今年は国産車の当たり年! 河村康彦の2021年私的10大(?)ニュース
2021.12.29 デイリーコラムまだまだ“過渡期”が続きそう
やっぱりやって来てしまった、この時期のwebCG恒例「10大ニュース」の原稿依頼。
とはいえ、2021年も例のコロナ禍に翻弄(ほんろう)され続け、ついぞ海外出張には一度も行けず。国内に目を転じても試乗会が激減したためテストドライブの機会が大幅減少。ついでに、夏にはちょっと私的な“休眠期間”もあり、全般的に書きたくなるようなネタに事欠いてしまうというのが正直なところ。
というわけで「とても10には満たないナ」というのを勘弁してもらったうえで、それでも話題を探ってみると……。
3位:欲しい輸入車がどんどん減っている
そもそも「そんなものはなくても、なんとかガマンできる」と思っていた地域で、身の危険を感じるほどの灼熱(しゃくねつ)の気候に見舞われてエアコン導入を迫られたり、数十年に一度という規模の河川の氾濫を目の当たりにしたりすれば、「それもこれも地球温暖化のせい」と決めつけたくなるのが人情というもの。
そんな状況に後押しされるカタチで「CO2排出量削減」を「クルマの電動化」と同義に見ているかに思えるのが欧州自動車業界の近況だ。実際、近い将来の電気自動車(BEV)専業化を宣言し、それに向けてBEVを次々とローンチするのみならず、明らかに“時間稼ぎ”と思えるプラグインハイブリッド車(PHEV)を既存のラインナップに加えるブランドも少なくない。
しかしながら、充電インフラの整備が遅々として進んでいないため、従来のエンジン車に近い使い勝手をもくろんで極端に大容量の駆動用バッテリーを搭載したモデルでは、それに見合った大出力充電器の整備がさらに進んでいないことから、なんとも使い勝手が悪く、プラグインモデルを使うには「まだまだハードルが高い」というのが、すでにこの種のモデルを何度かテストドライブした自身の偽らざる感想。そうしたプラグインモデルに限らず、後付け感満載のマイルドハイブリッドシステムを搭載するモデルだって、価格の上昇やその部分にトラブルを抱える可能性を踏まえると、本音では歓迎とは言えない。
いずれにしても「過渡期」と言わざるを得ない作品であることから、リセールバリューに関してもちょっと不安がある。となると、ますます物欲が引っ込んでしまう感が否めずというのが、昨今の多くの輸入車に対する印象だ。
ちなみに、2013年式で、次回で4度目の車検となる「ポルシェ・ケイマンS」と、すでにブランドごと身売りされて、もはやこの先に「小ささこそが売り物」というモデルが出ることは望み薄の「スマート・フォーツー」というウチの2台についても、「しばらくはこのまま様子見」という態勢が決定的だな(“先立つモノ”もないし……)。
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迷った末の決断
2位:“隠れ豊作”だった日本発モデル
そんなコロナ禍でもすでに“仕込み”の状態に入っていたものは、むやみに発売を遅らせるわけにもいかず次々と日の目を見るということに。
で、ある時点から感じられたのが「なんだか今年生まれてくる日本車は、どれもこれもなかなか出来がいいぞ!」という事実。
具体的にそんな印象がパッと浮かぶのは、追加モデルというカタチを採りながら、企画自体はベースモデルと同時タイミングで進行してきたという日産の「ノート オーラ」やそのさらなる派生モデル。さらには、好評を博していた従来型のイメージを捨てて文字通りフルモデルチェンジされたホンダの「ヴェゼル」やこの期に及んで「市販車で最高峰」と納得の秀逸なシフトフィーリングを実現したMT仕様まで用意されてビックリの同じくホンダの「シビック」。まだサーキット限定でのチョイ乗りしかできていないため公道上での乗り心地などが未知数であるものの、第一印象はなかなか素晴らしかった三菱の新型「アウトランダー」。そして、スバルとトヨタによる“奇跡のコラボレーション第2章”を見せてくれることになった「BRZ/GR86」等々。
いずれも開発されたばかりのニューモデルでありながら、すでにそれなりの熟成の味を感じさせてくれるというのが共通項。もしかして、コロナに起因する半導体不足からの、生産・販売の遅れなんていう要素がそこには絡んでいたりして!?
1位:ちょっと迷ったCOTYの投票
そんな期待と予想以上の日本車健闘という事情から、日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)対象車に対する私的なトップ5車への点数配分は、今回はちょっとばかり迷ってしまうことに。例年はほとんど迷うことなく、最終選考に残った10台による「10ベストカー試乗会」に参加する時点では、すでに決定していることが多いのだが。
というのも、それぞれ頑張った日本メーカーの各車に対しては正直あまり点数差をつけたくないと思ったし、だからといってそんな思いと「1位には必ず10点を与えること」というレギュレーションを両立させようしても、点数上でそれを表現することは困難。
ということで、今回は「孤高の存在」である新型「シボレー・コルベット」にトップ点を投じることに。これ、スポーツカーらしく走らせた時のポテンシャルは紛れもなく第一級だし、望外に乗り心地がいいことにもビックリ。そして、欧州メーカーの同等のポテンシャルを持つクルマと比べると、圧倒的にコスパに優れるんですよね。
……そんなわけで、今年は3大ニュースでゴメンナサイ……。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ ジャパン、日産自動車、GMジャパン/編集=藤沢 勝)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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