“あおり”対策の必須アイテム!?
ドライブレコーダー最前線
2019.09.06
デイリーコラム
安全運転を促進する機器
昨今、ニュースでも取り上げられる機会が増え、世間の注目が集まったのが、クルマの“あおり運転”。その定義自体はやや曖昧な部分もあるが、警察庁の説明には「重大な事故につながる悪質・危険な運転行為」とある。これに対しての罰則強化、つまり政府内における法改正の動きも見えてきている。
今回これだけ話題になったのは、その行為自体がドライブレコーダー(以下ドラレコ)に記録され、SNSを中心に社会に拡散されたことが大きい。同時に、これがあおり運転の犯人を特定する切り札になったと言っても、間違いではないだろう。
さてこのドラレコ、本来は自動車事故発生時に、その様子を記録するものだが、最近ではドライブの思い出を記録しておいて後で楽しむなど、エンターテインメント的な使われ方も販売を後押ししてきた。そこに今回の一件である。もはや事故時だけではなく、その前段階で自己防衛のために使われる、安全に走るための抑止力、言い換えれば“安全運転促進ツール”としての意味合いが強くなってきた。筆者は頻繁にカー用品店をウオッチしているが、実際、ドラレコの販売コーナーは拡大されており、休日となれば多くの人が群がるほど盛況だ。
クルマにおける安全を確保する要素としてはエアバッグなどに代表される衝突時の「パッシブセーフティー」、昨今車両への搭載率が向上したADAS(先進運転支援システム)に代表される事故を未然に回避する「アクティブセーフティー」、そして交通事故や違反に対する根本的な抑止力となる「道路交通法」などの法律が基本的なものとして挙げられる。それは、多くの人が理解しているだろう。
しかしいまは、前述したように「自分の身は自分で守る」必要性も高くなってきている。そしてドラレコの存在は安全につながる“第4の手段”としてドライバーにとって有益なものになっている。
![]() |
監視社会化への懸念はあるが……
これまでもドラレコの有益性は語られてきたが、裁判などでの証拠としては、あまり効力がなかったのも現実だ。しかし昨今では、カメラの解像度だけでなく記録されるデータの精度向上(GPSの位置データや衝突時の衝撃度が記録される)も手伝って、徐々にではあるが証拠として活用されるケースも増えてきている。もちろん、事故時の状況にもよるが、車両のナンバーや信号がきちんと映っていて、その数字や色まで識別できることが条件となるなど、絶対有効というわけでないことは覚えておく必要があるだろう。
一方で、ドラレコで記録された情報が安易にSNSや動画サイトに公開されるという、プライバシーの侵害に対する反論も多い。この部分は法整備が求められるし、何よりも使用者のモラルに頼る部分もあるなど、まだまだ課題は多い。それでもドラレコを装着することで、他のドライバーに対しての「注意喚起」、また自身の「安全意識の向上」は期待できる。
冒頭に述べたようにあおり運転の定義は曖昧で、例えば、走行時に自身の車両が急に減速したのに後続車が速度を変えずに接近してきた場合や、(高速道路の追い越し車線を走り続ける「通行帯違反」についての認識が甘いため)追い越しのため後続車が接近した場合に、「あおられた!」と感じることも少なくない(余談だがこの通行帯違反、内閣府のデータなどによれば摘発件数が増加傾向にあるという)。
そんな中、方々でカメラによる記録を続ける“監視社会化”には同調できない部分も多いし、ネットを中心に過剰に反応するのもいかがなものか、とも筆者は感じている。それでもドラレコの存在により、周囲の目を気にすることでドライバーが襟を正し安全運転に努め、交通事故が減るという可能性は、十分にある。
ドラレコ自体も発売当初はフロントのみの設定だったが、昨今のトレンドとしてはリアカメラも含めた2カメラモデルが人気だ。リアカメラの映像はあおり運転をされたときや追突されたときの記録としても使える点が大きく、さらにフロントカメラと同等の解像度を持つモデルも増えてきている。筆者としては、前後だけでなく周囲360°を記録することで無謀な幅寄せなどまでカバーできるモデルの進化・普及を期待したいが、現在はまだ種類も少なく、解像度の点でやや劣る部分がある。ただこれも時間の問題で、近い将来は主流になると考えている。
(文=高山正寛/写真=カーメイト、パナソニック/編集=関 顕也)

高山 正寛
-
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選NEW 2025.10.9 24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。
-
ハンドメイドでコツコツと 「Gクラス」はかくしてつくられる 2025.10.8 「メルセデス・ベンツGクラス」の生産を手がけるマグナ・シュタイヤーの工場を見学。Gクラスといえば、いまだに生産工程の多くが手作業なことで知られるが、それはなぜだろうか。“孤高のオフローダー”には、なにか人の手でしかなしえない特殊な技術が使われているのだろうか。
-
いでよ新型「三菱パジェロ」! 期待高まる5代目の実像に迫る 2025.10.6 NHKなどの一部報道によれば、三菱自動車は2026年12月に新型「パジェロ」を出すという。うわさがうわさでなくなりつつある今、どんなクルマになると予想できるか? 三菱、そしてパジェロに詳しい工藤貴宏が熱く語る。
-
「eビターラ」の発表会で技術統括を直撃! スズキが考えるSDVの機能と未来 2025.10.3 スズキ初の量産電気自動車で、SDVの第1号でもある「eビターラ」がいよいよ登場。彼らは、アフォーダブルで「ちょうどいい」ことを是とする「SDVライト」で、どんな機能を実現しようとしているのか? 発表会の会場で、加藤勝弘技術統括に話を聞いた。
-
フォルクスワーゲンが電気自動車の命名ルールを変更 「ID. 2all」が「ID.ポロ」となる理由 2025.10.2 フォルクスワーゲンが電気自動車(BEV)のニューモデル「ID. 2all」を日本に導入し、その際の車名を「ID.ポロ」に改めると正式にアナウンスした。BEVの車名変更に至った背景と、今後日本に導入されるであろうモデルを予想する。
-
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
NEW
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? -
NEW
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】
2025.10.9試乗記24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。 -
NEW
第931回:幻ですカー 主要ブランド製なのにめったに見ないあのクルマ
2025.10.9マッキナ あらモーダ!確かにラインナップされているはずなのに、路上でほとんど見かけない! そんな不思議な「幻ですカー」を、イタリア在住の大矢アキオ氏が紹介。幻のクルマが誕生する背景を考察しつつ、人気車種にはない風情に思いをはせた。 -
日産リーフB7 X(FWD)/リーフB7 G(FWD)【試乗記】
2025.10.8試乗記量産電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」がついにフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、従来モデルとはなにが違い、BEVとしてどうすごいのか? 「BEVにまつわるユーザーの懸念を徹底的に払拭した」という、新型リーフの実力に触れた。 -
走りも見た目も大きく進化した最新の「ルーテシア」を試す
2025.10.8走りも楽しむならルノーのフルハイブリッドE-TECH<AD>ルノーの人気ハッチバック「ルーテシア」の最新モデルが日本に上陸。もちろん内外装の大胆な変化にも注目だが、評判のハイブリッドパワートレインにも改良の手が入り、走りの質感と燃費の両面で進化を遂げているのだ。箱根の山道でも楽しめる。それがルノーのハイブリッドである。