第2回:「ボルボP1800ES」の走りを試す
人と時間が磨いたクルマ 2019.05.30 クラシックボルボ21世紀を駆ける ボルボ・クラシックガレージがレストアを手がけた1973年型「P1800ES」に試乗。車体の隅々まで手がかけられたクラシックカーは、時代を経たクルマだけが持ち合わせる走り味と、インポーターの手によるサービスならではの安心感を併せ持つ稀有(けう)な存在だった。ボルボ製エステートの歴史を語る一台
今回取材したボルボP1800ESは、クラシックガレージの仕事を具体的に示すデモカー的な個体として製作された、ボルボ・カー・ジャパンの社有車である。日本でのボルボのブランドイメージは、エステートによって築かれた側面がある。P1800ESはボルボ製エステートの歴史の中でも源流に近い位置にあるモデルであり、ボルボのクラシックカー事業を担う阿部昭男さんいわく、「そういう意味でも、うちで所有することがいいだろうという判断になりました」とのことだ。
取材時は木村隆之社長がステアリングを握り参加するクラシックジャパンラリーに向けて整備中で、しかもその後は木村社長のオーナーカーに納まる予定……と、嫁ぎ先まで決まっている状態だった。そういう大事なタイミングでクルマを壊しては大変である。阿部さんに委ねられたオリジナルのキーをそろりとひねると、ボッシュの「Dジェトロ」で制御されるOHV 4気筒ユニットはあっさりと目覚めた。
冷間時からしっかりと安定したアイドリングを確認しながら、阿部さんにコックピットドリルを受けるも、特別なことはなにもないという。強いて言うなら……と挙げられたのは、ATセレクターのポジションが曖昧になっているとのこと。聞けばP1800ESは当時から3段ATの選択肢があり、セレクターは安全性に考慮してメルセデスのようなスタッガードパターンになっている。が、その左右方向の動きが小さくギアポジションがやや確認しづらい。「昔のジャガーも同じような動きだったなぁ」と思ったら、ジャガーと同じボルグワーナー製とのことだった。