“愛”がキーワードの自動車リース!?
トヨタが提供する新サービス「KINTO」の可能性
2019.03.13
デイリーコラム
新車購入(?)のハードルを下げる新サービス
愛車購入は、一大決心だ。ほれ込んだ一台を手にするために、数百万円という大金を用意しなくてはならない。多くの人が清水の舞台から飛び降りる覚悟なのだから、その選択が「自分だけの仕様が選べる新車にしよう」となるのも当然のことだろう。
しかし、先進の安全運転支援機能などに代表されるクルマの高機能化は、価格上昇という現実をわれわれに突きつけてくる。そこでわれに返り、「やっぱり車検を通そう」とか「中古車で十分」「クルマはいらない。必要な時はレンタカーで……」なんて、新車購入以外の結論に至ることもよくある話だ。
そんな現実を打破すべく、トヨタから新たな自動車の買い方の提案が行われた。もっと新車購入のハードルを下げますよと……。それが“愛車サブスクリプションサービス”こと「KINTO」である。
そもそも「サブスクリプションとは何ぞや?」と疑問に思う人もいるだろう。これはユーザーが商品を一定期間、定額で利用できるサービスのこと。実はすでに身近なもので、多くの人が利用している。きっとあなたもその一人だ。例えば、定額音楽配信サービス「Spotify」や「Apple Music」、動画配信サービス「NETFLIX」や「Hulu」など……。ネット販売の「Amazon Prime」に含まれる「Amazon Music」や「Prime Video」も同様である。KINTOの場合は、3年間、定額で愛車を手にすることができるのだ。もっと簡単に言えば、すべてコミコミのリース契約となる。もっと簡単に言えば、3年間の全てコミコミのリース契約なのである。では、その詳細と特徴を見ていこう。
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トヨタ版とレクサス版で異なるサービス内容
KINTOでは、車両代、登録諸費用、任意保険、定期メンテナンス代、自動車税、故障修理費という、車両購入と維持に必要なすべての費用が月額料金に含まれる。大きなポイントは自動車保険。もちろん車両保険付きなのだが、免責額が5万円と低く、全年齢をカバー。しかも運転者は家族に限らず、友人でも適用されるという手厚い内容だ。他の一般的な自動車保険と比較すると、利用者の年齢が低いほどコスパが高まる計算だ。月ごとの走行距離も1500kmと長めに設定されているので、ほとんどの人は距離に応じた追加精算も不要となる。
では、デメリットはあるのだろうか。まず3年後に必ずクルマを返却しなくはならないことが大きい。そして現時点では、KINTO対象車の車種と仕様が限定的なことくらい。もちろん、返却を前提としているので、車内での喫煙やペットの同乗などの車両の査定に影響する使用は禁止されている。これらを想定するユーザーは、手を出さない方が無難だろう。また自動車保険についてだが、KINTO用の保険が組み合わされているので、現在契約中の自動車保険の等級を引き継ぐこともできない。ただし、契約中の保険会社に中断証明書を発行してもらうことで、最大10年間、等級をキープし、次の契約時に引き継ぐことができる。
KINTOにはふたつのプランが用意されている。トヨタ車を対象とした「KINTO ONE」とレクサス車を対象とした「KINTO SELECT」だ。KINTO ONEが1台のクルマを3年間乗り続けるのに対して、KINTO SELECTは、レクサス各車を半年ごとに乗り換えるぜいたくなもの。対象となるのはセダンの「IS」と「ES」、クーペの「RC」、SUVの「UX」と「NX」「RX」の全6車種。乗り換えは、すべてのモデルを1回ずつ選ぶ必要はなく、おかわりも可能。だからSUVに限定したセレクトやセダンもしくはクーペのみという選択もできる。
ただし、現時点では、対象はハイブリッド車のみ。しかもグレードとボディーカラーに加え、オプションまで含めて仕様がほぼ固定されているのが残念。人気を考慮したとはいえ、ほとんど1車種1タイプしかない。しかも月額は、なんと19万4400円。すべてコミコミとはいえ、3年間で699万8400円にものぼる。さすがレクサスというプライスだが、今年(2019年)2月のKINTO SELECTスタート直後に、数件の契約が報告されたというから驚く。リッチな顧客には、新車を小まめに乗り換えられる魅力的なサービスと受け止められているようだ。
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残価設定ローンと比べても決して高くない
一方で、多くの人が関心を持っているのは3月1日にスタートしたKINTO ONEだろう。対象車種は「プリウス」「カローラ スポーツ」「アルファード」「ヴェルファイア」「クラウン」の5車種。こちらもグレードが限定されるものの、売れ筋の上位3タイプを設定。オプションはパッケージ化されているが、人気アイテムから厳選した「スタンダードパッケージ」と「プレミアムパッケージ」の2種類が用意される。色については自由に選べるが、一部の色では月額料金に800~1500円のプラスが必要だ。
具体例として、プランの中で最も安価な「プリウスS」に注目してみると、フロアマットとETC2.0車載機を含むスタンダードパッケージで月額4万9788円。さらにT-connectナビ付きとなるプレミアムパッケージで5万3460円。3年間の総額は、プレミアムパッケージの場合で192万4560円となる。
さて、この金額はお得なのか? 試しにトヨタ公式サイトで見積もりシミュレーションを試みてみると、同条件のプリウスは、乗り出し価格が288万4187円(3月登録時点)となった。ざっくりとした計算だが、もし残価が半額残るとすると、年間維持費は約16万円に相当する。ここにフルカバーの自動車保険と税金、メンテナンス代が含まれると思うと、決して高くはない気がしてくる。
ただし、これは一括払いの現金購入と比べた場合の話。ここで比べるべきは、車両の一定額を据え置く残価設定ローンの方が適当だろう。あくまで一例だが、とあるトヨタ販売店の見積もりシミュレーションでは、金利が4.5%、残価が約103万円の条件となり、3年間の均等払いだと約5万7000円だった。もっと有利な条件もあるだろうが、KINTOの価格設定が決して高いとはいえないのは間違いない。さらにKINTOでは、DCM(車載通信機)を介したメンテナンス案内に加え、安全運転やエコ運転をポイント化するポイント制度も始める予定で、このポイントは定額料金の割引にも使えるそうだ。
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“明朗会計”を実現しただけでも大いに評価できる
とはいえ、やはりKINTOの魅力はすべてコミコミの定額でクルマを持てることだろう。車両費だけでは終わらない自動車購入と維持を明朗にしたことは大いに評価できる。しかも、新車ディーラーの担当者との駆け引きも不要。新車購入時のディーラー来店回数と時間が大幅に減少していることも踏まえると、この点でも利用者に喜ばれそうだ。
利用者はウェブでクルマを選んだ後に、指定の販売店で詳細を詰める。すると、愛車と担当ディーラーとの期間限定のお付き合いが始まる。3年後、利用者は必ず車両を返却しなくてはならないため、KINTOもしくは他の方法でのクルマの買い替えが必要となる(もちろん、クルマを降りるという選択もあるが)。その際には、ディーラーの手腕が問われるだろう。
現在、KINTOは東京地区を中心とした地域および店舗限定でサービスを提供。これから発生するだろうさまざまな課題を克服し、その内容に磨きをかけつつ順次全国に展開していく計画だ。検討段階ではあるが、車種や仕様などといった選択肢の拡大に加え、新たなサービス展開なども検討されている。その中にはスポーツモデルの「GR」シリーズを対象に、利用者のカスタマイズも許容するプランも含まれるという。現時点ではアイデアだが、これもサブスクリプションサービスの頭に“愛車”を掲げるトヨタならでは提案といえよう。
しかし、その愛車とは3年間限定のお付き合い。愛したクルマと3年後には必ず別れなければならないというのは、悩ましい点だ。価格を含め、条件付きでも気に入った愛車を買い取れるサービスがあってもよいのではないだろうか。KINTOの今後については“中古車版”も検討中というから、その派生として延長プランも期待したい。ともかく「愛」を掲げたことがKINTOの期待値を大きく上げているのは間違いない。愛をテーマとしたKINTOらしいサービスの登場を、今は胸を膨らませて待つことにしよう。
(文=大音安弘/写真=トヨタ自動車/編集=堀田剛資)
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大音 安弘
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