【F1 2020】シーズン最後の中東3連戦 危機との遭遇で知るF1のレジリエンス

2020.11.30 自動車ニュース
F1第15戦バーレーンGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真中央)、2位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同左端)、3位に終わったレッドブルのアレクサンダー・アルボン(同右端)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
F1第15戦バーレーンGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真中央)、2位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同左端)、3位に終わったレッドブルのアレクサンダー・アルボン(同右端)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2020年11月29日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第15戦バーレーンGP。シーズン最後の中東3連戦の初戦は、マシンの大破、炎上というショッキングなアクシデントに見舞われた。

ポールシッターのハミルトンを先頭に、フェルスタッペン、セルジオ・ペレスらが続いてターン1に進入。ロメ・グロジャンの炎上事故は、この後のターン3で起きた。(Photo=Racing Point)
ポールシッターのハミルトンを先頭に、フェルスタッペン、セルジオ・ペレスらが続いてターン1に進入。ロメ・グロジャンの炎上事故は、この後のターン3で起きた。(Photo=Racing Point)拡大
2週間前の前戦トルコGPでミハエル・シューマッハーの7冠に肩を並べたばかりのハミルトン(写真)。偉業達成にも集中を切らさず、来季のピレリタイヤのテストも兼ねたフリー走行では精力的に周回を重ね2回のセッションでトップを奪い、予選では今季10回目のポールを取ってしまった。レースでも赤旗中断やセーフティーカーに惑わされず、15戦して11勝目をマーク。メルセデスにとっては通算115勝目となり、歴代勝利数でウィリアムズを抜き3位となった。(Photo=Mercedes)
2週間前の前戦トルコGPでミハエル・シューマッハーの7冠に肩を並べたばかりのハミルトン(写真)。偉業達成にも集中を切らさず、来季のピレリタイヤのテストも兼ねたフリー走行では精力的に周回を重ね2回のセッションでトップを奪い、予選では今季10回目のポールを取ってしまった。レースでも赤旗中断やセーフティーカーに惑わされず、15戦して11勝目をマーク。メルセデスにとっては通算115勝目となり、歴代勝利数でウィリアムズを抜き3位となった。(Photo=Mercedes)拡大

接戦・混戦・激戦のラスト3連戦

第13戦エミリア・ロマーニャGPでメルセデスが前人未到の7連覇を達成。続く前戦トルコGPではルイス・ハミルトンがミハエル・シューマッハーの最多記録7冠に並んだ。両タイトルが確定したことで、残る3戦が消化レースとなるかといえばそんなことはなく、各所で繰り広げられる接戦から目が離せない状況である。

まずは年間順位が分配金など稼ぎに影響するコンストラクターズ選手権。チャンピオンのメルセデス(504点)、2位レッドブル(240点)までは確定だが、3位レーシングポイント(154点)、4位マクラーレン(149点)、5位ルノー(136点)、6位フェラーリ(130点)と中団勢は混戦模様。フェラーリは、今季型「SF1000」とパワーユニットの失敗で3強の座から転げ落ちるも、トルコGPではセバスチャン・ベッテルが今季初となる3位表彰台を獲得するなどし、シーズン終盤に来てようやくトップ5の尻尾が見えてきた。

一方のドライバーズチャンピオンシップも、たった1人でレッドブルの2人より67点も多い307点を手にしていた孤高の王者ハミルトンを除けば、まだ先行きは分からない。2位バルテリ・ボッタス(197点)と3位マックス・フェルスタッペン(170点)は27点差で逆転可能。トルコで2位表彰台を記録しランキング4位に浮上したセルジオ・ペレス(100点)以下も、5位シャルル・ルクレール(97点)、6位ダニエル・リカルド(96点)と僅差での激戦が続いている。特に今季限りでレーシングポイントからの放出が決まっているペレスは、F1残留を狙うためにも好成績で一年を締めくくりたいところだ。

2020年シーズンも、バーレーンで2戦、アブダビで最終戦という中東シリーズ3連戦でフィナーレを迎える。次週はバーレーンのコースの外周路を使った“なんちゃってオーバル”での戦いとなるなど、見どころが尽きることはない。

レッドブルのフェルスタッペン(写真)は、予選Q3でメルセデスの2台に次ぐ3位。スタートで2位に上がり、ゴールまでトップのハミルトンを追うも、チャンピオンに脅威を与えることはできなかった。レース後「2位入賞はもちろんいいことなんだが、内容には満足していない。失うものは何もないのだから、もっとアグレッシブな戦い方をすべきだ」と、チームに発破をかけていた。ドライバーズチャンピオンシップでは、2位ボッタスに12点差まで詰め寄っている。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
レッドブルのフェルスタッペン(写真)は、予選Q3でメルセデスの2台に次ぐ3位。スタートで2位に上がり、ゴールまでトップのハミルトンを追うも、チャンピオンに脅威を与えることはできなかった。レース後「2位入賞はもちろんいいことなんだが、内容には満足していない。失うものは何もないのだから、もっとアグレッシブな戦い方をすべきだ」と、チームに発破をかけていた。ドライバーズチャンピオンシップでは、2位ボッタスに12点差まで詰め寄っている。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

ハミルトンが今季10回目のポール 通算100回まであと2回

予選ではハミルトンが文句なしの一発を決めて、15戦目にして10回目のポールポジションを獲得。タイトル数や勝利数など数々の「最多記録」を更新し続けている彼だが、そのうちのひとつである最多ポールポジション記録はこれで98回目となり、今シーズン中の100回目到達も夢ではなくなった。

0.289秒差で予選2位につけたのはボッタスで、メルセデスにとっては通算75回目のフロントロー独占。2列目にはレッドブル勢が並び、フェルスタッペンは3位、アレクサンダー・アルボンは4位からのスタートとなった。

中団勢トップとなる5位はレーシングポイントのペレスで、6位ダニエル・リカルド、7位エステバン・オコンのルノーを抑えて好位置を獲得。アルファタウリは、ピエール・ガスリー8位、ダニール・クビアト10位とトップ10グリッドに2台とも食い込み、マクラーレンのランド・ノリスが9位からレースに臨むこととなった。

初日のフリー走行中に挙動を乱し大クラッシュを演じたレッドブルのアルボン(写真)は、汚名返上とばかりに予選で奮起し、チームメイトのフェルスタッペンに次ぐキャリアベストタイの4位につけた。レースでは4位をキープしながら、3位ペレスをなかなか攻略できずにいたが、レーシングポイントのリタイアで労せずして3位の座が転がり込み、自身2度目の表彰台にたどり着いた。来季残留に向けて、残り2戦でも上位入賞を目指したい。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
初日のフリー走行中に挙動を乱し大クラッシュを演じたレッドブルのアルボン(写真)は、汚名返上とばかりに予選で奮起し、チームメイトのフェルスタッペンに次ぐキャリアベストタイの4位につけた。レースでは4位をキープしながら、3位ペレスをなかなか攻略できずにいたが、レーシングポイントのリタイアで労せずして3位の座が転がり込み、自身2度目の表彰台にたどり着いた。来季残留に向けて、残り2戦でも上位入賞を目指したい。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
レーシングポイントに5点差をつけられコンストラクターズランキング4位だったマクラーレン。予選ではランド・ノリス(写真)が9位につけるも、カルロス・サインツJr.はQ2セッションでメカニカルトラブルが起因とされるスピンで15位と下位に沈んでしまった。だがレースとなるとサインツJr.が華麗なる挽回で入賞圏まで駒を進め、最終的に5位入賞。ノリスも4位と上位ダブル入賞を果たした。レーシングポイントがノーポイントに終わったことでランキング3位に浮上。残り2戦、17点のアドバンテージを維持できるか?(Photo=McLaren)
レーシングポイントに5点差をつけられコンストラクターズランキング4位だったマクラーレン。予選ではランド・ノリス(写真)が9位につけるも、カルロス・サインツJr.はQ2セッションでメカニカルトラブルが起因とされるスピンで15位と下位に沈んでしまった。だがレースとなるとサインツJr.が華麗なる挽回で入賞圏まで駒を進め、最終的に5位入賞。ノリスも4位と上位ダブル入賞を果たした。レーシングポイントがノーポイントに終わったことでランキング3位に浮上。残り2戦、17点のアドバンテージを維持できるか?(Photo=McLaren)拡大

スタート直後にグロジャンのハースが炎上

天災は忘れたころにやってくるというが、F1においても大きな事故は予期せぬタイミングで起こるものである。57周レースのスタート直後、ロメ・グロジャンのドライブするハースが炎上する大事故に見舞われたのだ。

19番手と後方スタートのグロジャンは、ターン3でダニール・クビアトのアルファタウリにあたるとコース外にはじき出され、ガードレールに突っ込んだ。マシンは前後で真っ二つに折れ、ぶちまけられたガソリンに引火しあっという間に炎が上がった。燃え盛るコックピットにはまだグロジャンが残っていたが、意識を失っておらず自力で脱出。駆けつけていたメディカルスタッフらに付き添われて病院へと運ばれた。奇跡的にやけど程度で済んだものの、堅牢(けんろう)な現代のF1マシンでは珍しいショッキングな大事故に、ドライバーをはじめ多くの関係者に動揺が広がった。

ガードレール修復に時間を要し、約1時間25分後にレース再開。最初のスタート直後の順位、1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位ペレス、4位ボッタス、5位アルボンという並びで仕切り直しとなった。だが今回も後方でアクシデント発生。ランス・ストロールのレーシングポイントがクビアトのマシンに乗り上げ横転したことで、セーフティーカーが出ることとなった。

この間、4位ボッタスのタイヤがスローパンクチャーを起こし緊急ピットイン。ボッタスはまたしても不運に足を引っ張られ、この日は3ストップで8位完走というさえない結果に終わることとなる。

9周目のリスタートでは大きな混乱はなく、1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位ペレス、4位アルボンという顔ぶれは、レース終盤までほぼ変わらなかった。

アルファタウリは過去3戦で2回目となる2台そろっての予選Q3進出で、ピエール・ガスリー(写真)8位、ダニール・クビアト10位。ガスリーは2ストップが基本のレースを1ストップで走り切り、見事6位入賞。クビアトは、グロジャンとランス・ストロールのクラッシュに絡み、後者についてはペナルティーを食らってしまい11位完走。97点を獲得しているチームは、コンストラクターズランキング7位がほぼ確定というポジションにいる。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
アルファタウリは過去3戦で2回目となる2台そろっての予選Q3進出で、ピエール・ガスリー(写真)8位、ダニール・クビアト10位。ガスリーは2ストップが基本のレースを1ストップで走り切り、見事6位入賞。クビアトは、グロジャンとランス・ストロールのクラッシュに絡み、後者についてはペナルティーを食らってしまい11位完走。97点を獲得しているチームは、コンストラクターズランキング7位がほぼ確定というポジションにいる。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
チャンピオンシップで4位マクラーレンに13点差、6位フェラーリには6点差と激戦区の真っただ中にいたランキング6位のルノー。バーレーンGPでの予選ではダニエル・リカルド(写真)6位、エステバン・オコン7位、レースでは4-5フィニッシュのマクラーレンの後塵(こうじん)を拝し、リカルド7位、オコン9位でゴール。ランキング5位は変わらずも、前のレーシングポイントには10点差というところまできている。(Photo=Renault Sport)
チャンピオンシップで4位マクラーレンに13点差、6位フェラーリには6点差と激戦区の真っただ中にいたランキング6位のルノー。バーレーンGPでの予選ではダニエル・リカルド(写真)6位、エステバン・オコン7位、レースでは4-5フィニッシュのマクラーレンの後塵(こうじん)を拝し、リカルド7位、オコン9位でゴール。ランキング5位は変わらずも、前のレーシングポイントには10点差というところまできている。(Photo=Renault Sport)拡大

久々のレッドブル2台そろっての表彰台

4本のストレートを持つバーレーンのコースは、トラクションをかける際にタイヤへ大きな負荷がかかるため、特にリアタイヤのオーバーヒートに注意しなければならず、2ストップは必至と言われていた。

最初のタイヤ交換は20周前から増えだし、首位ハミルトンは20周目にミディアムからミディアム、アルボンもこの動きにならい、21周目にはフェルスタッペンとペレスがハードへスイッチした。

先頭を走るハミルトンと2位フェルスタッペンのギャップは4~5秒台、3位ペレスはさらに16秒遅れ、その4秒後方には4位アルボンという間隔。上位陣は膠着(こうちゃく)ポジションのまま、次のタイヤ交換フェーズに入る。35周目にフェルスタッペンがハードからハード、アルボンはミディアムからハードに換装。これに応じてハミルトンもハードに交換、37周目にはペレスもハードに履き替えた。

2ストップ後も、1位ハミルトンと2位フェルスタッペンの差は3秒台後半から縮まらず。レッドブルは、3位ペレスとの間隔が大きかったため、47周目に三たびフェルスタッペンを呼んでミディアムを与え、2位の座と、ファステストラップポイント1点を持ち帰ることとした。

レッドブルにはもう1つプレゼントが用意されていた。残り4周、3位走行中のペレスのマシンから白煙と火が上がりストップ、セーフティーカーが出た。レースは再開することなく、2年連続でセーフティーカー先導のままチェッカードフラッグとなったが、これで労せずしてアルボンが3位に上がり、レッドブルにとっては2017年日本GP以来となる久々の2台そろっての表彰台となったのだ。

一方、レーシングポイントは無得点に終わったばかりか、ノリス4位、サインツJr.5位とマクラーレンが上位でダブル入賞を果たしたことで、コンストラクターズランキング3位の座を奪われるという最悪の結果となってしまった。

前戦トルコGPで値千金の2位フィニッシュを決めたレーシングポイントのペレス(写真前)。来季のシートは未定のままだが、バーレーンGPでも予選5位を確保し、存在感をアピールした。レースでは3位に上がり好走を続けるも、残り4周で無情にもマシンから白煙が上がりリタイア、2戦連続ポディウムならず。チームメイトのストロールは、予選13位からクラッシュ、横転し序盤に戦列を去った。(Photo=Racing Point)
前戦トルコGPで値千金の2位フィニッシュを決めたレーシングポイントのペレス(写真前)。来季のシートは未定のままだが、バーレーンGPでも予選5位を確保し、存在感をアピールした。レースでは3位に上がり好走を続けるも、残り4周で無情にもマシンから白煙が上がりリタイア、2戦連続ポディウムならず。チームメイトのストロールは、予選13位からクラッシュ、横転し序盤に戦列を去った。(Photo=Racing Point)拡大
スタート直後にクラッシュ、炎上という大事故に見舞われたハースのグロジャン(写真)。19番グリッドと後方からの出走で、後方集団のアルファタウリのクビアトと接触。221km/hのスピードでターン3のガードレールに突き刺さるようにあたり、ハースのマシンは真っ二つに折れ、瞬く間に炎が上がった。燃え盛るモノコックからグロジャンは自力で脱出、奇跡的にやけどで済んだ。病院のベッドで撮影されたSNS動画では、「ヘイローはF1に持ち込まれた最高のものだ」と、頭部を守ってくれた安全装備を褒めたたえていた。(Photo=Haas)
スタート直後にクラッシュ、炎上という大事故に見舞われたハースのグロジャン(写真)。19番グリッドと後方からの出走で、後方集団のアルファタウリのクビアトと接触。221km/hのスピードでターン3のガードレールに突き刺さるようにあたり、ハースのマシンは真っ二つに折れ、瞬く間に炎が上がった。燃え盛るモノコックからグロジャンは自力で脱出、奇跡的にやけどで済んだ。病院のベッドで撮影されたSNS動画では、「ヘイローはF1に持ち込まれた最高のものだ」と、頭部を守ってくれた安全装備を褒めたたえていた。(Photo=Haas)拡大

事故から受けた衝撃と原因究明

レース後、ポール・トゥ・ウィンで今季11勝目を飾ったハミルトンも、2戦連続の表彰台をふいにしたペレスも、誰もが例外なく、グロジャンが無事だったことに胸をなでおろすとともに、事故から受けた衝撃を語っていた。

ハミルトンは「F1は危険なスポーツなんだということをわれわれに思い出させた」としつつ、「あのような事故でもドライバーが無事であることに、F1やFIA(国際自動車連盟)の素晴らしい仕事ぶりを見る思いだ。もちろん、事故原因を究明し再発を防ぐことに尽力することになるだろう」と、安全性の重要さをあらためて説いていた。

過去の教訓から学び、未来へ生かす。モータースポーツの歴史はその繰り返しだった。危機との遭遇で思い知る、F1のレジリエンス(回復力)を、われわれは知っている。

次の第16戦はバーレーンのショートコースを使ったサキールGP。決勝は12月6日に行われる。

(文=bg) 

関連キーワード:
F1 2020, モータースポーツ, 自動車ニュース

あなたにおすすめの記事
新着記事