MTは当面お預け!? 新型「スバルWRX」の国内仕様を読み解く
2021.09.29 デイリーコラムオフロード風コスメの新型
去る2021年9月10日に世界初公開された新型「スバルWRX」(の北米仕様)に対しては、日本のスバリスト間でも賛否両面で沸騰しているようだ。それはともかく、こんな純内燃機関の高性能スポーツサルーンは今や絶滅危惧種であり、こうして新型が出てくれるだけでも、涙が出るほどありがたい話ではある。
北米での新型WRXの発売時期は2022年初頭と発表された。ネットかいわいの情報を総合すると、日本発売もそれに大きく遅れることはなさそうだ。というわけで、判明している北米仕様の情報をもとに、来るべき日本仕様の新型WRXの姿を勝手に予想してみた。
それにしても、公開された新型WRXの姿が、サイドシルやホイールアーチをブラックアウトしたSUV仕立てだったことに驚かされたスバリストも多いだろう。スバルは現在、北米で人気のラリークロスに従来型「WRX STI」で参戦しており、かの有名なケン・ブロック選手も、今シーズンはスバルでバハ1000や国内ラリーに参戦する。これらも新型WRXのプロモーションの一環とすれば、今回のオフロード風コスメも理屈としてはアリというほかない。
ただ、ブラックアウトされたホイールアーチはそもそも2017年の東京モーターショーで公開された新型WRXのスタディーとおぼしき「ヴィジヴ パフォーマンス コンセプト」から、その後のコンセプトカーにも受け継がれてきたディテールである。日本市場の嗜好を考えると、国内仕様は少なくともサイドシルが同色化されるかもしれないが、ホイールアーチをどう処理するかはちょっと興味深い。
エンジンは2.4リッターターボで確定
インプレッサの名がはずれた先代WRXは事実上「レヴォーグ」のセダン版となり、その立ち位置は今回も変わらない。新型WRXの技術内容は、2020年に発売された2代目レヴォーグから想像できる範囲といっていい。
北米仕様の新型WRXは2.4リッター「FA24」型の直噴ターボ版を積む。FA24型は日本でもおなじみの「FA20」型のボアを拡大したショートストロークエンジンで、そのターボ版は北米で2019年まであった3.6リッターフラット6の後継エンジンとして登場した。
先代WRXは北米仕様が2~2.5リッターターボ、日本仕様が2リッターターボ(「S4」が「FA20DIT」型、STIが「EJ20」型)を積んでいたが、今回は日本仕様も北米と同じ2.4リッターターボに統一されるとみて間違いない。30年以上続いたEJ20型が、先代WRX STIとともに生産終了となったのはニュースになったが、じつはFA20DITも先代のWRXやレヴォーグ、「レガシィ」の生産終了とともにフェードアウト……が規定路線だからだ。
ちなみに、最新のレヴォーグが積んでいる1.8リッターターボの「CB18」型は、従来エンジンでいうと、1.6リッターターボの「FB16DIT」型の後継という位置づけである。対するFA20DITの実質後継エンジンはFA24型ターボであり、これまで2リッターターボだったWRXの新型が2.4リッターターボを積むのは、まったく自然な流れである。
北米向け新型WRXの変速機には、先代同様に2ペダルCVTと3ペダル6段MTの2種類が用意される。そのうち2ペダルは「スバルパフォーマンストランスミッション(SPT)」という。新しい2ペダル=SPTは「走りの愉しさをさらに際立たせるスポーツ変速制御を採用。Dレンジでの走行中も、ドライバーの加減速操作に応じて変速をレスポンス良く行います」とのことだが、なんのことはない、本体はこれまでどおりのチェーン式CVTだ。
6段MTは販売不可!?
こうしてCVTにわざわざSPTという分かりにくい(?)新名称を与えたのは、スポーツカーの変速機としてのCVTが、いまだに敬遠されがちだからでもあろう。日本でもDCTかトルコン式ATを望むスバリストは少なくないだろうが、現実は非常にむずかしい相談だ。というのも、エンジン縦置き(のFFをベースにした)4WDという独特のレイアウトを守るスバルは、伝統的に変速機を自社開発・自社生産しているからだ。スバルの規模だと、いったんつくった変速機の開発費や生産ラインを償却するのには長い時間がかかる。
スバルは5代目レガシィ(国内は2009年発売)の開発にあたり、旧式となっていた5段ATにかわる新世代2ペダルとして、熟慮を重ねた末にCVTを選んだ。その背景には当時の日本ではCVTが今以上に大きなシェアを誇っていたことに加えて、スバルこそCVTをモノにしないでどうする……という自負があったかもしれない。スバルは1987年2月の「ジャスティ」で、世界で初めてCVTを市販したメーカーでもあるからだ。
それでも、新型WRXに6MTが用意されたことに安堵している日本のスバリストもおられるかしれないが、残念ながら、少なくとも発売当初の日本仕様はSPT=CVTのみになりそうだ。その理由は、先進運転支援システムの「アイサイト」にある。
北米仕様の新型WRXもアイサイトを標準装備するが、あくまでCVTのみで6MTには装備されない。先日発売されたばかりの「スバルBRZ」も同様で、アイサイトはAT専用でMTには用意されない。ところが、わが日本では、この2021年11月発売の新型車から自動ブレーキの搭載が義務化される。継続生産車は2025年12月まで猶予されるので、BRZはギリギリ間に合ったということになるが、新型WRXは現在判明している内容のままなら、6MTは国内販売不可ということになる。
アイサイトについては、どのスバル関係者に聞いても判で押したように「MT用も準備中」と答えるのだが、それ以上の具体的な話はなかなか出てこない。まあ、今回はCVTにもかなりの気合が入っているようなので、デキは悪くないのだろう。しかし、MTとアイサイトをいつまでも組み合わせてくれないスバルの態度に、筋金入りのスバリストはモヤモヤするばかりだ。STIはあるのか? STIもSPT? スバルさーん、なんとかならんのですかーっ!?
(文=佐野弘宗/写真=スバル/編集=藤沢 勝)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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