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べスパ・スプリント150ノッテ(MR/CVT)

ピュアスポーツ・スクーター 2019.04.09 試乗記 伊丹 孝裕 マットブラックでキメた、イタリア生まれのスクーター「べスパ・スプリント150 Notte(ノッテ)」。単なる小排気量のコミューターと思って乗ったならば、その切れ味鋭い走りに驚かされることだろう。

キモは骨格にあり

下は50ccから上は300ccまで、現在7車種を日本で展開するイタリアのスクーターブランドがベスパだ。中でもこの「スプリント150」は高いスポーツ性を発揮するモデルであり、コーナーを目の前にした時の動きはヒラヒラ、スパッと俊敏そのもの。イタリアンバイクの魅力とコーナリングの醍醐味(だいごみ)はほぼイコールのようなものだが、それはスクーターでも変わらないのである。

今回、試乗したモデルの正式名称はスプリント150ノッテという。「ノッテ」はイタリア語で「夜」を意味し、それにたがわずボディー、ホイール、マフラー、ミラーといったエクステリアの大部分がマットブラックに塗装された特別仕様車だ。が、それは本稿の主題ではない。外装色が黒であれ、赤であれ、その下地の車体にこそ語るべき点があったからだ。

スプリント150に限らず、ベスパが手がけるモデルはその量産第1号車から現行車に至るまで、例外なくスチールモノコックの車体が与えられている。モノコックのカタチがそのまま外装のデザインであり、そこにエンジンとサスペンション、タイヤを装着。応力の大半をモノコックで、つまり外装全体で吸収しているのがベスパである。

これは四輪の感覚からすれば取り立てて珍しい構造ではない。というより、むしろ一般的だ。逆に一般的なスクーターやバイクがどうなっているのかといえば、スチール、もしくはアルミによって成型されたフレームが背骨のように基本骨格を成し、そこにエンジンやサスペンションを締結。外装(ボディー)はそれらを包む薄皮であり、基本的に応力を受けることはない。その代わりにデザインや空力パーツの役割に徹しているのが普通である。

例えば、スクーターのフットボード。通常は足を乗せられる強度があればよく、樹脂で作られているものだが、ベスパはそれ自体が骨格の役割を果たしているため、足を置いただけでも頑強なことがわかる。走りだすとそれが一層強調され、余白やタメのようなものを一切感じさせず、乗り手の入力に対して間髪入れずに反応。車高が高いことも手伝って、冒頭に記したようにヒラヒラと動き、いざ車体をリーンさせようとするとスパッと倒れ込んでいく。

黒基調のカラーリングが特徴の「スプリント150ノッテ」。マットブラックのボディーカラーにクロームのエンブレムが映える。
黒基調のカラーリングが特徴の「スプリント150ノッテ」。マットブラックのボディーカラーにクロームのエンブレムが映える。拡大
ホイールもブラック。フロントブレーキにはABSが標準装着される。
ホイールもブラック。フロントブレーキにはABSが標準装着される。拡大
メーターパネルが黒地なのは、ベースモデルの「スプリント150」も同じ。液晶のインフォメーションディスプレイも備わる。
メーターパネルが黒地なのは、ベースモデルの「スプリント150」も同じ。液晶のインフォメーションディスプレイも備わる。拡大
シートの下には、フルサイズのヘルメットがひとつ収納できるスペースが確保される。フロントの小物入れにはUSBソケットも備わる。
シートの下には、フルサイズのヘルメットがひとつ収納できるスペースが確保される。フロントの小物入れにはUSBソケットも備わる。拡大
スチール製のモノコックボディーが特徴の「べスパ・スプリント150ノッテ」。走りだせば、すぐにボディー剛性の高さが実感できる。
スチール製のモノコックボディーが特徴の「べスパ・スプリント150ノッテ」。走りだせば、すぐにボディー剛性の高さが実感できる。拡大

数値以上のパフォーマンス

スポーツバイクに照らし合わせるなら、それはドゥカティの動きに近い。単にオシャレなシティーコミューターとして、つまり気軽な足代わりとしてスプリント150を選んだのなら、思わぬシャープさにかなり面食らうことになるはずだ。

そのシャープさこそ、スチールモノコックがもたらす車体剛性に起因するものである。こうした試乗インプレッションで多用される剛性や剛性感という言葉の意味。それを知りたければ、どんなスポーツバイクよりもベスパが分かりやすい。タイヤのグリップ力や衝撃吸収性はそれなりで、サスペンションのストローク量やダンピング性能もやはりそれなりであるにもかかわらず、まったく不安がないのは、加減速Gや荷重のほとんどすべてを堅牢(けんろう)なボディーが受け止め、減衰してくれているからにほかならない。

剛性がもたらすリニアな反応はエンジンに対しても機能している。アルミのマウントがパワーをロスなく車体とタイヤに伝え、スロットル開度を即座にダッシュ力へと変換してくれる。左右に曲がる時にも、前に車体を進める時にも遊びがなく、すべてがダイレクトだ。最高出力は12.9psにすぎないが、途中で間引かれたり、分散されることがないためストレスを感じる場面は皆無。高速道路を100km/hで巡航する時も息苦しさはなく、そのスピード域では一転してハンドリングが落ち着き、高いスタビリティーを見せる。

べスパの現行ラインナップの中で、唯一角型のランプを備える「スプリント150」。光源は最新モデルらしくLED式となっている。
べスパの現行ラインナップの中で、唯一角型のランプを備える「スプリント150」。光源は最新モデルらしくLED式となっている。拡大

リアエンド右側の「Sprint」エンブレム。ワンポイントの赤いカラーリングがアクセント。


	リアエンド右側の「Sprint」エンブレム。ワンポイントの赤いカラーリングがアクセント。
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シート下のバスケットは簡単に取り外せる。その下にあるエンジンにも容易にアクセスできる。
シート下のバスケットは簡単に取り外せる。その下にあるエンジンにも容易にアクセスできる。拡大
ベースモデルの「スプリント150」ではメッキ処理されるマフラーガードは、「ノッテ」ではマットブラックになる。
ベースモデルの「スプリント150」ではメッキ処理されるマフラーガードは、「ノッテ」ではマットブラックになる。拡大
「スプリント150ノッテ」の最高出力は12.9psにすぎないが、数値以上の動力性能が体感できる。
「スプリント150ノッテ」の最高出力は12.9psにすぎないが、数値以上の動力性能が体感できる。拡大
両足の間におさまる「トンネルバッグ」。2万3760円の専用オプションとして用意される。
両足の間におさまる「トンネルバッグ」。2万3760円の専用オプションとして用意される。拡大

車両本体価格は49万8000円。ベースモデル「スプリント150」に比べ1万2000円高となっている。


	車両本体価格は49万8000円。ベースモデル「スプリント150」に比べ1万2000円高となっている。
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製品哲学が伝わってくる

曲がりたいと思えばいとも簡単に車体はコーナーへ吸い込まれ、スロットルを開けてスピードレンジを上げれば安定。スプリント150は移動ツールではなく、ハンドリングを楽しむためのピュアスポーツである。たまたま“足をそろえるライディングポジション”になっているにすぎない。

そうやって引き上げられた運動性の代償として、足つき性は良好とは言い難い。シート高の数値自体は790mmゆえ極端に高い部類ではないが、座面に幅があり、停車時は足が広がる格好になるため、平均的な成人男性の体格でもカカトと地面には距離がある。小柄なライダーにとっては唯一のウイークポイントになるだろう。

タイヤやサスペンションは車体を構成する上で無視できないパーツではあるものの、なによりまず車体がしっかりしていることがバイクの基本。それを教えてくれるのがこのスプリント150であり、ベスパがかたくなに守り続けてきたスチールモノコックボディーに対する哲学である。

(文=伊丹孝裕/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)

スプリント150ノッテ
スプリント150ノッテ拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=1852×680×--mm
ホイールベース:1334mm
シート高:790mm
重量:130kg
エンジン:155cc 空冷4ストローク単気筒 SOHC 3バルブ
最高出力:12.9ps(9.5kW)/7750rpm
最大トルク:12.8Nm(1.3kgm)/6500rpm
トランスミッション:CVT
燃費:--km/リッター
価格:49万8000円

伊丹 孝裕

伊丹 孝裕

モーターサイクルジャーナリスト。二輪専門誌の編集長を務めた後、フリーランスとして独立。マン島TTレースや鈴鹿8時間耐久レース、パイクスピークヒルクライムなど、世界各地の名だたるレースやモータスポーツに参戦。その経験を生かしたバイクの批評を得意とする。

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