セダン市場はまだ拡大の余地あり!?
「Aクラス セダン」導入に見るメルセデスの戦略
2019.08.07
デイリーコラム
日本車の新車登録台数トップ20にセダンは1車種だけ
先日、webCG編集部のF氏からこんなメールがきた。
「日本にも『Aクラス セダン』が導入されましたが、セダンの市場が縮小する中で、メルセデスはなぜセダンのラインナップ拡充を図るのでしょうか?」
確かに国内市場をみれば、2018年暦年の国産乗用車の登録台数トップ10(自販連調べ)は「日産ノート」「トヨタ・アクア」「トヨタ・プリウス」「日産セレナ」「トヨタ・シエンタ」「トヨタ・ヴォクシー」「ホンダ・フィット」「トヨタ・カローラ」「トヨタ・ヴィッツ」「トヨタ・ルーミー」という顔ぶれだ。カローラにセダンの「アクシオ」が一部含まれているものの、実際のところメインはハッチバックだ。プリウスも5ドアハッチバックとすれば、トップ20まで枠を広げてようやく「トヨタ・クラウン」(19位)がランクインする。
そこで冒頭の質問に戻るが、これはわたしが考えてどうにかなるものでもない。素直にメルセデス・ベンツ日本の広報室製品広報課の木下潤一氏に話を聞いてみることに。まずストレートに最初の問いを投げかけてみた。
「国内でセダンという車型のクルマが減っていることは知っていますが、そもそもわれわれとしては、セダンマーケットが縮小しているという認識はありません。SUVの人気が高まっている中で、メルセデスでも確かにSUVの比率は上がっています。しかし、セダンが売れなくなっているのかというと、昨年も国内で売れた輸入車のベスト10に「Cクラス」と「Eクラス」がランクインしているくらいで、逆にまだまだチャンスがあるマーケットだと思っています」
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あえて“カニバリ”で隙間を埋めるモデル戦略
実は国内で販売されるCクラスとEクラスでは7割、「Sクラス」に至っては9割をセダンが占めるという。またグローバルでみても、セダン市場は活況だ。そもそもAクラス セダンは、アメリカや中国市場を見据えての商品企画でもあり、中国市場ではロングバージョンも用意されている。
一方で国内ではすでにコンパクトなセダンとしては「CLA」があり、Cクラスもある。CクラスとAクラス セダンを比較すると、全長で140mm、全幅で15mm、ホイールベースで110mmほど後者がコンパクトなサイズになるが、全高は20mm高く、FFレイアウトであることも手伝って室内空間の広さはCクラスにも遜色ないものだ。このあたりのカニバリゼーションについてはどう考えているのか尋ねてみた。
「もちろんまったくないとは思っていません。まずCLAは、われわれは4ドアクーペと呼んでいますが、お客さまの多くにそのデザインで選んでいただいています。ある意味ではメルセデスのヒエラルキーに属していないモデルといえるかもしれません。そして、Aクラス セダンとCクラスとではサイズも、駆動方式も、価格も異なります。Cクラスではやはり300万円台の価格は実現できません。エントリーの『C180』が455万円です。Aクラス セダンではエントリーモデルの『A180』が344万円と、300万円台がエントリーのポジションになっています。最上位の『A250 4MATIC』が476万円なんですが、ちょうどここがCクラスのエントリーと重なる価格帯になっています」
あいた隙間をきっちりと埋めていく、実に周到に計算されたモデル戦略というわけだ。顧客層の若返りを図るため、メルセデスは先代Aクラスから、「MFA1」プラットフォームをもとにNGCC(New Generation Compact Cars)という派生車戦略をとった。Aクラスのほか「Bクラス」や「GLA」、そしてCLAといったモデルを展開し、世界的にヒットした。日本でもこの戦略が功を奏し、2015年にそれまで長年にわたってトップをキープしていたフォルクスワーゲンを抜いて、輸入車登録台数No.1となり、現在まで4年連続で、日本で一番売れている輸入車ブランドになった。その戦略が正しかったことの表れだろう。
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国内ラインナップは35車種、162モデル!
2019年7月末現在、国内に導入されているメルセデス(スマート含む)は、実に35車種、162モデルに及ぶ。これはトヨタを除けば、すべての日本車メーカーよりも多いものだ。
BMWも33車種、100モデル以上をラインナップして同様の戦略をとっているが、ドイツプレミアムメーカーがブランドネームの上に胡座(あぐら)をかいているわけではないということの証左といえるものだ。常に新しい商品企画を考え、プラットフォーム戦略によって開発期間を短縮し、多品種少量生産に対応する柔軟な生産体制を構築し、さまざまな顧客のニーズに応えてきた。冒頭の「なぜセダンのラインナップ拡充を図るのか?」という問いに対しては、おそらくセダンのみならず可能性のあるすべてのラインナップの拡充を図っていく、というのがその答えになるのだろう。
かつて商品企画も担当していた木下氏はこんな話もしていた。「商品企画には2つの考え方があると思っています。1つはお客さまの要望にストレートに応えるということ。そしてもう1つはお客さまが想定していない、気づいていない、新しいものを提供すること」
本国ではすでに、AクラスやBクラスと同じプラットフォームを使った3列シートのコンパクトSUV「GLB」も発表されている。日本でもヒットの予感だ。蛇足ながら、日本車メーカーの奮起にも期待する。
(文=藤野太一/写真=webCG/編集=藤沢 勝)
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藤野 太一
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