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あのハーレーまでモーター駆動に!? これから二輪の電動化は進むのか?

2020.12.11 デイリーコラム 青木 禎之

「ホンダe」は惜しかった

「日本カー・オブ・ザ・イヤー2020-2021」の受賞車が新型「スバル・レヴォーグ」に決まったとのこと。おめでとうございます。

さて、カー・オブ・ザ・イヤーとは縁もゆかりもない筆者ですが、今年最も興味を引かれた一台が「ホンダe」。言わずと知れた、ホンダが初めて本格的に手がけたピュアEVだ。モーターで走るクルマが増えたためか、最近ではバッテリーの頭文字を取ってBEVと呼ばれることも多い。

生産から廃棄までの自動車ライフを考えると、本当にEVが環境に優しいかどうかはともかく、モビリティー電動化の波が押し寄せるなか、技術的なキモがバッテリーにあることを否定する人はいないだろう。電池そのものの飛躍的な性能向上が待たれる一方、いまそこにある課題は「いかに充電時間を短縮するか」である。

航続距離を捨て街乗りに特化したホンダeについて、500万円に届こうかという価格も含めて言いたいことはいろいろあるが、なかでも無責任なやじ馬の立場から「残念だなァ」と感じたのが、その充電方式だ。普通または急速充電器からコードを伸ばしてコネクターを給電口に挿すという、ごく一般的な充電方法“しか”用意されなかった。

ホンダ初の量産型EV「ホンダe」。モーター駆動のシティーコミュ―ターとしての生い立ちはもちろん、そのデザインも注目を集めている。
ホンダ初の量産型EV「ホンダe」。モーター駆動のシティーコミュ―ターとしての生い立ちはもちろん、そのデザインも注目を集めている。拡大
「ホンダe」はインテリアも特徴的。インストゥルメントパネルいっぱいに広がる液晶画面をはじめ、充電中など車内に長時間待機することがあっても楽しめる空間づくりが追求されている。
「ホンダe」はインテリアも特徴的。インストゥルメントパネルいっぱいに広がる液晶画面をはじめ、充電中など車内に長時間待機することがあっても楽しめる空間づくりが追求されている。拡大
こちらは2020-2021年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した新型「スバル・レヴォーグ」。いまのところ、電動モデルのラインナップについてはアナウンスされていない。
こちらは2020-2021年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した新型「スバル・レヴォーグ」。いまのところ、電動モデルのラインナップについてはアナウンスされていない。拡大

“脱着式”なら未来がある

以前、ホンダ先進技術の勉強会で、電動アシスト付き自転車に用いられるような取り外し式バッテリーを「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」と名づけてバイク用に拡大、大容量かつ規格化して街のアチコチに充電済みのソレを配置しておくアイデアが披露され、「なるほど!」と感心したことがあった(関連記事)。

シートにまたがって使用中の電動バイクの残電量が心細くなったら、充電済みモバイルパワーパックの設置スポットに立ち寄ってパワーパックを入れ替えるだけ。手軽で早い。別に目新しい考えではないけれど、モバイルパワーパックはすでにベストセラースクーターである「PCX」の電動版、「PCXエレクトリック」(リース専用車)に使われているうえ、充電・交換にあたって大規模な施設や設備が必要ない。すぐに実現できそうな具体性が魅力的だ。

当時の会場には「モバイルパワーパック」を何本も使って電源とする四輪車も展示されていた。無理とむちゃを承知で言いますが、次のホンダ製BEVには……というか、次回デリバリーするホンダeの一部車両には、ぜひモバイルパワーパックを採用していただきたい。

「そんな効率が悪い搭載方法を……」と難色を示すむきには「むやみに航続距離を追わない」と説得し、「充電済みバッテリーパックを準備しておく場所が……」と悩む人には「ホンダカーズ(販売店)に協力してもらいましょう」とお願いし、「年1000台のクルマでは対象が少なすぎる」という意見には胸を張って「ホンダは二輪の王者です!」と言い返すことができる。

……とまぁ、そんな暴論を述べるのは、四輪に倣って二輪の世界でも電動化が進みそうだからだ。

二輪の世界も、スクーターをはじめとするシティーコミューターでは電動車が散見される。写真はホンダの電動スクーター「PCXエレクトリック」。
二輪の世界も、スクーターをはじめとするシティーコミューターでは電動車が散見される。写真はホンダの電動スクーター「PCXエレクトリック」。拡大
電動スクーター「ホンダPCXエレクトリック」は、シート下におさまるカートリッジ式バッテリーパック「モバイルパワーパック」を動力源として走る。まるで家電のようだが、これにより“充電待ち”の問題は解決される。
電動スクーター「ホンダPCXエレクトリック」は、シート下におさまるカートリッジ式バッテリーパック「モバイルパワーパック」を動力源として走る。まるで家電のようだが、これにより“充電待ち”の問題は解決される。拡大
ホンダは「モバイルパワーパック」を動力源とする四輪車の研究開発も進めている。写真のモデルでは、内蔵型の高出力ハイブリッドバッテリーとの併用も可能になっている。
ホンダは「モバイルパワーパック」を動力源とする四輪車の研究開発も進めている。写真のモデルでは、内蔵型の高出力ハイブリッドバッテリーとの併用も可能になっている。拡大

来る電動化には積極策で

先日発表されたハーレーダビッドソンの電動モデル「ライブワイヤー」は、満充電で市街地なら235km、高速道路では152kmを走れるという。市販されているホンダやヤマハの電動バイクとは、桁が違う。349万3600円というプライスタグを付けて、容量15.5kWhのリチウムイオンバッテリーを抱えるという力業だが、言い換えると、大排気量モデルをズラリとラインナップするハーレーにとって、そうまでして電動バイクを用意する必要があったということだ。言うまでもなく、環境問題に対応するためである。

かつて、長寿モデル「ヤマハSR400」の記事でも触れたが、二輪業界の「環境の目覚め」は意外に遅い。最初の排ガス規制が敷かれたのが1998年。しかしその後の展開は急で、2ストロークモデルが実質的に姿を消したのを皮切りに、販売モデルが次々とカタログから落とされていった。2006年の排ガス基準ではキャブレターでの対応が難しくなり、例えばSR400も空冷単気筒をFI(フューエルインジェクション)化している。その後、同車は燃料噴射のコントロールを精緻化してEURO4をパスしたが、今年2020年からさらに厳しいEURO5が、1年の猶予をもって適用された。2021年の「さよなら、SR400」がささやかれるゆえんである。

2024年には、次なるEURO6が控えている。あらためて規制が厳格化されるうえ、社会的に四輪の“ピュア”内燃機関モデル廃止が叫ばれるなか、二輪サイドの対応も相応に厳しいものとなろう。メーカー全体の燃費(CO2排出量)が問われるなら、電動モデルをリリースせざるをえない。

そんな状況を鑑みると、ホンダeの、近未来的なかわいらしいスタイルにモダンな内装、後輪駆動ゆえの小回り性のよさや特徴的なハンドリングもすてきだけれど、四輪と二輪を抱える大企業として、別のアプローチがあってもいいと思う。両部門が手を取り合って、バッテリーパックを用いた一種の社会実験を試みるとか。さらにヤマハ、スズキ、そしてカワサキまで巻き込んで、ジャパンオリジナルの環境政策にトライ……してほしいなぁ。

モビリティーの電動化は、自動車・バイクメーカーが電機メーカーに寄っていく流れでもある。杞憂(きゆう)であると信じつつ、なんだか心配。優秀にして有力なメーカーがそろっていながら、国内の調整がつかないうちに、結局、iPodとiTunesに市場を奪われてしまった電機メーカーの轍(てつ)を踏まないことを願ってやみません。

(文=青木禎之/写真=本田技研工業、スバル、webCG/編集=関 顕也)

2020年12月3日に国内デビューを果たした「ライブワイヤー」は、ハーレーダビッドソンが初めて開発した電動スポーツバイク。クラシックなモデルで知られる老舗ブランドからの登場とあって、多くの二輪ファンを驚かせた。
2020年12月3日に国内デビューを果たした「ライブワイヤー」は、ハーレーダビッドソンが初めて開発した電動スポーツバイク。クラシックなモデルで知られる老舗ブランドからの登場とあって、多くの二輪ファンを驚かせた。拡大
「ライブワイヤー」は、その車体の中心部に大きなリチウムイオンバッテリー(写真中央の黒いコンポーネンツ)を抱える。これだけのスペースが確保できれば、ホンダが提案するカートリッジ式バッテリーにも対応できる、かもしれない。
「ライブワイヤー」は、その車体の中心部に大きなリチウムイオンバッテリー(写真中央の黒いコンポーネンツ)を抱える。これだけのスペースが確保できれば、ホンダが提案するカートリッジ式バッテリーにも対応できる、かもしれない。拡大
「ライブワイヤー」の普通充電の給電口。急速充電用の給電口はシートの下にレイアウトされている。
「ライブワイヤー」の普通充電の給電口。急速充電用の給電口はシートの下にレイアウトされている。拡大
ホンダの「モバイルパワーパック」ひとつあたりのサイズは、女性でも片手で持ち運べる程度。写真のようにチャージステーションでの充電が可能で、カートリッジそのものは社会でシェアされることが想定されている。
ホンダの「モバイルパワーパック」ひとつあたりのサイズは、女性でも片手で持ち運べる程度。写真のようにチャージステーションでの充電が可能で、カートリッジそのものは社会でシェアされることが想定されている。拡大
青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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