【F1 2020】メルセデスが「7年連続コンストラクターズタイトル獲得」の新記録達成
2020.11.02 自動車ニュース![]() |
2020年11月1日、イタリアのイモラにあるアウトドローモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリで行われたF1世界選手権第13戦エミリア・ロマーニャGP。前戦ポルトガルGPで最多勝記録を塗り替えたルイス・ハミルトンが、今度はチームの7年連続タイトルに貢献した。
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14年ぶりのイモラが“2デーGPウイーク”になったわけ
1981年から2006年まで、隣国の名前を冠して「サンマリノGP」として行われたイモラでのF1が14年ぶりに復活。サーキットのあるイタリア北部の州名から「エミリア・ロマーニャGP」として開かれることとなった。
F1にとって久々のイモラ。注目すべきポイントが多かった中での特筆すべきトピックといえば、GPウイークが通常の3日間から試験的に2日間に短縮された点だろう。これまでも第11戦アイフェルGPのように、天候不順で1日削られることはあったが、今回は通常金曜日に2回行われるフリー走行を最初からなくし、土曜日の90分間のプラクティスのみで予選・決勝を迎えるという短いスケジュールが組まれた。その背景には、レース運営の効率化を図らなければならない事情がある。
10月27日に2021年のF1暫定カレンダーが明らかになり、コロナ以前に今季予定されていた22戦に新たにサウジアラビアを加えた、史上最多の23戦が計画されていることが分かった。3月のオーストラリアGPを皮切りに世界を転戦。その間、休みなしの3連戦が2回巡ってくるという多忙な日程となる。今回の“2デーGPウイーク”は、前戦ポルトガルGPから連戦となるための措置だが、来季、一年の44%の週末をサーキットで過ごさなければならないかもしれない関係者の負荷軽減策を探るというもくろみもあるのだ。
レース数の拡大は、興行としてのF1の成功には欠かせない“条件”。リバティ・メディアがF1のオーナーとなる前には1レースあたりの開催権料が高騰し、イギリスGPなど伝統のGPが開催危機に直面する自体に陥った。1レースの単価を上げられないなら、数を増やすしかないのだ。
2020年シーズンもエミリア・ロマーニャGPを含めて残り5戦となり、来季のシートも続々と確定している。アルファタウリはピエール・ガスリーの残留を発表、アルファ・ロメオも引き続きキミ・ライコネンとアントニオ・ジョビナッツィがステアリングを握ることになった。2021年を見据えて動きが活発となるF1。ポルトガルGPで最多勝記録を更新したルイス・ハミルトンに次いで、メルセデスの史上初、7年連続コンストラクターズチャンピオン決定というレコードを打ち立てるかもしれない週末が幕を開けた。
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“オールドコース”でボッタスがポール
かつては高速サーキットとして知られたイモラも、1994年にローランド・ラッツェンバーガーとアイルトン・セナが相次いで命を落とすという悲劇の場所となってからは大幅に改修され、セナの事故現場となった超高速「タンブレロコーナー」などにシケインが設けられた。さらに、F1が行われなくなってからは最終コーナーのシケインが使われなくなり、全開区間が延ばされていた。
コース幅が狭く、グラベルエリアも多いことからささいな失敗も許されない、いわゆるオールドコースとしての魅力をたたえたイモラ。多忙なプラクティスを終えて迎えた予選では、相変わらずどこでも速いメルセデス勢が最前列を独占。今回はバルテリ・ボッタスがQ3最後の会心のラップで逆転に成功し、今季4回目、通算15回目のポールを決めた。
0.097秒差でハミルトンは予選2位。メルセデスにとっては74回目のフロントロー独占である。レッドブル駆るマックス・フェルスタッペンは、Q2中にスパークプラグに異常が起き、なんとかQ3まで進むもリズムを崩して0.567秒差と大きく離され、3位だった。
土曜日に絶好調だったのはアルファタウリの2台。ガスリーはキャリアベストタイの4位、ダニール・クビアトも今季初めてQ3に進出し8位と好位置を得た。ルノーのダニエル・リカルド5位、レッドブルのアレクサンダー・アルボン6位、フェラーリのシャルル・ルクレールは7位からレースに臨むことに。トップ10グリッドの最後にはマクラーレンが並び、ランド・ノリス9位、カルロス・サインツJr.は10位につけた。
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スタートでボッタス首位 ハミルトンは3位に
鈴鹿サーキットもそうだが、ドライバーがチャレンジングだと感じるコースは追い抜きが難しい場合が多い。イモラもその類いのサーキットで、ハミルトンも「美しいコースだがレースは単調になるはず」とレース前に本音を漏らしていた。だがハミルトンの予想に反し、レースは多くの話題を提供することとなった。
上位勢ではメルセデスの2台とフェルスタッペンがミディアムタイヤを履き、63周のレースに旅立つと、ボッタスが首位を守り、フェルスタッペンが2位上昇、ハミルトンは3位に落ち、4位リカルド、5位ガスリー、6位ルクレールといった順位で1周目が終わった。
この日も序盤から、トップ3がその他を突き放す展開。抜きづらいコースでポジションダウンとなった3位ハミルトンは、前方を走るフェルスタッペンからの乱流で「ついていくのが大変なんだ」と無線でこぼしていたが、その後にちゃんと逆転するのだからさすがである。
順位は1つ落としたものの5位走行中だったガスリーに、「ピットに入ってくれ。致命的な問題がある」と非情な連絡が入ったのは9周目の出来事。レース前に発覚していたクーラント漏れにより、アルファタウリの1台は早々に戦列を去らなくてはならなくなった。
14周を過ぎると、中団勢のルクレールやリカルド、アルボンらがソフトからハードに換装。ミディアムでスタートした上位3台で最初にピットに入ったのはフェルスタッペンで、19周目にハードタイヤを与えられ、3位でコースに戻った。
ここからが最多勝ドライバー、ハミルトンの真骨頂。前にレッドブルがいなくなったことで、「ピットストップはしばらく後だ」とチームに伝え、遅れを取り戻さんとファステストラップを記録しながら周回を重ねることとなった。一方、ピットに入ったフェルスタッペンの動きに合わせ、メルセデスは20周目にボッタスをピットに呼び、ハードタイヤを与え暫定首位ハミルトンの後ろ、2位で戻した。
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メルセデス、7年連続タイトル獲得という偉業
29周目、エステバン・オコンのルノーがコース脇にマシンをストップさせたことで、30周目にバーチャルセーフティーカーが出るも、ほんの一瞬でグリーンに戻ってしまった。この短いチャンスを生かしてハミルトンがタイヤ交換を済ませ、1位のまま復帰。3.5秒後ろに2位ボッタス、さらに1.6秒後方に3位フェルスタッペンという順位となった。
トップから2位に落ちたボッタスにはハミルトンを追う速さはなく、後ろの3位フェルスタッペンに接近を許してしまう。ボッタスのマシンは、破損したフェラーリのパーツが当たってフロアにダメージを負っており、空力的なバランスを崩していたのだ。手負いのメルセデスをなんとかコントロールしていたボッタスだったが、コースオフをきっかけに、43周目にフェルスタッペンに2位の座を奪われてしまった。
再び2位に返り咲いたフェルスタッペンだったが、その喜びも長続きせず。51周目、突如右リアタイヤが破損しクラッシュ、グラベルにつかまったレッドブルはリタイアせざるを得なかった。これでセーフティーカーが出たことで、ボッタス、ハミルトンらが続々とピットイン。この徐行中に10位を走っていたウィリアムズのジョージ・ラッセルが痛恨のミスでクラッシュしたこともあり、レース再開は58周目まで待たなければならなかった。
残り6周のスプリントレースは、1位ハミルトン、2位ボッタス、3位リカルド、4位ルクレール、5位アルボンという順位でスタート。早々にクビアトが4位に上がった一方、アルボンはスピンし最後尾に脱落。ソフトタイヤを履くクビアトは、セーフティーカーでピットに入らずハードのままだったリカルドを追い回すも、やはりオーバーテイクが難しいイモラ、ルノーが0.8秒差で最後まで表彰台の最後の一角を手放すことはなかった。
ハミルトンは13戦して9勝目、通算93勝目を飾り、不運に見舞われたボッタスも2位でチェッカードフラッグを受け、メルセデスは7年連続となるコンストラクターズタイトルを手中におさめた。1999年から2004年までフェラーリが達成した6年連続タイトルを抜く新記録達成に、その原動力となったハミルトンは「われわれは勝利に慣れていると思うかもしれないけど、新記録樹立なんて、信じられないことなんだ」と喜びを表し、チーム代表のトト・ウォルフも「われわれはベンチマークを新しい次元まで押し上げ、それを成し遂げたんだ」と胸を張った。
ポルトガルGPでのハミルトン最多勝記録更新に次いで、2週連続でワールドレコード誕生となったF1。次に待ち構える記録は、ミハエル・シューマッハーに並ぶ、ハミルトンの7度目の戴冠。どうやらそれも決まりそうな気配である。
14年ぶりのイモラでのレースの後は、9年ぶりとなる第14戦トルコGP。決勝は11月15日に行われる。
(文=bg)