【F1 2019 続報】13年目で6冠達成 円熟の境に達したハミルトンはさらなる高みを目指す

2019.11.04 自動車ニュース bg
2019年のワールドチャンピオンとなったメルセデスのルイス・ハミルトン(写真)。デビュー2年目の2008年にマクラーレンで取った最初のタイトルから数えて6回目の戴冠となる。これでファン・マヌエル・ファンジオを抜き歴代単独2位となり、ミハエル・シューマッハーの最多7冠記録にあと1つと迫った。(Photo=Mercedes)
2019年のワールドチャンピオンとなったメルセデスのルイス・ハミルトン(写真)。デビュー2年目の2008年にマクラーレンで取った最初のタイトルから数えて6回目の戴冠となる。これでファン・マヌエル・ファンジオを抜き歴代単独2位となり、ミハエル・シューマッハーの最多7冠記録にあと1つと迫った。(Photo=Mercedes)拡大

2019年11月3日、アメリカはテキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われたF1世界選手権第19戦アメリカGP。今季2戦を残し、ルイス・ハミルトンがGPキャリア13年目での6冠を達成した。

F1第19戦アメリカGPを制したのは、メルセデスのバルテリ・ボッタス(写真)。日本GPで優勝、前戦メキシコGPでも6番グリッドから3位と、シーズン終盤に調子を上げてきている彼はアメリカGPでも好調さをキープし、同GP初のポールポジションを獲得。メルセデスとしては200回目のフロントローを決めた。レースでは2ストップ作戦を取り、1ストップでトップを走っていたハミルトンをオーバーテイクして今季4勝目をマーク。タイトル争いではチームメイトに完敗したものの、来シーズンに期待を抱かせる結果を残した。(Photo=Mercedes)
F1第19戦アメリカGPを制したのは、メルセデスのバルテリ・ボッタス(写真)。日本GPで優勝、前戦メキシコGPでも6番グリッドから3位と、シーズン終盤に調子を上げてきている彼はアメリカGPでも好調さをキープし、同GP初のポールポジションを獲得。メルセデスとしては200回目のフロントローを決めた。レースでは2ストップ作戦を取り、1ストップでトップを走っていたハミルトンをオーバーテイクして今季4勝目をマーク。タイトル争いではチームメイトに完敗したものの、来シーズンに期待を抱かせる結果を残した。(Photo=Mercedes)拡大
2012年に始まったオースティンでのアメリカGPでこれまで5勝を記録していたハミルトン(写真)。タイトル決定戦となった今年は予選から苦戦することに。チームメイトのバルテリ・ボッタスがポールを取った一方で、5番グリッドと後方からのスタート。レースでも1ストップ作戦でタイヤをいたわってのロングランを強いられ、ボッタスに優勝を奪われたが2位の座は守った。(Photo=Mercedes)
2012年に始まったオースティンでのアメリカGPでこれまで5勝を記録していたハミルトン(写真)。タイトル決定戦となった今年は予選から苦戦することに。チームメイトのバルテリ・ボッタスがポールを取った一方で、5番グリッドと後方からのスタート。レースでも1ストップ作戦でタイヤをいたわってのロングランを強いられ、ボッタスに優勝を奪われたが2位の座は守った。(Photo=Mercedes)拡大
前戦メキシコGPでは、マックス・フェルスタッペン(写真前)がイエローフラッグ無視のペナルティーで最速タイムをポールに結びつけることができなかったが、シーズン終盤にきてレッドブルは速さを取り戻しつつあるようで、アメリカGPでもフェルスタッペンが3番グリッドを獲得。しかし、スタートで2位に上がったものの、2ストップ作戦を取ったことでメルセデスの2台に先行を許すことに。ハミルトンを追い詰めたが抜けず、フェルスタッペンは自身100戦目のマイルストーンを3位表彰台で終えた。(Photo=Red Bull Racing)
前戦メキシコGPでは、マックス・フェルスタッペン(写真前)がイエローフラッグ無視のペナルティーで最速タイムをポールに結びつけることができなかったが、シーズン終盤にきてレッドブルは速さを取り戻しつつあるようで、アメリカGPでもフェルスタッペンが3番グリッドを獲得。しかし、スタートで2位に上がったものの、2ストップ作戦を取ったことでメルセデスの2台に先行を許すことに。ハミルトンを追い詰めたが抜けず、フェルスタッペンは自身100戦目のマイルストーンを3位表彰台で終えた。(Photo=Red Bull Racing)拡大

“F1大改革”2021年のレギュレーション発表

2021年の大幅なレギュレーション変更のために準備を進めていたF1。その新しいルールが、アメリカGP直前の10月31日に世界モータースポーツ評議会の場で承認された。テクニカル、スポーティング両レギュレーションのみならず、財政面でも規定を設けるなど、かつてない大規模かつ大胆な改革となるが、目玉となるのは、空力コンセプトの見直しと、各チームの運営費を年間1億7500万ドル(約190億円)までとする、いわゆる「バジェット・キャップ」だろう。

「前車が巻き起こす乱流が影響してオーバーテイクが困難」という、慢性的な問題への解決策として、1982年を最後に禁止されていた「グラウンド・エフェクト・カー」が復活。車体底部で発生させるダウンフォースを増加させる一方で、マシン上部のエアロパーツを抑制し、後方に“きれいな空気”を流し、抜きつ抜かれつのレースがしやすい環境を整える。ルール策定に携わった元フェラーリのチーフデザイナーでありFIA(国際自動車連盟)のシングルシーター部門を統括するニコラス・トンバジスによれば、「今季型では、マシン1台分離れた場所で得られるダウンフォースは通常の55%程度だが、新レギュレーションに移行する2021年には86%になる」と試算されている。

ただしトータルなダウンフォースは減る見込みで、マシン重量が25kg重くなることもあり、1周あたり約3秒遅くなるとみられている。2017年に「ダウンフォース増で高速化」されたばかりのF1だが、結局この問題は解決されなかったということであり、絶対的な速さよりも、各所でオーバーテイクが頻発するドラマチックなレース展開を求めたことになる。

テクニカルレギュレーションについては各チームの意見の対立があったというが、F1史上初の試みとなるバジェット・キャップについては、おおむねすんなりと受け入れられたようである。190億円という上限が設けられたものの、ドライバーとチーム首脳トップ3のサラリー、マーケティング費用はこのなかに含まれない。メルセデス、フェラーリ、レッドブルの3強がその他を圧倒する「F1格差問題」の解決につながることが期待されている。

またコスト抑制の一環として、レースウイークのマシンアップグレードが制限されるほか、風洞実験の時間も削られ、さらに燃料ポンプなどの標準化パーツも採用される。パワーユニットは1.6リッターV6ターボハイブリッドのままだが、エキゾーストシステムの年間使用数が新たに制限される。巨費を投じ開発に明け暮れた時代は、完全に過去のものとなりそうだ。

年間レース数が「最大で25まで」と明言されたことで、今まで以上に多忙を極めるかもしれないスタッフの間では「離婚が増えるのでは」という心配すら広まっているとか。そんな懸念に配慮すべく、ドライバー記者会見は木曜日から金曜日に、またマシンをパルクフェルメに入れるタイミングを予選後から3回目のフリー走行後に移動させるなど、GPウイークのスケジュールや作業をなるべくコンパクトにし労働環境を整備する。なお、予選をミニレースとし、リバースグリッドで戦うアイデアについては意見がまとまらず、来季試験的に3レースで実施するという案は見送られている。

2014年に自然吸気エンジンからターボハイブリッドへと移行され、その後6年間はメルセデス、そしてルイス・ハミルトンの天下が続いてきた。F1のオーナーであるリバティ・メディアとFIA、そして全チームが侃侃諤諤(かんかんがくがく)と議論を戦わせて決まった今回のF1改革により、また新たなプレーヤーが活躍を見せるという可能性は十分にあるだろう。

アメリカGPでボッタスにポールを奪われ、後半戦の連続ポールが「6」で止まったフェラーリは、レースでも精彩を欠いた。シャルル・ルクレール(写真)は、3回目のプラクティスでエンジンからオイルが漏れるトラブルに見舞われ、急きょプールしていた旧型パワーユニットに交換。その影響もあってか、今季最多7回のポールを記録しているモナコ人ドライバーは予選で4位だった。レースでもトップ3から次第に離され4位でゴール。チャンピオンシップでは、ファステストラップのボーナス1点を加えポイントを249点とし、ランキング3位を守っている。なおチームメイトのセバスチャン・ベッテルは、予選2位からスタートで7位に後退。8周してサスペンションが壊れリタイアしている。(Photo=Ferrari)
アメリカGPでボッタスにポールを奪われ、後半戦の連続ポールが「6」で止まったフェラーリは、レースでも精彩を欠いた。シャルル・ルクレール(写真)は、3回目のプラクティスでエンジンからオイルが漏れるトラブルに見舞われ、急きょプールしていた旧型パワーユニットに交換。その影響もあってか、今季最多7回のポールを記録しているモナコ人ドライバーは予選で4位だった。レースでもトップ3から次第に離され4位でゴール。チャンピオンシップでは、ファステストラップのボーナス1点を加えポイントを249点とし、ランキング3位を守っている。なおチームメイトのセバスチャン・ベッテルは、予選2位からスタートで7位に後退。8周してサスペンションが壊れリタイアしている。(Photo=Ferrari)拡大

フェラーリの連続ポールがストップ ボッタスが予選P1

話題を2019年シーズンに戻せば、1週間前の前戦メキシコGPでハミルトンが今季10勝目を飾り、いよいよ6度目のタイトルに王手をかけた。アメリカGPでランキング2位のバルテリ・ボッタスが優勝しても、ハミルトンは8位以上でゴールすればチャンピオンになれる計算だった。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ、通称COTAで行われた過去7年のレースで5勝を記録しているハミルトンだったが、初日2回目のフリー走行でトップを取るも、予選になると3強入り乱れての混戦に巻き込まれ苦戦を強いられる。トップ10グリッドを決めるQ3で最速だったのはボッタスで、今季5回目、通算11回目のポールポジションを獲得。夏休み明けの第13戦ベルギーGPから続いていたフェラーリのポール記録を「6」で止める、会心のラップだった。

予選で2位に終わったフェラーリのセバスチャン・ベッテルは、ポールタイムから0.012秒遅れ。3位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペンも0.079秒差と、3強の3人が僅差で並んだ。フェラーリのシャルル・ルクレールは4位、ハミルトンは5位と後方からのスタート。タイトル獲得目前のポイントリーダーは「マシンが悪いのではなく、自分のせいだ」とコメントしていた。

6番手につけたレッドブルのアレクサンダー・アルボンの後ろにはマクラーレンの2台がつけ、カルロス・サインツJr.7位、ランド・ノリス8位と中団勢トップの座を堅持。ルノーのダニエル・リカルド9位、そしてこの週末好調さをキープしてきたトロロッソのピエール・ガスリーが10位からレースに臨むこととなった。

ちょっと地味でたまにミスもあるが、レースになると必ず順位を上げて得点するのが、レッドブルの新人、アレクサンダー・アルボン(写真)の強みだ。アメリカGPでも3強チームの殿(しんがり)である6番グリッドからスタート。直後にカルロス・サインツJr.のマクラーレンと接触しはじき出され、緊急ピットインの後に最後尾まで落ちるも、ライバルより1回多い3ストップをこなして5位フィニッシュ。これでトロロッソに在籍していた期間を含め、9戦連続で入賞したことになる。第13戦ベルギーGPからトップチームに昇格したタイ人ドライバーは、シートを交換しトロロッソに異動したピエール・ガスリーのポイントを既に上回り、ドライバーズランキング6位につけている。(Photo=Red Bull Racing)
ちょっと地味でたまにミスもあるが、レースになると必ず順位を上げて得点するのが、レッドブルの新人、アレクサンダー・アルボン(写真)の強みだ。アメリカGPでも3強チームの殿(しんがり)である6番グリッドからスタート。直後にカルロス・サインツJr.のマクラーレンと接触しはじき出され、緊急ピットインの後に最後尾まで落ちるも、ライバルより1回多い3ストップをこなして5位フィニッシュ。これでトロロッソに在籍していた期間を含め、9戦連続で入賞したことになる。第13戦ベルギーGPからトップチームに昇格したタイ人ドライバーは、シートを交換しトロロッソに異動したピエール・ガスリーのポイントを既に上回り、ドライバーズランキング6位につけている。(Photo=Red Bull Racing)拡大

2台で戦略を分けてきたメルセデス

トップ10グリッドのスタートタイヤは、上位5台がミディアム、後ろ5台がソフトときれいに分かれ、またピット戦略も1ストップか2ストップかで判断が分かれた。メルセデスは2台で作戦を変え、5番手スタートのハミルトンには、1ストップで走りきるという難しい課題を与え、上位を目指すこととなった。

56周レースのスタート、急な坂を登る特徴的なターン1をトップで駆け抜けたのはボッタス。その後ろでは順位が変動し、2位フェルスタッペン、3位ハミルトン、4位ルクレール、5位ノリスと続いた。大きくポジションを落としたのは、「とんでもないアンダーステアだ」と無線で訴えていたベッテルで、オープニングラップで6位、程なくしてリカルドにも抜かれ7位に。その後、ベッテルのマシンは右リアサスペンションが壊れ、8周目にリタイアとなった。

フェラーリのもう1台、ルクレールも精彩を欠くレースに終始した。メルセデス勢とフェルスタッペンにどんどん離され、また後続には十分なギャップを築けたことで孤独な走行となり、最終的にトップに52秒という大差をつけられての4位でゴール。ファステストラップを記録しボーナス1点を追加するのが関の山だった。

10周を経過し、1位ボッタスと2位フェルスタッペンの間には2.5秒のギャップができ、3位ハミルトンはフェルスタッペンの1秒後方という位置関係。2ストップ組は、14周目にフェルスタッペン、翌周ボッタスがピットに入りミディアムからハードに履き替え、1ストップを狙うハミルトンは25周目までスタートタイヤで周回を重ね、ハードタイヤにスイッチした。

3強に次ぐコンストラクターズランキング4位のマクラーレンは、カルロス・サインツJr.予選7位、ランド・ノリス(写真)同8位と今回も中団勢トップの座を堅持。対するランキング5位のルノー勢は、ダニエル・リカルドのみがQ3に進出し9番グリッド、ニコ・ヒュルケンベルグは11番グリッドにつけた。レースでは、ベッテルがリタイアしたことで空いた3強の一角にリカルドが入り込み、6位フィニッシュ。ヒュルケンベルグも9位と2台そろってルノーが入賞するも、マクラーレンもノリス7位、サインツJr.8位と得点を重ねることに。マクラーレンが38点という大きなアドバンテージを持って残り2戦に向かう。(Photo=McLaren)
3強に次ぐコンストラクターズランキング4位のマクラーレンは、カルロス・サインツJr.予選7位、ランド・ノリス(写真)同8位と今回も中団勢トップの座を堅持。対するランキング5位のルノー勢は、ダニエル・リカルドのみがQ3に進出し9番グリッド、ニコ・ヒュルケンベルグは11番グリッドにつけた。レースでは、ベッテルがリタイアしたことで空いた3強の一角にリカルドが入り込み、6位フィニッシュ。ヒュルケンベルグも9位と2台そろってルノーが入賞するも、マクラーレンもノリス7位、サインツJr.8位と得点を重ねることに。マクラーレンが38点という大きなアドバンテージを持って残り2戦に向かう。(Photo=McLaren)拡大
トロロッソ勢を引っ張ったのは好調ピエール・ガスリー(写真)で、Q3にまで駒を進め10番グリッドを確保。予選13位のダニール・クビアトとともに入賞を目指したものの、2台ともレーシングポイントのセルジオ・ペレスとの接触に見舞われて得点ならず。レース終盤、タイヤに苦しんでいたガスリーはポイント圏の9位走行中にペレスに抜かれ、抜き返そうとした際に接触、サスペンションを壊し16位。クビアトは10位でチェッカードフラッグを受けたものの、ペレスを強引にオーバーテイクし当たったことで、5秒加算のペナルティーが科され、2戦連続のレース後降格となり12位。代わってペレスが10位入賞を果たしたことで、ランキング6位のレーシングポイント65点、同7位のトロロッソ64点と1点の差がついた。(Photo=Toro Rosso)
トロロッソ勢を引っ張ったのは好調ピエール・ガスリー(写真)で、Q3にまで駒を進め10番グリッドを確保。予選13位のダニール・クビアトとともに入賞を目指したものの、2台ともレーシングポイントのセルジオ・ペレスとの接触に見舞われて得点ならず。レース終盤、タイヤに苦しんでいたガスリーはポイント圏の9位走行中にペレスに抜かれ、抜き返そうとした際に接触、サスペンションを壊し16位。クビアトは10位でチェッカードフラッグを受けたものの、ペレスを強引にオーバーテイクし当たったことで、5秒加算のペナルティーが科され、2戦連続のレース後降格となり12位。代わってペレスが10位入賞を果たしたことで、ランキング6位のレーシングポイント65点、同7位のトロロッソ64点と1点の差がついた。(Photo=Toro Rosso)拡大
今季苦しい戦いを続けている唯一のアメリカ国籍チーム、ハース。せめてホームレースでは良いところを見せたかったが、予選ではケビン・マグヌッセン12位、ロメ・グロジャン(写真)15位と後方に埋もれ、レースでもグロジャン15位、マグヌッセン18位と浮上できず。参戦4年目の今年、ハースはコンストラクターズランキングで10チーム中9位と下位から抜け出せないでいる。(Photo=Haas)
今季苦しい戦いを続けている唯一のアメリカ国籍チーム、ハース。せめてホームレースでは良いところを見せたかったが、予選ではケビン・マグヌッセン12位、ロメ・グロジャン(写真)15位と後方に埋もれ、レースでもグロジャン15位、マグヌッセン18位と浮上できず。参戦4年目の今年、ハースはコンストラクターズランキングで10チーム中9位と下位から抜け出せないでいる。(Photo=Haas)拡大

表彰台で迎えたハミルトンの戴冠 シューマッハーの記録まであと一歩

レースは折り返しを過ぎ、2ストッパーに最後のピットストップが迫った。35周目にまず動いたのは2位フェルスタッペン、これに続いてボッタスもハードからミディアムに換装すると、1位ハミルトン、約10秒後方に2位ボッタス、3位フェルスタッペンは4.5秒差という順位に。優勝せずともやすやすとタイトルに手が届くハミルトンだったが、あくまで勝利にこだわり、レースの半分以上をノンストップで走りきるつもりでいた。

残り15周で1位ハミルトンのリードは4.2秒。その5周後には2.5秒に削られ、ゴールまであと6周という時点で2台の差はほぼなくなった。そしてラスト5周、ストレートでピタリと背後に迫ったボッタスが首位奪還に成功したのだった。

2位に落ちたハミルトンは、長持ちのハードとはいえ戦況が苦しく、今度は3位フェルスタッペンを相手に防戦を強いられる。「フルパワーが欲しい」と無線で訴えるレッドブルのエースだったが、しかし前を行く百戦錬磨の王者に慌てるそぶりはなく、またコースオフしたマシンがいたためにイエローフラッグが出されたことで、レッドブルの反撃も時間切れとなった。

2007年にマクラーレンでデビューしてから13年目、2013年にメルセデスに移籍してから7年がたち、6回目のタイトル獲得となったハミルトン。これで3年連続でワールドチャンピオンとなったことになるが、過去2年は表彰台圏外での戴冠だったため、2位とはいえポディウム上で晴れ晴れとした笑顔を見せることができた。

今年34歳となったハミルトンは、5つのタイトルをともに勝ち取ったメルセデスのチームクルーに対し、「俺たちはまだまだ行けるんだ!」と力強く高らかに宣言。「アスリートとしてはまだまだやる気も十分ある」と、さらなる高みを目指していることを隠さなかった。

その高みの頂点に君臨するのは、孤高の7冠王者、ミハエル・シューマッハー。ハミルトンはタイトル数のみならず、シューマッハーが持つ最多勝利数「91」にあと8勝、同じく最多ポディウム数「155回」にあと5回と迫っている。今年は自慢の速さがなりを潜め、歴代最多記録を保持するポールも4回しか取っていないが、レースでは度々難局を乗り越えて誰よりも多い10勝をマーク。円熟の境に達しながら、ますます強さに磨きをかけている。

そんな偉大なドライバーをチームメイトに持つボッタスは、GPキャリア7年目にして自身シーズン最多得点を更新し、過去最も多い年間4勝を記録。一発の速さではハミルトンをしのぐことも珍しくなくなり、またシーズン前半は僚友に引けを取らないパフォーマンスを披露するも、レースマネジメントという課題に直面した一年だった。それがシーズン後半に入ると日本GP、そしてアメリカGPと勝利を重ね、今回もハミルトンを打ち負かしての快勝。「個人的には自分の目標をクリアできなかったけど、来年はやってやるさ」と、来る2020年に雪辱を果たすことを誓っていた。

今季はまだ2戦を残しているが、メルセデスが一段と強くなった一年だったといっていいだろう。

アメリカ大陸3連戦の最後はブラジルGP。決勝は11月17日に行われる。

(文=bg)

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