次世代パワートレインにも期待! 新型スーパースポーツ「マセラティMC20」の全容に迫る
2020.05.22 デイリーコラム既存モデルの流用なのか?
本来ならボクは今ごろモデナにいるはずだった。2019年の冬にテストミュールの存在があきらかにされて以来、クルマ好きの間で静かに盛り上がっていたマセラティの新型スポーツカーが、リニューアルされた工場とともに披露されるはずだったからだ。
新型コロナ禍でイタリアはおろか世界が止まって、「MC20」(当初は「MCXX」)と名付けられた新型モデルのワールドプレミアは早々に2020年9月へと延期されたのだった(加えて残念なことに、この調子でいくと9月になったからといってわれわれ日本人がスムーズに海外出張できるという保証は何もない)。
現時点でMC20と呼ばれる新型車について、その具体的な情報はほとんどないと言っていい。車名の由来はMC(=マセラティ コルセ)の2020年新作、だ。そして2019年以降マセラティ本社からメディアに提供されてきたプロトタイプの写真を見れば、新型スポーツカーがミドシップレイアウトを持つことだけははっきりと分かる。
当初公開されたカムフラージュモデルはおそらくパワートレイン開発用のテストミュールだった。前後サイドのウィンドウ周りやライト周辺、サイドインテークなどを見れば「アルファ・ロメオ4C」がベースであることはあきらか。過去に4Cベースのマセラティ計画もあったことと、4Cの生産が今年で終了すること(4Cはモデナのマセラティでつくっている)から、新型もまた4Cベースだというウワサもあったが、さすがにそれはないだろう。4Cは累計で1万台もつくられた。たとえMC20がCFRPモノコックボディーを使うにしろ、いまさら流用する必要はない。
話のスジとしてあるとするならば、同じようなタイミングで計画のキャンセルがあきらかになった「6C」とも「8C」ともいわれたアルファ・ロメオの次期型高性能モデルからの転用だ。とはいえこちらはというとFRが有力との情報もあった。ならば、これまた延期になった“ディーノプロジェクト”からか……。推測は推測でしかない。楽しいけれども、これくらいにしておこう。
重責を担う歴史的な一台
初期のテストミュールをよく見てみれば、そのホイールベース、特にCFRPモノコックボディー以降が長く、リアのサブフレームが大きくなっていた。つまりエンジンが違う。これは要するに6気筒以上でプラスαのシステムを積むパワートレインであることの証しだ。
最新のプロトタイプ写真を見れば全く新しいスタイリングであることが分かる。マセラティらしいノーズとシンプルなライン構成も見てとれた。ちなみにスターリング・モスに敬意をささげた写真を公表したことは、マセラティがMC20をベースに再びサーキットに戻ってくることの強固な意思表明である。ならば、そこに積まれるパワートレインはいったい何物だろうか? それを想像するための手がかりは、マセラティが“いまさら”ミドシップカーを世に送り出す理由を考察することにこそあると思う。
2019年5月に、エンジン供給元であるフェラーリはマセラティとの取引を早ければ2021年にも終えることを発表した。それを受け、既に「グラントゥーリズモ」の次期型で電動化を推し進めるとしていたマセラティは「内燃機関がすべてなくなるわけではない」と言明している。その意味するところは何か。
答えはシンプルだ。ハイブリッド化された新エンジンユニットをFCAが既に開発し終えているということにほかならない。FCAはグループPSAとの協業も視野に入れつつ、今後5年間で30種類の電動パワートレイン(BEV、PHEV、HV)を市場投入することを発表しており、マセラティもその例外ではない。となれば、マセラティの近未来は一気に“刷新”されることになる。要するにこの歴史あるブランドの一大画期がもうすぐやってくる。それを世界に向かって高らかに宣言するためのアイコンとして、モータースポーツ活動も踏まえ、ミドシップのMC20を世に送り出すというわけだ。
であればなおのこと、そのリアミドには新しいパワートレインが搭載されなければならない。これまでのV6やV8ではいかにマラネッロ製とはいえ、その大役は果たせそうにない。モデナ近郊で目撃されたテストミュールや、オフィシャル写真撮影時のプロトタイプのエンジンサウンドをよくよく聞いてみれば、おそらくはV6エンジンであると推察できる(残念ながらハイブリッドかどうかは分からない)。つまり、MC20の心臓部はV6ツインターボ+ハイブリッドシステムである可能性が高い。そしてこれはまた世界的に見て、次世代スーパーカー用パワートレインのトレンドにも合致している(フェラーリやマクラーレンなど)。
“電動化”を次世代キーワードとしたマセラティ。そのプロローグであり盛大なのろしであるのが、MC20という新型ミドシップスポーツカーなのだと思う。
(文=西川 淳/写真=マセラティ、FCA/編集=関 顕也)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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