションを獲得したフェラーリのライコネン(写真)。平均時速263.587km/hはF1史上最速ラップ。2004年に、BMW製3リッターV10エンジンを搭載するウィリアムズでファン・パブロ・モントーヤが記録したレコードを、1.6リッターV6ターボ ハイブリッドで打ち破った瞬間だった。5年ぶり、フェラーリ復帰後初優勝を目指したレースでは、序盤こそトップを守っていたものの、ライバルのハミルトンを突き放すことはできず。メルセデスの巧みな作戦にも引っかかり、ハミルトンにオーバーテイクを許して2位。マシンの速さがあっただけに、悔しさ残るキャリア100回目のポディウムとなった。(Photo=Ferrari)拡大

常勝軍団に黄色信号?

2014年にV6ターボ ハイブリッド規定が始まって以来、ここまでメルセデスが追い詰められたのは初めてかもしれない。過去4年間の79戦で63勝を記録したシルバーアローが、前戦ベルギーGPで跳ね馬の軍勢に力で負けたのだ。

2番グリッドからオープニングラップでトップを奪ったフェラーリのセバスチャン・ベッテル。鋭角のターン1から名物コーナー「オールージュ」を駆け抜けると、ポールシッターのルイス・ハミルトンの真後ろにつけ、長いストレートで鮮やかにメルセデスをぶち抜いた。2番手に落ちたハミルトンは、その後ベッテルにジワジワと差を広げられ完敗。フェラーリは、これまでメルセデスが得意としてきたパワーサーキットで、ライバルに打ち勝った。

「われわれは強いチームだが、足りていない部分が多くある」と敗北を認めたのは、メルセデス率いるトト・ウォルフ。フェラーリのパワーユニットは、メルセデスのそれを抜き、いまやGP随一の強心臓にまで上り詰めた。カナダGPイギリスGP、そしてベルギーGPと、今季中盤のパワーコースでベッテルが勝利をおさめているのはその証左といえる。また、パワーがものをいうストレートスピードのみならず、コーナーからの立ち上がりで重要になるトラクション、さらにはタイヤへの過大な負荷といった面でも、メルセデスのパフォーマンスが劣っているとウォルフは見ていた。

メルセデスにとって、ベルギーGPから間髪入れずに行われるイタリアGPは、さらに分が悪そうなレースになると思われた。1922年に完成した世界で3番目に古い伝統のコース、モンツァは、楕円(だえん)を縦横に2つ組み合わせ、直線を高速コーナーとシケインでつなげたような超ハイスピードサーキットで、実に70%がフルスロットル区間といわれている。昨季はこのフェラーリの本拠地でメルセデスが1-2を決めたが、ここで勝つためには、今季メルセデスに足りないとされる各要素が必要とされ、つまりフェラーリこそ優勝最有力候補と目されていたのだ。

チャンピオンシップでは、首位ハミルトンがベッテルを17点引き離し、メルセデスがフェラーリに15点差をつけている状況だったが、流れは真逆の方向に進みつつあった。実際、フェラーリ優勢の流れは予選で最高潮を迎えることとなったのだが、レースになると、敵地でメルセデスが巧みなチーム作戦を展開するのだった。

金曜、土曜とハミルトンの陰に隠れがちだったメルセデスのバルテリ・ボッタス(写真)。予選では前車のスリップストリームを使えず、チームメイトから0.35秒遅れて4番手となるも、レースではハミルトンの頼もしいサポート役となった。第1スティントを伸ばし、その間ライコネンの前で走り続けたことで、2位ハミルトンとライコネンのギャップを縮めることに成功。大役を果たした後も、レッドブルのマックス・フェルスタッペンと激しい3位争いを繰り広げた。両車は接触するも、その後フェルスタッペンに5秒加算のペナルティーが下され、結果3位表彰台。(Photo=Mercedes)
金曜、土曜とハミルトンの陰に隠れがちだったメルセデスのバルテリ・ボッタス(写真)。予選では前車のスリップストリームを使えず、チームメイトから0.35秒遅れて4番手となるも、レースではハミルトンの頼もしいサポート役となった。第1スティントを伸ばし、その間ライコネンの前で走り続けたことで、2位ハミルトンとライコネンのギャップを縮めることに成功。大役を果たした後も、レッドブルのマックス・フェルスタッペンと激しい3位争いを繰り広げた。両車は接触するも、その後フェルスタッペンに5秒加算のペナルティーが下され、結果3位表彰台。(Photo=Mercedes)拡大
2010年のフェルナンド・アロンソ以来のポール、そして地元イタリアGPで18年ぶりとなるフロントロー独占に沸いたフェラーリ。しかし予選2位に終わったベッテル(写真)は、チームに無線で「後で話そう」と不満げな口ぶり。その理由については詳しく語らなかったが、1周をうまくまとめられなかったことは事実として認めていた。気を取り直して臨んだ決勝では、オープニングラップで最大のライバルであるハミルトンに不用意にスペースを空けてしまい両車接触、スピンして大きく後退した。セーフティーカー中に新しいフロントウイングとタイヤを与えられ、挽回の旅へ出るも、4位がやっと。宿敵ハミルトンとのポイント差は17点から30点に開いてしまった。(Photo=Ferrari)
2010年のフェルナンド・アロンソ以来のポール、そして地元イタリアGPで18年ぶりとなるフロントロー独占に沸いたフェラーリ。しかし予選2位に終わったベッテル(写真)は、チームに無線で「後で話そう」と不満げな口ぶり。その理由については詳しく語らなかったが、1周をうまくまとめられなかったことは事実として認めていた。気を取り直して臨んだ決勝では、オープニングラップで最大のライバルであるハミルトンに不用意にスペースを空けてしまい両車接触、スピンして大きく後退した。セーフティーカー中に新しいフロントウイングとタイヤを与えられ、挽回の旅へ出るも、4位がやっと。宿敵ハミルトンとのポイント差は17点から30点に開いてしまった。(Photo=Ferrari)拡大

ライコネンが史上最速ラップでポール、フェラーリ最前列独占

雨がらみの最初のフリー走行を除けば、残る2回のプラクティスでトップタイムをマークしたのはベッテル。予選Q1でベッテル、キミ・ライコネンのフェラーリ1-2、それがQ2になるとベッテル、ライコネンの間にハミルトンが割って入り、メルセデスも肉薄してきた。

そしてトップ10グリッドを決めるQ3は、各車スリップストリームを使っての手に汗握る接戦に。最初のアタックで最速だったのはハミルトンで、2位ライコネンとの差はわずか0.069秒。3位にはベッテルがつけた。三つどもえのポール争いは、ハミルトン、ベッテル、ライコネンの順番での最後の計測がスタート。それぞれがタイムアップを果たす中、ベッテルに引っ張られたことも奏功したライコネンが最速でセッションを終えることとなった。ライコネンは、2017年のモナコGP以来となる自身通算18回目、モンツァでは12年ぶりとなるポールポジションを獲得。平均時速263.587km/hは、2004年にウィリアムズBMW駆るファン・パブロ・モントーヤが記録した史上最速ラップを更新する、圧巻の速さとなった。さらに0.161秒遅れでベッテルが2位で予選を終えたことで、フェラーリは2000年以来となる地元でのフロントロー独占に成功。サーキットに詰めかけた大勢のフェラーリファンは、赤い2台のマシンに大歓声を送ったのだった。

敗れたメルセデスはハミルトン3位、バルテリ・ボッタス4位と2列目。3強の3番目、レッドブルは、マックス・フェルスタッペンが5位、ダニエル・リカルドはパワーユニット交換の降格ペナルティーでQ2でセッションをやめ、19番グリッドからのスタートとなった。ハースのロメ・グロジャン6位、ルノーのカルロス・サインツJr.7位、レーシングポイント・フォースインディアのエステバン・オコン8位ときて、トロロッソのピエール・ガスリーがハンガリーGP以来となる今年4度目のQ3進出で9位につけた。そしてウィリアムズのランス・ストロールが今季初の予選トップ10入りを果たし、10番グリッドからレースに臨むこととなった。

パワーサーキットのモンツァで苦戦することが予想されたレッドブル勢。ルノーの最新型パワーユニット「スペックC」をもってしても、予選で5位につけたフェルスタッペン(写真)はポールタイムから1.496秒も後れを取った。レースでは、持ち前のスタートダッシュで瞬く間に3位に上がるも、これまた生来の気の強さからか、終盤にボッタスと接触、そのペナルティーでリザルトに5秒が加算され、ボッタス、ベッテルに次ぐ5位となった。なおチームメイトのダニエル・リカルドは、パワーユニット交換で予選はQ1のみを走り、19番グリッドからスタート。レースでは24周目にマシンから白煙を上げリタイアを喫した。(Photo=Red Bull Racing)
パワーサーキットのモンツァで苦戦することが予想されたレッドブル勢。ルノーの最新型パワーユニット「スペックC」をもってしても、予選で5位につけたフェルスタッペン(写真)はポールタイムから1.496秒も後れを取った。レースでは、持ち前のスタートダッシュで瞬く間に3位に上がるも、これまた生来の気の強さからか、終盤にボッタスと接触、そのペナルティーでリザルトに5秒が加算され、ボッタス、ベッテルに次ぐ5位となった。なおチームメイトのダニエル・リカルドは、パワーユニット交換で予選はQ1のみを走り、19番グリッドからスタート。レースでは24周目にマシンから白煙を上げリタイアを喫した。(Photo=Red Bull Racing)拡大
超ハイスピードコース、モンツァでもマクラーレンは劣勢を強いられた。リカルドやニコ・ヒュルケンベルグといったフロントランナーのグリッド降格ペナルティーにも助けられ、予選でフェルナンド・アロンソが13位につけるも、ストフェル・バンドールン(写真)は20位(他車ペナルティーで17番グリッド)。特に来季のシートが未確定なバンドールンは、母国開催の前戦ベルギーGPでも予選最後尾から15位完走といいところを見せられていなかっただけに奮起が期待された。レースではアロンソに早々にメカニカルトラブルが発生しリタイア。バンドールンは13位完走で入賞ならず。(Photo=McLaren)
超ハイスピードコース、モンツァでもマクラーレンは劣勢を強いられた。リカルドやニコ・ヒュルケンベルグといったフロントランナーのグリッド降格ペナルティーにも助けられ、予選でフェルナンド・アロンソが13位につけるも、ストフェル・バンドールン(写真)は20位(他車ペナルティーで17番グリッド)。特に来季のシートが未確定なバンドールンは、母国開催の前戦ベルギーGPでも予選最後尾から15位完走といいところを見せられていなかっただけに奮起が期待された。レースではアロンソに早々にメカニカルトラブルが発生しリタイア。バンドールンは13位完走で入賞ならず。(Photo=McLaren)拡大

ベッテル、ハミルトンとの接触で大きく後退

モンツァでのポール・トゥ・ウィン回数は過去18年で14回と多く、追い抜き困難な悪名高きモナコよりポールからの勝率は高い。そうなれば、2013年開幕戦以来のライコネンの勝利を期待したくもなったが、ふたを開けてみると、フェラーリの詰めの甘さが各所で露呈することとなった。

まずはオープニングラップでのベッテルのライン取りだ。53周レースのスタートでトップを守ったライコネン。その後ろでは、2位ベッテル、3位ハミルトンが軽く接触しながらターン1のシケインを抜けた。その後ベッテルは前方のライコネンを意識しすぎたか、続く第2シケイン手前で右側に不用意にスペースを作ってしまい、この間隙(かんげき)をハミルトンが突くことになる。両車は今度はしたたかに当たり、アウト側のベッテルはウイングを壊しスピン、最後尾まで順位を落とした。そしてもう一方のハミルトンは幸運にも無傷のまま2位に上がり、ライコネンを追うのだった。

ベッテルにとって不幸中の幸いだったのは、スタート後数秒でブレンドン・ハートレーのトロロッソがクラッシュしたことにより、セーフティーカーが入ったこと。各車徐行中にベッテルはピットに入り、新しいノーズとタイヤを与えられ、ダメージ最小化に向けて出直しを図った。

4周目、1位ライコネン、2位ハミルトン、3位フェルスタッペン、4位ボッタス、5位グロジャンの順でレース再開。ライコネンのスリップストリームを使ってハミルトンがターン1でトップを奪うと、今度はすかさずライコネンがその座を奪い返すという、白熱のトップ争いが繰り広げられた。その後も、先頭のライコネンに2位ハミルトンが1秒と開かず食らいつく展開が続き、トップ2台が3位フェルスタッペン以降を引き離していった。

後方から追い上げ中のベッテルは、7周目に15位、14周目に10位と次々と前車をオーバーテイク。しかしレース序盤にしてトップのライコネンから既に25秒も遅れており、優勝はもちろん表彰台もまだはるかかなただった。

トロロッソは、ピエール・ガスリー(写真)がハンガリーGP以来となる今年4度目のQ3進出で9番グリッド、予選18番手タイムだったブレンドン・ハートレーは他車ペナルティーの影響で16番グリッドからスタート。ハートレーはターン1を抜ける前に、バンドールンのマクラーレンとマーカス・エリクソンのザウバーに挟まれ行く手を失い接触、0周リタイア。ガスリーは、スタートでウィリアムズの2台に先行を許しポイント圏外に落ちてから上がってこれず、15位完走。(Photo=Toro Rosso)
トロロッソは、ピエール・ガスリー(写真)がハンガリーGP以来となる今年4度目のQ3進出で9番グリッド、予選18番手タイムだったブレンドン・ハートレーは他車ペナルティーの影響で16番グリッドからスタート。ハートレーはターン1を抜ける前に、バンドールンのマクラーレンとマーカス・エリクソンのザウバーに挟まれ行く手を失い接触、0周リタイア。ガスリーは、スタートでウィリアムズの2台に先行を許しポイント圏外に落ちてから上がってこれず、15位完走。(Photo=Toro Rosso)拡大
多くの観客が詰めかけたイタリアGPの週末、2019年の暫定カレンダーが公表。3月17日のオーストラリアGPで開幕、12月1日のアブダビGPで幕を閉じる全21戦が組まれている。2021年までの契約延長が発表された鈴鹿サーキットでの日本GPは、10月13日の予定。日本GPはコースのオーナーでもあるホンダが、また7月末のドイツGPはメルセデスが、それぞれのタイトルスポンサーとなることも明らかになった。カレンダーは今年10月のワールドモータースポーツカウンシルを経て正式決定となる。(Photo=Ferrari)
多くの観客が詰めかけたイタリアGPの週末、2019年の暫定カレンダーが公表。3月17日のオーストラリアGPで開幕、12月1日のアブダビGPで幕を閉じる全21戦が組まれている。2021年までの契約延長が発表された鈴鹿サーキットでの日本GPは、10月13日の予定。日本GPはコースのオーナーでもあるホンダが、また7月末のドイツGPはメルセデスが、それぞれのタイトルスポンサーとなることも明らかになった。カレンダーは今年10月のワールドモータースポーツカウンシルを経て正式決定となる。(Photo=Ferrari)拡大

「絶対に諦めなかった」ハミルトンの貫禄勝ち

メルセデスがフェラーリに陽動作戦を仕掛けたのはレース中盤のこと。21周目を前にメルセデスのピットクルーが動き出し、これに合わせてフェラーリのクルーもタイヤ交換に急きょ備えた。結局この時点でタイヤ交換に踏み切ったのはライコネンだけで、ハミルトンは29周目まで第1スティントを引っ張ることとなったのだが、1ストップが主流となった今回、これでライコネンはハミルトンより8周使い古したタイヤで優勝争いをしなければならなくなった。

メルセデスの作戦はなおも続き、まだタイヤ交換を行っていないボッタスが先頭を走り、2位ライコネンの鼻っ面を押さえるというチームプレーを展開し始めた。数周もすれば、ボッタス、ライコネンにハミルトンが追いつき、トップ3台が数珠つなぎに。大役を果たしたボッタスは、36周を終えようやくピットインし4位でコースに戻ると、今度は3位表彰台を目指してフェルスタッペンを追った。

1位ライコネンは、1秒以内という僅差でハミルトンを従え孤軍奮闘を続けていたが、ボッタスを抜きあぐねている間にリアタイヤにははっきりとしたブリスター(火ぶくれ)ができ、ペースを上げられないでいた。

決定的なチャンスが訪れたのは45周目。ターン1のシケインでライコネンを抜いたハミルトンがトップに立つと、メルセデスはフェラーリとのギャップを見る見る広げ始め、速さを失ったライコネンは最終的に9秒近く遅れて2位でチェッカードフラッグを受けた。

「絶対に諦めなかった」とは、残り8周で表彰台の頂点にまでのぼりつめたハミルトンの弁。ベルギーGP、そしてイタリアGP予選での大敗からの見事なカムバック、王者の貫禄勝ちだった。ベッテルが最終的に4位でゴールしたことにより、ハミルトンはポイント上のリードを17点から今季最大の30点にまで拡大させることができた。

また3位争い中にフェルスタッペンと接触したボッタスは、フェルスタッペンに5秒加算のペナルティーが言い渡されたことで3位に。ライコネンを間に挟んでの1-3フィニッシュで、メルセデスはコンストラクターズチャンピオンシップで2位フェラーリに25点のギャップを築いた。

「われわれには勝つだけの速さがあったが、最後までタイヤがもたなかった。この結果は受け入れがたい」

キャリア通算100回目のポディウムにのぼったライコネンのコメントこそ、フェラーリの詰めの甘さを裏付けていたといえよう。

5月のスペインGPから始まったヨーロッパラウンドを終えたF1。次戦シンガポールGP決勝は、9月16日に行われる。

(文=bg)

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